【パリ2024への道】レスリング、出場資格取得プロセスを解説

1 |
KAWAI Risako
写真: 2021 Getty Images

1896年にアテネで最初の近代オリンピックが開催されて以来、レスリングは1900年大会を除くすべての夏季オリンピックで実施されてきた。パリ2024には、東京2020と同じ288選手が出場する。ここからパリ2024に向けて、レスリング選手がどのような道のりを歩んでいくのかを紹介する。 

興奮と記憶に残るドラマを提供してくれた東京2020オリンピック。アメリカ合衆国のデービッド・テーラーがラスト15秒で大逆転して自身初の金メダルを掴み取り、キューバのスーパースター、ミハイン・ロペスが歴史的な4度目のオリンピックタイトルを獲得、川井友香子&川井梨紗子が姉妹で金メダルに輝き、ナイジェリアとサンマリノの選手がオリンピックレスリング初メダルを母国に持ち帰った。

パリ2024やそこに至るまでの予選でも、レスリングではエキサイティングなアクションが期待される。しかしその前に、選手らがどのような道をたどるのかを見ていこう。

パリ2024:レスリングの参加選手数は?

パリ2024のレスリング競技には、男子192名、女子96名の計288選手が出場する。これは前回大会と同じ人数だ。

レスリングではホスト国枠は割り当てられない。各国内オリンピック委員会(NOC)に最大18名(1種目につき1名)の出場枠が割り当てられる。

パリ2024:レスリングの出場枠を得るには?

288の出場枠は、3段階に分けて割り当てられる。

第1段階:2023年シニア世界選手権

2023年のシニア世界選手権の結果により、オリンピック18階級のそれぞれで5枠(計90)が割り当てられる。この大会の18カテゴリーの4人のメダリスト(金、銀、銅2人)が所属する国内オリンピック委員会がそれぞれ1枠を獲得。さらに、銅メダルを決める戦いで敗れた選手らが試合を行い、勝者の国内オリンピック委員会が最後の1枠を得る。

第2段階:2024年大陸別予選トーナメント

144枠が、2024年の大陸別予選トーナメントで決定する。各大陸ごとに独自のオリンピック予選大会を開催。オセアニアとアフリカは、合同で予選大会を行う。

各大陸予選において、オリンピック18階級のそれぞれ上位2選手が所属する国内オリンピック委員会が出場枠を獲得する。

第3段階:2024年世界予選トーナメント

残りの54枠は、2024年に行われる世界予選トーナメントで決定する。18階級において、それぞれ上位2選手の国内オリンピック委員会が出場枠を得る。さらに3位の2選手間で試合を行い、その勝者の国内オリンピック委員会が出場枠を1つ獲得する。

パリ2024:レスリングの競技フォーマットと日程は?

パリ2024のレスリングは、8月5日から11日にかけて、柔道と同じシャン・ド・マルス・アリーナで開催される。

レスリングにはグレコローマンとフリースタイルの2つのスタイルがあり、パリ2024では東京2020と同じ全18種目が実施される。

  • 女子フリースタイル:50kg級、53kg級、57kg級、62kg級、68kg級、76kg級
  • 男子グレコローマン:60kg級、67kg級、77kg級、87kg級、97kg級、130kg級
  • 男子フリースタイル:57kg級、65kg級、74kg級、86kg級、97kg級、125kg級

競技はトーナメント形式で決勝まで進み、金メダリスト、銀メダリストが決まる。銅メダルは、決勝進出者に敗れたレスラーによる敗者復活戦が行われ、勝者2人に贈られる。

関連記事|パリ2024の競技スケジュール、発表!

パリ2024に向けて注目したい、レスリングの選手は?

東京大会で、38歳にして史上2人目となる4つ目のオリンピックレスリング金メダルを獲得したキューバのスター、ミハイン・ロペスは、パリ大会に出場するかどうかを明らかにしていない。しかし、そのほかの東京2020のファイナリストの多くは、次の大会での金メダル獲得を狙っている。

男子フリースタイル86kg級決勝で、イランのハッサン・ヤズダニを相手に終盤に劇的な逆転劇を演じた米国のデービッド・テーラーは、タイトル防衛に挑むことだろう。しかし、この種目で世界王者に3度輝き、リオ2016でも金メダルを手にしているヤズダニを倒すのは容易ではない。

リオ2016金メダリストのカイル・スナイダーも注目の存在だ。米国出身のスナイダーは東京大会ではフリースタイル97kg級決勝で敗れたが、パリ2024では王座奪還を目指すことだろう。

2004年に女子種目がオリンピックプログラムに加わって以来、日本人選手が圧倒的な強さを見せている。東京2020では、62kg級の川井友香子、57kg級の川井梨紗子の川井姉妹を筆頭に、金メダル6つのうち4つを日本勢が獲得した。オリンピック2冠の梨紗子は2022年5月に第一子を出産し、もし彼女がマットに戻るなら、パリ2024で3連覇を狙うだろう。

また、レスリングで初めて黒人女性としてオリンピック金メダルを獲得したタミラ・ストックメンサ(米国)は、女子68kg級の強力なメダル候補だ。

東京2020では、これまでレスリングでメダルを獲得したことのない国から2人のメダリストが誕生した。ひとりは女子68kg級で銀メダルを獲得したナイジェリアのブレッシング・オボルドゥドゥ、もうひとりは男子86kg級で銅メダルを獲得したサンマリノのミレス・アミネ。両選手とも、パリ2024での活躍が期待される。

レスリング、パリ2024までの流れ

  • 2023年9月16日~2024年5月12日:予選期間
  • 2023年3月28日~4月2日:アジア選手権(日程未定)※
  • 2023年4月17日~23日:欧州選手権(クロアチア、ザグレブ) ※
  • 2023年5月4日~7日:パンアメリカン選手権(アルゼンチン、ブエノスアイレス) ※
  • 2023年5月16日~21日:アフリカ選手権(チュニジア、チュニス) ※
  • 2023年5月26日~28日:オセアニア選手権(開催地未定) ※
  • 2023年9月16日~24日:2023年世界選手権(ロシア、クラスノヤルスク)
  • 2023 年9月27日:世界レスリング連合(UWW)は国内オリンピック委員会に獲得した出場枠を文書で通知
  • 2023 年10月8日:国内オリンピック委員会は、割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 2024年1月26日~28日:オセアニア選手権(開催地未定)※※
  • 2024年2月6日~11日:アフリカ選手権(エジプト、カイロ)※※
  • 2024年2月12日~18日:欧州選手権(ルーマニア、ブカレスト)※※
  • 2024年2月27日~3月3日:アジア選手権(開催地未定)※※
  • 2024年3月7日~10日:パンアメリカン選手権(開催地未定)※※
  • 2024年3月22日~24日:アフリカ・オセアニア予選大会(開催地未定)
  • 2024年3月27日:UWWは、アフリカ・オセアニア予選で獲得した出場枠を国内オリンピック委員会に文書で通知
  • 2024年4月4日~7日:欧州予選トーナメント(開催地未定)
  • 2024年4月7日:国内オリンピック委員会は、アフリカ・オセアニア予選で割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 2024年4月10日:UWWは、欧州予選で獲得した出場枠を国内オリンピック委員会に書面で通知
  • 2024年4月12日~14日:アジア予選トーナメント(開催地未定)
  • 2024年4月17日:UWWは、アジア予選で獲得した出場枠を国内オリンピック委員会に文書で通知
  • 2024年4月19日~21日:パンアメリカン予選トーナメント(開催地未定)
  • 2024年4月21日:国内オリンピック委員会は、欧州予選で割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 2024年4月24日:UWWは、パンアメリカン予選で獲得した出場枠を国内オリンピック委員会に文書で通知
  • 2024年4月28日:国内オリンピック委員会は、アジア予選で割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 2024年5月5日:国内オリンピック委員会は、パンアメリカン予選で割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 2024年5月9日~12日:世界予選トーナメント(開催地未定)
  • 2024年5月15日:UWWは、世界予選で獲得した出場枠について国内オリンピック委員会に文書で通知
  • 2024年5月26日:国内オリンピック委員会は、世界予選で割り当てられた出場枠の使用意思をUWWに表明
  • 日程未定:三者委員会は、国内オリンピック委員会へのユニバーサリティ枠の割り当てを文書で確認(該当する場合)
  • 2024年6月某日:UWWは、未使用の出場枠をすべて再配分
  • 2024年7月8日:パリ2024エントリー締め切り
  • 2024年7月26日~8月11日:パリ2024オリンピック競技大会

※印の選手権はパリ2024の予選大会ではないが、これらの大会に参加した国内オリンピック委員会/国内競技連盟のみが、2023年のシニア世界選手権に各スタイルとも同数の選手を派遣することができる。

※※印の選手権はパリ2024の予選大会ではないが、これらの大会に参加した国内オリンピック委員会/国内競技連盟のみが、大陸予選トーナメントに各スタイルとも同数の選手を派遣することができる。

パリ2024への道、記事一覧

3x3バスケットボール7人制ラクビーアーチェリーウエイトリフティング|カヌー(スプリントスラローム)|近代五種ゴルフサーフィン射撃柔道|水泳競技(アーティスティックスイミング水球競泳飛込マラソンスイミング)|自転車(BMXフリースタイルBMXレーシングトラックレースマウンテンバイクロードレース)|スポーツクライミング(スピードボルダー&リード)|スケートボードセーリング|体操(新体操体操競技トランポリン)|卓球テコンドーテニストライアスロン|馬術(総合馬術障害馬術馬場馬術)|バスケットボールバドミントンバレーボールハンドボールビーチバレーボールフェンシングブレイキン|ボクシング|ボートホッケー陸上競技レスリング

パリ2024各競技の出場資格取得プロセスについて、より詳しい内容はこちらから。