【パリ2024への道】ウエイトリフティング、出場資格取得プロセスを解説
パリ2024オリンピックのウエイトリフティング競技では、男女それぞれ5つの種目(階級)が実施される。出場人数や出場枠獲得までの道のり、注目選手を見てみよう。
パリ2024オリンピックで実施されるウエイトリフティング競技では、会場となるサウスパリアリーナ6に合計120人のアスリートが集い、東京2020より4階級少ない合計10階級で脅威的な力を発揮し、オリンピック金メダルを目指す。
その舞台に立つために選手らはまず出場資格を得る必要があり、それは決して簡単なことではない。前回の東京大会と比べて階級や人数などが大幅に変更されたことから、アスリートたちは出場権を獲得するために苦戦を強いられる可能性もある。選手たちがどんな道のりを歩むのか。ウエイトリフティングにおけるパリ2024への道を辿ってみよう。
パリ2024:ウエイトリフティングの参加選手数は?
パリ2024のウエイトリフティングには合計120選手が出場し、東京2020の196人、ロンドン2012、リオ2016の260人より少ない人数で行われる。
大会が行われるフランスには、ホスト国として4枠(男子2枠、女子2枠)が割り当てられる。また、大陸枠として10枠、三者委員会によって決定されるユニバーサリティ枠として6枠が用意されている。それ以外の100枠は、オリンピック予選ランキングに応じて与えられる。
各国内オリンピック委員会(NOC)は各階級で最大1人、全階級あわせて男女それぞれ最大3人の出場枠を得ることができる(東京2020の最大4枠から1枠減少)。
パリ大会では各階級で最大12選手が出場することになるが、これは東京2020よりも2人少ない。
パリ2024:ウエイトリフティングの出場要件は?
パリ2024オリンピックのウエイトリフティングに出場するためには、選手とNOCは以下の項目の遵守が求められる。
(1)2009年12月31日以前に生まれた選手であること。
(2)すべての選手(ホスト国枠およびユニバーサリティ枠の対象者を含む)は、例外を除き、以下の2大会に出場すること。
- 2023年(シニア)世界選手権、2023年第4四半期
- 2024年 IWFワールドカップ、2024年第2四半期
(3)選手らは、以下の大会のうち3大会以上に出場すること(ホスト国枠およびユニバーサリティ枠の対象者は2大会以上)。
- 2022年 IWF(シニア)世界選手権、2022年第4四半期
- 2023年(シニア)大陸選手権(シニア大陸選手権に代わることが認められているシニア大陸競技会)、2024年上半期
- 2023年 IWFグランプリ I、2023年第2、3四半期
- 2023年 IWFグランプリ II、2023年下半期
- 2024年(シニア)大陸選手権、2024年上半期
(4)選手とそのNOCは、アンチ・ドーピングの観点からクリーンでなければならない。詳しくはIWFの資料にて(ページ4)。
パリ2024:ウエイトリフティングの出場枠を得るには?
オリンピック予選ランキングによる出場枠 - 男子50人、女子50人の合計100人
オリンピック予選ランキング(OQR)の対象となる予選期間は2022年8月1日に始まり2024年4月28日に終了する。前述の7大会の成績でOQRが決まる。2人以上の選手が同じ階級で同じ成績となった場合は、先に成績を残した選手の順位が高くなる。
期間終了後、国際ウエイトリフティング連盟(IWF)が各オリンピック階級のOQRを公式ウェブサイトで公表する。
NOCにつき、各階級で最高位の選手1人がOQRにランクされる。
各階級のOQR上位10人にパリ2024の出場枠が割り当てられる。ひとりの選手が複数の階級でトップ10入りした場合は、その選手がどの階級でオリンピックに出場するかを、関係するNOCがIWFに通知する。また、異なる階級において、ひとつのNOCから男女それぞれ3人以上の選手がトップ10に入った場合、NOCはどの選手にオリンピック出場枠を割り当てるかをIWFに通知する。
ホスト国枠 - 男子2人、女子2人の合計4人
ホスト国であるフランスには、男子2人、女子2人の合計4人の出場枠が割り当てられる。フランスの選手は、他のNOCの選手と同じように、OQRを通じて出場枠を獲得することができる。しかし、もしOQRによって通過した選手が男女各2人に満たない場合は、追加の選手を選ぶことができる。
大陸枠 - 男子5人、女子5人の合計10人
IWFが認めた大陸連盟(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニア、パンアメリカ)から広く選手が出場できるよう、OQRと以下の基準を用いて、それぞれの階級に出場枠1枠が割り当てられる。
ひとつの階級においてトップ10に含まれなかった大陸の中で、最高位となった参加資格のある選手に割り当てられる。
ひとつの階級においてトップ10に含まれなかった大陸が複数あった場合は、それらの大陸で最高位となった参加資格のある選手に割り当てられる。
もし、いずれかの階級において、すべての大陸が枠を獲得している場合は、大陸枠は再配分される。
ユニバーサリティ枠 - 男子3人、女子3人の合計6人
国際オリンピック委員会(IOC)が、ユニバーサリティ枠の申請をNOCから受け付けた後、三者委員会が対象となるNOCにユニバーサリティ枠の割り当てを書面にて通知する。
パリ2024:ウエイトリフティングの競技フォーマットや日程?
パリ2024のウエイトリフティング競技では10種目(階級)が実施される。東京2020から続くのは4種目のみ(太字が東京2020と同様の種目)。
- 男子:61kg級、73kg級、89kg級、102kg級、102kg超級
- 女子:49kg級、59kg級、71kg級、81kg級、81kg超級
東京2020と同様、パリ2024のウエイトリフティングは各階級とも「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」で構成される。選手はそれぞれ試技を3回行い、最高重量の合計で最終順位が決まる。
会場となるのはサウスパリアリーナ6(パリ・エキスポ)で、2024年8月7日〜11日に実施される。
パリ2024に向けて注目したい、ウエイトリフティングの選手は?
パリ2024では階級が大幅に変更されたため、多くの選手が体重を増やして、あるいは減らして新しい階級に適応することになるだろう。
中華人民共和国の選手は、長年にわたってこのスポーツで圧倒的な強さを誇ってきた。東京2020に出場した8人のうち、7人が金メダル、1人が銀メダルを獲得していることからも、その強さを知ることができる。
クリーン&ジャークで166kgを持ち上げて片足を上げてみせた男子61kg級金メダリストのリー・ファビンや、男子73kg級で金メダルを獲得したシー・ジヨン(リオ2016の男子69kg級でも金メダル)は東京2020の話題を独占。2人の階級はいずれもパリ2024で実施される予定で、中国代表に選出されれば世界記録保持者として、それぞれ連覇に挑むことになる。
女子では、中国のホウ・ジフェイとチャイニーズ・タイペイのクオ・シンチュンも東京大会と同じ階級でパリに臨むことになるだろう。女子49kg級と59kg級でそれぞれ金メダルを獲得し、ともに世界記録保持者である。
オリンピックのウエイトリフティングでは、数々のシーンが多くのファンの心を捉えてきた。北京2008では金メダルのマティアス・シュタイナー(ドイツ)が亡き妻に言葉を捧げ、東京2020ではフィリピン出身のヒディリン・ディアスが同国史上初のオリンピック金メダルを獲得。さらに、東京大会ではニュージーランドのローレル・ハバードが出生時と異なる性別でオリンピックに出場した初のトランスジェンダー選手となった。
パリ2024でも記憶に残るシーンを数多く目にすることになるだろう。
ウエイトリフティング、パリ2024までの流れ
- 2022年8月1日~2024年4月28日:予選期間
- 2024年1月15日:ユニバーサリティ枠の申請締め切り
- 2024年4月28日:オリンピック予選ランキング(OQR)最終日
- 2024年5月1日:複数の階級でトップ10入りした選手を有するNOCに通知し、IWFはその選手がどの階級に残るかを選択するよう求める
- 2024年5月6日:複数の階級でトップ10入りした選手が選択した階級を各NOCがIWFに通知する
- 2024年5月8日:OQRが更新される
- 2024年5月10日:OQRトップ10に男女それぞれ3人以上の有資格者がいるNOCに対し、NOCごとの最大出場枠を考慮して、OQRトップ10に残る選手と階級を選択するようIWFが通知する
- 2024年5月15日:各NOCはOQRトップ10に残る選手と階級をIWFに通知する
- 2024年5月16日:IWFは、大陸枠を獲得できる選手が男女それぞれ3人以上いるNOCに対し、NOCごとの最大出場枠を考慮して、大陸枠を獲得する資格を維持する男女各3人の選手および階級を選択するよう通知する
- 2024年5月23日:各NOCは、NOCごとの最大出場枠を考慮して、大陸枠を獲得する資格を維持する選手と階級をIWFに通知する
- 2024年5月24日:IWFは最終OQRを発表し、OQRにより各階級のトップ10および大陸代表となったことにより出場枠が割り当てられる旨をNOCに通知する
- 2024年5月31日:NOCは割り当てられた出場枠の使用意思をIWFに表明する
- 2024年6月3日:IWFはNOCに対し、未使用の出場枠の再配分を通知する
- 2024年6月10日:NOCはIWFに対し、割り当てられた出場枠の使用意思を表明する
- 2024年6月11日:IWFはホスト国に対し、利用可能なホスト国枠を通知する
- 2024年6月12日:ホスト国が、ホスト国枠の使用意思を表明する
- 2024年6月12日:IWFはIOCに対し、ユニバーサリティ枠として使用可能な階級を通知する
- 2024年6月14日:第三者委員会がNOCに対し、ユニバーサリティ枠の割り当てを文書で通知する
- 2024年6月14日:IWFはNOCに対し、ホスト国枠の再配分を通知する
- 2024年6月21日:NOCはIWFに対し、再配分されたホスト国枠の使用意思を表明する
- 2024年6月21日:NOCは割り当てられたユニバーサリティ枠の使用意思をIWFに表明する
- 2024年6月24日:IWFはNOCに対し、ユニバーサリティ枠の再配分を通知する
- 2024年7月1日:NOCはIWFに対し、再配分されたユニバーサリティ枠の使用意思を表明する
- 2024年7月8日:パリ2024オリンピックエントリー締め切り
- 2024年7月26日〜8月11日:パリ2024オリンピック
パリ2024への道、記事一覧
パリ2024各競技の出場資格取得プロセスについて、より詳しい内容はこちらから。