【パリ2024への道】セーリング、出場資格取得プロセスを解説
パリ2024のセーリング競技では新たに3種目が登場し、レースの行方はこれまで以上に予測不可能なものとなるだろう。マルセイユ・マリーナで開催されるセーリング競技の選手数、注目選手、出場枠獲得までの道のりなどを紹介する。
2024年7月28日から8月8日まで、南フランスのマルセイユ・マリーナではパリ2024オリンピックのセーリング競技が開催される。
セーリングを統括する国際競技連盟「ワールドセーリング」は、大会における男女平等とより多様な国の参加を目指し、パリ2024に向けていくつかの変更を行った。その中には、混合種目が2種目(男女混合2人乗りディンギー、男女混合マルチハル・ナクラ17級)になるなどの変更が含まれている。
さらに重要な点として、ウインドサーフィンiQフォイル級とカイトIKAフォーミュラーカイト級が新たに追加された。カイト種目は、ユースオリンピック・ブエノスアイレス2018で成功を収め、オリンピック本格デビューを果たす。これらの種目は、フィン級とRS:X級に取って代わる。
種目変更により、東京2020でフィン級とRS:X級でメダルを獲得した英国、フランス、中華人民共和国など、伝統的にセーリング強豪国として知られる国々に影響を与える可能性もある。
パリ2024のセーリング競技の出場枠は330枠。各国の選手たちはどのように出場権を獲得するのか。パリ2024までの道のり、大会フォーマット、そして今後2年間で注目したいアスリートについて紹介しよう。
パリ2024:セーリングの参加選手数は?
パリ2024のセーリング競技では、合計10種目が実施される予定で、男女それぞれ165枠、計330枠が用意されている(東京2020より20枠少ない)。開催国であるフランスには、男女それぞれ7枠、計14枠の出場枠が与えられる。また、ユニバーサリティ枠として4枠が確保されている。各地の国内オリンピック委員会は、男女それぞれで最大7枠、各種目で最大1艇の出場権を得ることができる。
パリ2024:セーリング種目は?
パリ2024では以下の10種目が実施される。
女子
- ディンギー(艇種:レーザーラジアル)
- スキフ(艇種:49erFX)
- ウインドサーフィン(艇種:iQフォイル)- 新種目
- カイト(艇種:IKAフォーミュラーカイト)- 新種目
男子
- ディンギー(艇種:レーザー)
- スキフ(艇種:49er)
- ウインドサーフィン(艇種:iQフォイル)- 新種目
- カイト(艇種:IKAフォーミュラーカイト)- 新種目
男女混合
- ディンギー(艇種:470)- 新種目
- マルチハル(艇種:ナクラ17)
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パリ2024:セーリングの出場枠を得るには?
パリ2024の出場枠が割り当てられるセーリングの予選大会はいくつかあり、以下の順で出場枠が与えられる。
2023年セーリング世界選手権
2023年8月10日から20日にかけてオランダのハーグで開催されるこの大会では、出場枠107枠が与えられる。10種目それぞれで上位に入った国内オリンピック委員会には、以下のように出場枠が与えられる。
- ウィンドサーフィン:男女各11枠
- カイト:男女各8枠
- ディンギー:男女各16枠、混合8枠
- スキフ:男女各10枠
- 混合マルチハル:9枠
2024年ILCA6/ILCA7世界選手権
2023年世界選手権で出場権を獲得しなかった国内オリンピック委員会のうち、これらの大会で上位の成績を残した団体がディンギー(男子・女子)の出場権を得る(男女各7枠)。
2023年および2024年大陸別予選大会、各種
2023年世界選手権または2024年ILCA世界選手権で出場権を獲得していない国内オリンピック委員会のうち、大陸別予選大会の最高位の団体に出場枠が与えられる。
男子・女子ディンギーを除いて、1種目につき1枠が各地域(アフリカ、アジア、中南米、ヨーロッパ、北米・カリブ海、オセアニア)に与えられる。男子・女子ディンギーに関してはアジアに男女各3つ、その他の地域に男女各2つの出場枠が割り当てられる。
大陸別予選大会で割り当てられる出場枠は、男子31艇、女子31艇、混合12艇、合計74艇。
2024年ラストチャンスレガッタ
ラストチャンスレガッタは、フランス・イエールで2024年4月18日〜27日に予定されている「フランス・オリンピックウィーク(Semaine Olympique Française)」と合わせて行われる。上記の大会でまだ出場権を獲得していない国内オリンピック委員会のうち、上位の団体が出場枠を獲得する。配分は以下の通り(合計39)。
- ウィンドサーフィン:男女各5枠
- カイト:男女各5枠
- ディンギー:男女各3枠、混合4枠
- スキフ:男女各3枠
- 混合マルチハル:混合3枠
エマージング・ネーションズ
ワールドセーリング・エマージングネーションズプログラムのメンバーで、まだ出場権を得ていない選手は、2024年ラストチェンスレガッタでの成績に基づき出場枠を得る。ウィンドサーフィン、ディンギーともに男女各1枠。
ユニバーサリティ
男子ディンギー2枠、女子ディンギー2枠の計4枠がユニバーサリティ枠として確保されている。ラストチャンスレガッタ後、三者委員会が決定する。
パリ2024:セーリングのフォーマットと日程
セーリング競技は、2024年7月28日〜8月8日の日程で実施される。
オリンピックではフリートレース方式が採用されており、艇はコースを周回する。レースでは、艇の順位が高いほど得点が少なくなる。例えば、レースで優勝した場合は1点、2位の場合は2点。したがって、できるだけ少ない点数を獲得することが目標となる。各レースの得点を合計して順位が決まる。
大会ではまずオープニングシリーズとして各種目で決められた数のレースが行われ、各種目の上位10チームが決勝フェーズ(メダルレース、メダルシリーズ)に進出する。
ウィンドサーフィンのメダルシリーズでは、準々決勝、決勝が行われ、3艇による決勝が実施される。また、ディンジーのメダルレースでは、ポイントが2倍で最終ランキングに反映され、メダリストが決まる。カイトのメダルシリーズでは、3勝した選手が勝ちとなる。
パリ2024に向けて注目のセーリング選手
セーリング競技では種目に多くの変更があったため、パリ2024では新たにオリンピックメダリストが誕生することが予想される。
セーリング界で最も伝統ある強豪国のひとつである英国では、リオ2016と東京2020のチャンピオンであるハナ・ミルズとジャイルズ・スコットが引退を発表。東京オリンピックで金メダルを獲得したディラン・フレッチャー(49er級)とエイリー・マキンタイア(470級)、銀メダリストのジョン・ギムソンとアナ・バーネット(ナクラ17級)が、パリ2024出場に向けて英国をリードするだろう。
ブラジルのマルティーヌ・グラエル、カヘナ・クンゼ組(49erFX級)は、オリンピック史上初の3連覇を目指す。2022年の世界選手権でアネット・ドゥーツと組んで優勝したオディール・ファン・アーンホルト率いるオランダの艇と再び激しい競争を繰り広げることになりそうだ。
その他、3大会連続のメダル獲得を目指すクロアチアのトンシ・スティパノビッチ(レーザー級)、2022年の世界選手権で優勝、東京2020で金メダルを獲得したイタリアのルッジェーロ・ティータとカテリナ・バンティ(ナクラ17級)、そして強豪であるフランス、中華人民共和国、スペインも注目の存在だ。
セーリング、パリ2024までの流れ
- 2023年8月10日~20日:2023年セーリング世界選手権(オランダ・ハーグ)
- 2023年8月29日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2023年9月1日まで:ワールドセーリングは、ワールドセーリング・エマージング・ネーションズプログラムに選ばれた選手をメンバー・ナショナル・オーソリティに書面で通知する
- 2023年9月16日〜24日:ヨーロッパ大陸予選大会 - 2023年フォーミュラーカイト級ヨーロッパ選手権(英国・ポーツマス)
- 2023年10月2日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2023年10月1日:国際オリンピック委員会(IOC)は、資格のあるすべての国内オリンピック委員会に対し、ユニバーサリティ枠の申請を提出するよう連絡する
- 2023年10月10日〜15日:ヨーロッパ大陸予選大会 - 2023年49er級・FX級・ナクラ17級ヨーロッパ選手権(ポルトガル・ヴィラモウラ)
- 2023年10月23日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2023年10月20日〜11月10日:中央・南アメリカ大陸予選、北アメリカ大陸・カリブ海予選 - パンアメリカ競技大会(チリ・サンティアゴ)
- 2023年11月17日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年1月15日:国内オリンピック委員会がユニバーサリティ枠の申請を提出する
- 2024年1月24日〜31日:2024年ILCA6レーザーラジアル級世界選手権(アルゼンチン・マルデルプラタ)
- 予選終了後7営業日以内 :ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年1月24日〜31日:2024年ILCA7レーザー級世界選手権大会(オーストラリア・アデレード)
- 予選終了後7営業日以内:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年1月26日〜2月3日:ヨーロッパ大陸予選大会 - 2024年iQフォイル級ヨーロッパ選手権(スペイン・ランザローテ)
- 2024年2月12日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年2月16日〜23日:ヨーロッパ大陸予選大会 - ILCAシニア・ヨーロッパ選手権およびオープン・ヨーロピアン・トロフィー(ギリシャ・アテネ)
- 2024年3月1日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年2月24日〜3月3日:ヨーロッパ大陸予選大会 - 2024年470級世界選手権(スペイン・パルマ)
- 2024年3月8日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 日程未定:各種大陸大会
- 予選終了後7営業日以内:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 2024年3月14日まで:国内オリンピック委員会はワールドセーリングに対し、出場枠の使用意思を表明する
- 2024年3月20日まで:ワールドセーリングは、未使用の出場枠をすべて再配分する
- 2024年4月18日〜27日:2024年ラストチャンスレガッタ(フランス・イエール)
- 2024年5月3日まで:ワールドセーリングは国内オリンピック委員会に対し、獲得した出場枠を書面で通知する
- 招待から2週間後:国内オリンピック委員会はワールドセーリングに対し、出場枠の使用意思を表明する
- 前の各ステップから5日以内:ワールドセーリングは、未使用の出場枠をすべて再配分する
- ラストチャンスレガッタ後(日時未定):三者委員会は、国内オリンピック委員会(該当する場合)に対してユニバーサリティ枠の割り当てを書面で通知する
- 2024年7月8日:パリ2024競技エントリー締切
- 2024年7月26日~8月11日:パリ2024オリンピック競技大会
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