東京2020オリンピック4位の雪辱を果たすべく、パリ2024に挑む日本代表たち
人生をかけた様々なドラマが繰り広げられるオリンピックにおいて、最も悔しい思いをした選手は誰だろうか?
選手それぞれに千差万別の物語がある中でも、あと一歩のところでオリンピックメダルを逃した4位の選手の悔しさは、想像を超えるものだろう。パリ2024オリンピックでは、TEAM JAPANを代表する5人の選手と3つの団体種目選手が、今度こそ夢を叶えるために強い決意を胸に、パリの舞台で再び挑戦する。
ここでは、東京2020大会で惜しくも4位に終わり、オリンピックメダリストの栄光を逃した選手たちが、3年にわたるさらなる努力を積み重ね、念願のパリ2024オリンピックに挑む姿を紹介する。
瀬戸大也
4度の世界水泳王者、世界短水路6連覇、オリンピック銅メダル…限界に挑み続け、水泳界で数々の偉業を達成してきた瀬戸大也が目指すのは、パリ2024での金メダルだ。
ロンドン2012代表選考会を兼ねた2012年日本選手権で、少年時代からのライバル、萩野公介に敗れ3位となり、オリンピック出場を逃すところから始まった瀬戸のオリンピックへの挑戦。リオ2016では、盟友の萩野(金)とともに念願のオリンピックメダル(銅)を獲得し、共に表彰台を飾る。より良い色のメダルを求めて出場した東京2020では、3種目で出場枠を獲得し、メダル有力候補として出場するも、男子400m個人メドレーと200mバタフライでまさかの予選敗退、200m個人メドレーで意地の決勝進出を果たし、4位入賞の成績に終わる。
同学年の萩野が東京大会後に引退する中、まだ獲得できていないオリンピック金メダルへの挑戦に向けて再スタートを切った瀬戸は、目標に向かって前進し続けた。2022年のブダペスト世界水泳では、男子200m個人メドレーで銅メダルを獲得。続く、2年延期での開催となった福岡での世界水泳2023では、男子400m個人メドレーで銅メダルを獲得し、さらにオリンピックイヤーに行われた2024年2月の世界水泳(カタール・ドーハ)で、400m個人メドレーで再び銅メダルに輝き、世界の競泳シーンで日本を代表し、目覚ましい成果を収めつづけてきた。
パリ2024の男子200m個人メドレーは、8月1日に予選、2日に準決勝が行われ、メダリスト決定戦となる決勝は3日に開催される。未だ成し遂げたことのない夢に向かって突き進む、瀬戸の『挑戦』に目が離せない。
プロフィール
- 生年月日:1994年5月24日(30歳)
- 出身地:埼玉県入間郡
- オリンピック歴:リオ2016 400m個人メドレー 銅メダル、東京2020 200m個人メドレー
- 出場種目:男子200m個人メドレー
- ソーシャルメディア:Instagram
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楢崎智亜
東京2020オリンピックで新たに採用されたスポーツクライミングで金メダルに最も近いと期待されながらも表彰台に1ポイント差の4位に終わった楢崎智亜(ならさき・ともあ)。初代王者の座を逃し、悔しい結果となった自国開催のオリンピックの経験を払拭するために、パリ2024では自分らしいクライミングを存分に発揮し、念願のオリンピックメダル獲得を目指して全力を尽くす。オリンピック後、日本スポーツクライミング界のパイオニアであり、東京2020の銅メダリストである野口啓代(東京大会後引退)と結婚し、第一子を授かった楢崎は、父として、夫として新たな決意でパリの舞台に立つ。
東京2020から種目構成が変更され、ボルダー&リードの複合種目が新たに導入されるパリ2024で、その3年間の成長を披露する時が来た。複合種目男子は、8月5日と7日に2日間で準決勝が行われ、ボルダーとリードの結果を合計した上位8人が決勝ヘ進出。8月9日の決勝では、1日でボルダーとリードの両方が行われ、新種目での初代メダリストが決まる。
プロフィール
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アーティスティックスイミング
『マーメイドジャパン』の愛称で親しまれる日本のアーティスティックスイミング(旧称:シンクロナイズドスイミング)チームは、オリンピックでこれまで銀4個、銅10個の計14個のメダルを獲得し、成功を収めている強豪国でありながら、金メダルにはまだ手が届いていない。自国開催の東京2020では、デュエットで乾友紀子(2023年10月引退)と吉田萌が4位、チーム(乾、吉田、木島、京極、塚本、福村、安永、柳澤)でも4位と、あと一歩及ばず大きな挫折を味わった。
東京大会後に元日本代表の中島(旧姓小西)貴子をヘッドコーチに迎え、2022年の世界選手権からデュエット種目に14歳(当時)の比嘉もえを大抜てきして強化を進めてきたマーメイドジャパンは、パリ2024で、安永真白と比嘉もえが出場するデュエット種目と、8人で演技を行うチーム種目(安永、比嘉、佐藤、吉田、木島、島田、和田、小林、控え藤井)でメダル獲得を目指す。
新しい採点方法が導入され、チーム種目にアクロバティック・ルーティンの追加と、男子選手が最大2名参加可能となる新たな要素が加わり、大きな改革が行われたアーティスティックスイミングにおいて、日本がどんな戦い方をするのかに注目したい。
パリ2024では8月5日から10日までの日程で行われ、初日にチーム・テクニカルルーティンから始まり、7日にチーム種目のメダリストが決まる。その後、9日と10日にデュエット種目が行われる。
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フェンシング男子フルーレ個人・団体
「メダルにあと一歩届かず人生で一番、本物の悔しさを知りました」。初出場となった東京2020の男子フルーレ個人で、北京2008の太田雄貴(銀メダル)以来の個人4強に入るも、オリンピックメダリストの称号を得ることができなかった悔しさを自身のSNSで綴った敷根崇裕(しきね・たかひろ)。
2016年世界ジュニア選手権で個人、団体の2冠に輝き、翌年の世界選手権で銅メダルを獲得、2019年のアジア選手権でも個人、団体で2冠を達成し、期待の星として成長を遂げてきた。パンデミックの影響で延期となった1年で、約10キロの減量を成功させ、183cmの長身と繊細な剣さばきを生かした攻撃力に加え、俊敏性と体力を向上させ、悲願のオリンピックに挑むも、世界の壁は厚かった。
3位決定戦の敗戦から6日後の男子フルーレ団体戦で、主将の松山恭助、西藤俊哉、永野雄大(リザーブ)とともに気持ちを新たに再びピスト(試合コート)に立った敷根は、準々決勝で世界ランキング3位のイタリアを破るなど成長してきた日本の力を証明するも、3位決定戦で世界ランキング1位(日本6位)のアメリカ合衆国に31-45で敗れて4位に終わり、またもメダルを逃すという雪辱を味わった。
悔しさをバネにパリを目指し再出発した男子フルーレ団体は、2023年6月のアジア選手権で3連覇達成、7月の世界選手権で団体史上初となる世界タイトル獲得の快挙を成し遂げ、パリ本番に向けて調子を上げてきている。
東京2020で持ち越しとなった夢のオリンピックメダル獲得を目指し、敷根、永山、飯村一輝、永野(リザーブ)は、パリの舞台で団体と個人でリベンジを誓う。
プロフィール
- 氏名:敷根崇裕
- 生年月日:1997年12月7日(26歳)
- 出身地:大分県大分市
- 出場種目:男子フルーレ個人
- オリンピック歴:東京2020 男子フルーレ個人4位、男子フルーレ団体4位
- ソーシャルメディア:Instagram
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サッカー男子日本代表
東京2020準決勝でスペイン代表に延長戦の末に惜敗し、53年ぶりのメダルをかけて挑んだ3位決定戦ではメキシコ代表に敗れてメダル獲得を逃したTEAM JAPAN。攻撃の中心としてチームを牽引したエースのMF久保建英が試合終了後、ピッチ上で悔し涙を流し続けたあのシーンを、まだ覚えている人も多いのではないだろうか。
選手とファンの想いを胸に、東京大会後日本代表の新監督として、元Jリーガーの大岩剛が就任し、ハイレベルで緻密な戦い方ができるチーム作りをしてきた。
パリ大会のサッカー男子は、原則23歳以下の選手で構成されるなか、年齢制限のないオーバーエイジ枠の登録が3人まで認められている。しかし、今大会で日本はその枠を採用せず、北京2008以来4大会ぶりにU23のみで構成される18人+バックアップメンバー4人を発表。エースストライカーの細谷真大(柏レイソル)や、中盤の要となる、藤田譲瑠チマ、J1リーグ首位のFC町田ゼルビアを牽引してきた藤尾翔太のほか、欧州組からは斉藤光毅(ロンメルSK/ベルギー)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム/オランダ)などを招集した。
パリオリンピックアジア最終予選の決勝で、ウズベキスタンを破りパリの切符を掴んだTEAM JAPANは、アジア王者としてパリ大会に臨む。
グループステージが開会式2日前の7月24日から始まるパリ2024で、日本は初日に1次リーグD組初戦でパラグアイと対戦。3試合の総当たり戦を経て、まずは決勝トーナメント(ノックアウトステージ)進出を目指す。決勝は8月9日にパルク・デ・プランスで開催される。
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戸本一真
「やっぱりオリンピックの力はすごい」。東京2020オリンピック後、馬術の普及を実感するとTEAM JAPAN TVインタビューで語った戸本一真(ともと・かずま)は、「嬉しい限りですね」と馬術人気を喜びながらも、「これで僕がもう一つ順位が上だったら、もっとそれが大きかったんだと思う」と悔しさを滲ませた。
東京2020を目指して2015年に障害馬術から総合馬術に転向し、2017年に馬術界のレジェンド、ウィリアム・フォックスピットをトレーナーに迎えて急成長を遂げた戸本は、東京でオリンピック初出場を果たす。しかし、東京では、初日の馬場馬術7位からクロスカントリーをミスのない騎乗で5位に浮上させ最終日の障害飛越に繋げるも、1本目の障害物を1つ落下させたことで、銅メダルまで2.3ポイント届かずに、無念の4位に終わった。ロサンゼルス1932の障害飛越で、西竹一(42歳で死去)が金メダルを獲得して以来、メダル獲得のない日本馬術界に、オリンピックメダルをもたらすことができるか。パリ2024では、パートナーである馬と共に悲願のオリンピックメダルを目指す。
馬術競技はヴェルサイユ宮殿を会場に、開会式翌日の7月27日より総合馬術(馬場馬術)からメダルをかけた争いが始まり、8月6日の障害馬術・個人で馬術競技の全日程を締めくくる。
プロフィール
- 生年月日:1983年6月5日(41歳)
- 出身地:岐阜県本巣市
- オリンピック歴:東京2020 総合馬術個人4位
- 出場種目:総合馬術個人
- ソーシャルメディア:Instagram
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松山英樹
2013年4月に大学に通いながらプロに転向し、国内ツアーで4勝を挙げて史上初のルーキーイヤーで賞金王に輝いた松山英樹。2014年からはアメリカツアーに本格参戦し、世界のトップゴルファーとして活躍を続けている日本が誇るトップアスリートだ。
東京2020の開催4か月前には、海外メジャー大会「マスターズ・トーナメント」で日本男子選手として初制覇を達成。母国開催のオリンピックでは優勝候補として注目を集めたが、初出場のオリンピックでは最後まで優勝争いに加わるも、3位タイで7人が並ぶ銅メダルプレーオフで1ホール目で惜しくも脱落し、メダル獲得はならなかった(最終結果は4位タイ)。
世界トップクラスのゴルファーとして確固たる地位を築いた松山は、今年アメリカツアーに主戦場を移して10年目となる。パリ大会では、東京で果たせなかった「金メダル獲得」を目指し、新たな挑戦に挑む。
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