頭脳と体を巧みに使ってそり立つ壁を攻略していく。そんな選手らの姿が多くのファンを魅了し、東京2020オリンピックを盛り上げたスポーツクライミング。パリ2024でも実施されることが決まっており、クライミング熱が今後ますます高まることは間違いない。
今回の「きょうだいアスリートの絆」シリーズでは、東京オリンピックで4位に入賞した2019年世界王者の**楢﨑智亜と、同じくクライミング界で活躍する楢﨑明智**の楢﨑兄弟に注目してみよう。
- 楢﨑智亜(ともあ/1996年6月22日)
- 楢﨑明智(めいち/1999年5月13日)
兄の影響で始めたクライミング
栃木県出身で楢﨑家3人兄弟の次男として生まれた智亜は、10歳のころ長男の影響を受けてクライミングを始めた。そんな姿を見ていた3歳下の三男・明智もクライミングに興味を持ち、翌年からクライミングを開始。15年近く共に競技を続けている。
普段から互いに対するコメントや写真をそれぞれソーシャルメディアに投稿しており、先日、明智が23歳の誕生日を迎えた際に、智亜は自身のインスタグラムで「There will never be another you. Thank you for being my best brother!(お前に代わるやつはいない。最高の弟でいてくれてありがとう)」と投稿した。
一方、明智は子ども時代について、「自分の同年代より、智君の同年代と遊ぶことの方が多かったです」と、Climbersのインタビューで語るなど、子どもの頃からふたりは仲良し。2015年のアジアユース選手権で兄・智亜が初めて優勝すると、明智は兄の背中を追うように、2年後の同大会で優勝してみせた。
日頃から近くで切磋琢磨しており、智亜の妻で東京オリンピック銅メダリストの**野口啓代**さんや、スピードクライマーの池田雄大とともにYouTubeチャンネル「TAMY Climbing Channel」も運営。今年2月に行われたボルダリングジャパンカップをふたりで総括し、明智は兄の優勝を称えつつも、智亜の予選について「下手くそすぎ」と発言。そんな言葉が出るのも、常に近くで互いを見続け、厚い信頼関係を築いているからに他ならない。
夢見ていた兄弟バトル
智亜は2012年にワールドカップデビューを果たし、明智はその4年後にデビュー。ともに大会に出場してきたものの、ワールドカップで一緒に決勝進出を果たしたのは先日行われたボルダリングのワールドカップ・ソウル大会が始めて。
5月7日、8日に行われたこの大会では、当初出場予定だった山口賢人が膝の故障により不参加となり、代わって派遣されたのが明智だった。準決勝を智亜が首位、明智が3位で通過すると、智亜は自身のインスタグラムで「ずっと夢見ていたWORLDCUP兄弟バトル!!」とつづり気合を入れた。
結果は、智亜が4完登4ゾーン獲得で2位、明智が2完登3ゾーン獲得で5位。今季ワールドカップの初戦で優勝していた智亜は連覇とならなかったことに悔しさをにじませたが、「しかし今回は、弟明智とWORLDCUPで初めて決勝に残れましたし、決勝の6人中5人が日本人という快挙でした」と、日本勢の活躍や弟と一緒に決勝を戦えた喜びに浸った。
子どもの頃から大きな舞台でともに表彰台に立つことを夢見てきたという楢﨑兄弟。智亜は5月20日〜22日、27日〜29日に行われるソルトレイクシティ大会への出場が発表され、一方の明智は、自身のインスタグラムで「次は第五戦のイタリア大会に出場する予定」とつづっており、共に出場することが正式に決まれば、再び兄弟での奮闘が見られるだろう。ふたりが「ワンツー」フィニッシュを飾る日を楽しみにしたい。