【パリ2024の新しいこと】進化するアーティスティックスイミング

執筆者 Marta Martín
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写真: Aniko Kovacs / European Games 2023

パリ2024オリンピックのアーティスティックスイミング競技では、史上初めて男子の出場が可能となるほか、アクロバティックルーティンが加わる。主な変更点を紹介しよう。

パリ2024オリンピックでは、ブレイクダンスの名で知られるブレイキンが初めてプログラムに組み込まれるだけでなく、一部競技ではフォーマットや種目などが変更され、競技の新たな魅力が紹介される。パリ2024で何が新しくなるのか。Olympics.comでは「パリ2024の新しいこと」と題し、変更点をシリーズで紹介する。

今回は、歴史的な変更が加えられるアーティスティックスイミングを紹介したい。

2017年に「シンクロナイズドスイミング」から「アーティスティックスイミング」に名称変更されたこの競技は、1984年のロサンゼルス大会で初めてオリンピック・プログラムに組み込まれ、2000年のシドニー大会から東京2020までは同じ競技形式で競技が行われた。実施種目は女子デュエットと女子チームの2種目で、それぞれテクニカルルーティンとフリールーティンの合計得点に応じてメダルが授与された。

女子デュエットはこれまでと変わらないが、パリ2024のチーム種目には以下2つの変更が加えられる。

  • 男子選手も出場可能
  • アクロバティックルーティンの追加

ここでは、上記2つの変更点をそれぞれ見ていきたい。

パリ2024のアーティスティックスイミング、男子も参加

アーティスティックスイミングは、2024年7月26日に開会式を迎えるパリ2024で新たな歴史を刻むことになる。

パリ2024のアーティスティックスイミング・チーム種目では、8選手がチームを組んで演技を披露する。これまでは女子のみでチームが構成されていたが、国際オリンピック委員会は2022年12月22日に、1チームにつき最大2人の男子選手が参加可能となることを発表した

男子選手の参加は必須ではないが、この決定による変化はすでに見られる。

7月2日に閉会したヨーロッパ競技大会2023では、イタリアのジョルジョ・ミニシーニがシニアの主要大会でチーム種目に出場した史上初の男子選手となり、歴史にその名を刻んだ。

ミニシーニは出場しただけでなく、イタリア代表チームのメダル獲得にも貢献。同チームはテクニカルルーティンとフリールーティンの両方で銀メダル、アクロバットルーティンで銅メダルを手にした。また、混合デュエット・テクニカルルーティンでは金メダル、同フリールーティンでは銀メダルにも輝いた。

ミニシーニはソーシャルメディアを通じて、「私たちは今、このスポーツに取り組むすべてのアスリートに希望とチャンスをもたらすための道を歩んでいます」とコメントし、ルール変更への思いをつづった。

アーティスティックスイミングにおけるパイオニア的な存在の男子選手はミニシーニだけではない。2022年のヨーロッパ選手権で男子初のソロ種目で銅メダルを獲得したフランス出身のクエンティン・ラコトマララは、「人々のメンタリティを変えること。そして、シンクロスイマーに抱く煌びやかなイメージを変え、(男女関係なく)一体になって取り組むことができるスポーツであることを示すこと」と、自身が掲げる目的をOlympics.comに語った。

2023年7月13日〜30日の日程で福岡で開催される「世界水泳選手権2023福岡大会」のアーティスティックスイミングには、18歳の佐藤陽太郎が日本代表メンバーとして出場する。

アクロバティックルーティンとは?

オリンピックのアーティスティックスイミング競技における進化は、男子選手の参加だけではない。

パリ2024のアーティスティックスイミング・チーム種目では、すでに競技内容に組み込まれているテクニカルルーティンとフリールーティンに加え、新たにアクロバティックルーティンが追加され、3つのルーティンの合計得点で順位が決まる。

しかし、アクロバティックルーティンとは一体何なのだろうか?

アクロバティックルーティンはこれまで「ハイライト」と呼ばれ、2019年の世界選手権で初めて実施された。ワールドアクアティクスの説明によると、アクロバットルーティンでは「複雑な隊形、空中での動き、アクロバットな動きの多様な組み合わせで、難易度、完遂度、芸術性を見極め・評価することが審査員に求められる」ことになる。

アクロバットルーティンの動きは主に4つのグループに分けられ、チームは下記の各グループから少なくとも1つずつ、合計7つの動作を披露。以下の条件をもとに審査が行われる。

  • A(エアボーン=空中)…すべての要素は空中で行われる
  • B(バランス)…すべての要素はサポートやベースの上で行われる
  • C(コンバインド)…AとBの要素を含む
  • P(プラットフォーム)…1人または複数のメンバーの動作(飛ぶ以外)を土台となってサポートする選手の難易度など

パリ2024オリンピックではこの2つの画期的な新要素がアーティスティックスイミング・チーム種目に加わり、ますますダイナミック、かつ一糸乱れぬパフォーマンスでファンを魅了することだろう。