【パリ2024の新しいこと】  新種目「iQフォイル級」とは?「RS:X級」に代わって登場

執筆者 Guillaume Depasse
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Marta Maggetti of Team Italia
写真: Sailing Energy

パリ2024オリンピックのセーリング競技では「RS:X」に代わって「iQフォイル」がウインドサーフィンの艇として採用される。iQフォイルとは? 注目のアスリートは?Olympics.comがそれらの疑問の答えを探った。

パリ2024オリンピックではブレイキンなどの新競技が登場するほか、競技形式や種目が変更される競技もある。Olympics.comでは、次の夏季オリンピックで新しく変わることをシリーズで紹介したい。

ここでは、パリ2024のセーリング競技で新たに実施される種目、ウインドサーフィンiQフォイル級について探った。

パリ2024の「iQフォイル級」とは?

iQフォイル(アイキューフォイル)はウインドサーフィンで使われる艇種で、これまでのRS:X(アールエスエックス)との主な違いは、ダガーボード(横流れを防ぐために船底に付ける翼)ではなく水中翼(ハイドロフォイル)が設けられていることにある。ボードの底に取り付けられた水中翼により、走行時にボードが水面から浮き上がり、まるで飛んでいるように見える。

この技術のおかげで、選手たちはより速く艇を走らせることができ、競技は一層華やかなものとなる。

これまでのオリンピックで実施された「RS:X級」とは?

北京2008オリンピックから東京2020まで、セーリング競技のウインドサーフィンではRS:X級が実施された。伝統的なダガーボード(キール)が特徴で、iQフォイルと同じタイプのセールを使用する。

このフォーマットの有力選手として、男子ではロンドン2012リオ2016で金メダルを獲得したドリアン・ファンリエセルベルゲ(オランダ)、リオ2016で金メダル、東京2020で銀メダルを獲得したシャルリーヌ・ピコン(フランス)がいる。

iQフォイル級とRS:X級の主な違いは?

新旧のオリンピック艇の主な違いは、iQフォイルはRS:Xよりもスピードが速いことにある。また、水中翼のおかげでボードが水面の上にあるため微風でもパフォーマンスがよく、水の抵抗が抑えられることでマークブイに対してルートを取りやすいことにある。

また、フォイリング(水上走行)は静かでスムーズなため体への負担は少ないが、最高速度を出す上でボードと水中翼のバランスを取ることに高い集中力が求められる。

iQフォイルはスタート直後に時速25kmのスピードに達する一方、RS:Xは時速5km程度でスタートする。

iQフォイルではボードがより広くより短いため、コンパクトで素早い動作が可能となる。

セーリングiQフォイル級の注目選手

RS:X級からiQフォイル級に転向する選手も多く、これまでのオリンピックのウインドサーフィン種目と同様、オランダが男子の強豪国だ。

このクラスが初めて実施された2021年の世界選手権で銅メダルを手にしたルーク・ファン・オプゼランドは、2022年には銀メダルを獲得。同じくオランダ出身のハーグ・ヤン・タクは2022年に銅メダルを獲得しており、2人はともにパリ2024オリンピックでメダル候補となるだろう。一方、キラン・バドルーは、2020年欧州選手権のこの種目で史上初の王者となり、1年後にはRS:X級でオリンピック王者となった。パリでも優勝争いに加わる可能性は高い。

そのほかの有力選手をあげると、東京2020のRS:X級で銀メダルを獲得したトマ・ゴヤール(フランス)の兄弟であるニコラ・ゴヤールは、2021年世界選手権のこの種目で優勝。その年の欧州選手権でヨーロッパ王者となり、翌年には2連覇を飾った。2022年の世界選手権を制したドイツのセバスチャン・コーデルも上位争いを繰り広げる選手となるだろう。

女子では、2021年に世界王者になったイレン・ノエズマン(フランス)に注目だ。29歳の彼女は、2020年、2021年、2022年の欧州選手権で3連覇を達成。2022年世界選手権にはこの勢いを持ち込むことはできず、同大会ではイタリアのマルタ・マジェッティがイスラエルのダニエラ・ぺレグ、マヤ・モリスを抑えて金メダルを手にした。

英国のアイラ・ワトソンは2020年と2021年の欧州選手権で2大会連続で2位となっており、同じく英国のエマ・ウィルソンは東京2020のRS:X級で銅メダルを獲得し、2022年の欧州選手権で2位。2019年世界選手権のRS:X級で優勝したオランダのリリアン・デ・グースは、その2020年欧州選手権(iQフォイル)で銅メダルを獲得した。

iQフォイルの大きさやスピードは?

  • iQフォイルのボードの大きさ:220x95cm
  • iQフォイルのセールの大きさ:男子9m2、女子8m2
  • iQフォイルの平均速度:およそ42 km/h(向かい風33km/h、追い風54km/h)
  • iQフォイルの最高速度:おそよ63km/h

比較としてRS:Xの大きさ、スピードは以下の通りとなる。

  • RS:Xのボードの大きさ:286x93cm
  • RS:Xのセールの大きさ:男子9.5m2、女子8.5m2
  • RS:Xの平均速度:およそ10km/h
  • RS:Xの最高速度:およそ55/60km/h

パリ2024オリンピック、セーリングのiQフォイル級に出場するには?

パリ2024オリンピックのためのiQフォイル級の最初のオリンピック予選大会は2023年セーリング世界選手権で、2023年8月10日〜20日の日程でオランダのハーグで開催される。

その後、2023年〜2024年に大陸別の予選大会(日程未定)が実施され、2024年4月18日〜27日にフランス・イエールで2024年ラストチャンスレガッタが行われる。

パリ2024セーリングiQフォイル級の日程

2024月7月28日(日)

  • 11:00-19:00 男子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ
  • 11:00-19:00 女子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ

2024月7月29日(月)

  • 11:00-19:00 男子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ
  • 11:00-19:00 女子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ

2024月7月30日(火)

  • 11:00-19:00 男子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ
  • 11:00-19:00 女子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ

2024月8月1日(木)

  • 11:00-19:00 男子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ
  • 11:00-19:00 女子ウインドサーフィンiQフォイル級 - オープニング・シリーズ

2024月8月2日(金)

  • 11:00-19:00 男子ウインドサーフィンiQフォイル級 - 決勝シリーズ
  • 11:00-19:00 女子ウインドサーフィンiQフォイル級 - 決勝シリーズ