【パリ2024の新しいこと】近代五種競技の新フォーマット
1912年に行われたストックホルム大会で初めてオリンピック競技として実施された近代五種。これまでは1日かけて競われていたが、パリ2024ではフォーマットが変更され、わずか90分で勝敗が決まる。
パリ2024オリンピックでは、ブレイクダンスの名で知られるブレイキンが初めてプログラムに組み込まれるだけでなく、一部競技では、フォーマットや種目などが変更されるなど、各競技の新たな魅力を発見する機会となる。パリ2024でどんなことが新しくなるのか。Olympics.comでは「パリ2024の新しいこと」と題し、変更点をシリーズで紹介する。
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今回取り上げるのは、ストックホルム1912から実施されている近代五種競技。100年以上の歴史を持つこの競技は、これまでにも何度か変更点が加えられ、パリでは新たな形式で競技が行われる。
近代五種のこれまでのフォーマット
近代五種は、フェンシング、競泳、馬術、射撃、ランニングという5つの異なるスポーツで競われる複合競技。
もともとは4〜6日間にわたって競技が行われていたが、アトランタ1996では1日に変更され、ロンドン2012では競技をより面白くするため、射撃とランニングを組み合わせて実施されるようになった。
近代五種では、フェンシング、乗馬、競泳のポイントをもとに最終種目レーザーランのスタート順位を決め、レーザーランで最初にゴールラインを通過した選手が勝ちとなる。この一連のプロセスは、これまで何時間もかけて行われていたが、新たなフォーマットでは大きく異なる。
パリ2024では、準決勝と決勝が90分に凝縮され、1ヶ所の会場で行われる。しかし、どうやって? 新しくなった近代五種のフォーマットを見てみよう。
パリ2024における近代五種の新フォーマット
パリ2024の近代五種は2024年8月8日〜11日に予定され、男子36人、女子36人の計72人が近代五種に出場する。初日の8月8日にパリ北アリーナでフェンシングのランキングラウンド(ボーナスラウンドにおける選手のスタート順を決める)が行われる。
その後、会場をヴェルサイユ宮殿へと移し、男子準決勝が8月9日(金)、女子準決勝が8月10日(土)、男子決勝が8月10日(土)の午後から夕方にかけて行われ、女子決勝が8月11日(日)に予定されている。
準決勝を通じて選手の数は半数に絞られ、18人で決勝を競う。その時間は90分間。競技の順番や時間は以下の通りとなる。
- 35分:馬術
- 5分:休憩
- 20分:フェンシング(エペ)ボーナスラウンド
- 10分:休憩
- 15分:競泳200m自由形
- 15分:休憩
- 20分:レーザーラン(射撃、ランニング)
選手は各種目の成績に応じてポイントが加算される。そのポイントによって最後の種目であるレーザーランのスタート順が決まる。得点を時間に換算し、上位選手から時間差(1ポイント=1秒)でレーザーランを開始し、その着順が最終順位となる。
新フォーマットへのアスリートの反応は?
近代五種の競技形式の変更は、この競技をコンパクトかつダイナミックなものにしながら、より理解しやすくして、競技の人気を高めることを目的としている。1つの会場で短時間に完結することで、ファンは競技をより身近に感じ、放送も最適化されることが期待されている。
選手たちはこの変更についてどう感じているのか?
オリンピックに3度出場し、リオ2016で銀メダルを獲得したエロディー・クルベル(フランス)は、Olympics.comのインタビューで次のように語った。
「もちろん、最初の頃は次から次へとこなすのが体力的に難しく、少し大変でした。水泳を終えて、レーザーランに向かうため、水泳で疲れた腕を鍛えなければなりません。以前は回復する時間がありました」
「このような小さな調整をすべてのトレーニングで行わなければなりませんでした。私たちは一連の流れに特化したトレーニングを行い、最終的には体を慣らすことができました。ワールドカップ2023シーズンのおかげでしっかり準備ができました」
同じくフランス出身で、世界選手権を6度制したヴァランタン・ブローは、国際近代五種連合(UIPM)のウェブサイトにこうコメントしている。
「私は約15年間トップレベルのアスリートとして、近代五種の進化を見てきました。五種選手に求められる第1の資質は順応性です。私たちはそれを長年続けてきました。この新しいバージョンは、五種競技を進化させる素晴らしい方法だと思います。私は現在28歳ですが、この新しいバージョンを怖く感じています。この恐怖を克服し、これからも進歩するために努力しなければなりません」
パリ2024近代五種での活躍が期待される選手
英国は近代五種で有力選手を擁しており、東京2020ではジョー・チュン、ケイト・フレンチがそれぞれ金メダルを獲得した。チュンは2022年の世界選手権でも優勝しており、両者ともパリ2024での連覇を狙って戦いに挑むことだろう。
ロンドン2012で金メダル、東京2020で銀メダルを獲得したラウラ・アサダウスカイテ(リトアニア)や、2022年の世界選手権で準優勝となった、ミツェレ・グヤーシュ(ハンガリー)も注目の存在だ。
2023年6月にトルコ・アンカラで開催された近代五種ワールドカップ・ファイナルで優勝し、パリ2024近代五種の出場権獲得女子第1号となったエレナ・ミケリ(イタリア)は、2022年の世界選手権でも優勝しており、オリンピック金メダル争いに加わることが予想される選手のひとり。また、トルコのイルケ・オージュクセーウは、エジプト開催の2022年世界選手権で銅メダルを獲得し、オリンピックの表彰台を目指してトレーニングに励んでいることだろう。
フランスのエロディー・クルベルも忘れてはならない。リオ2016で銀メダルを手にした彼女は、母国開催のオリンピックで表彰台のさらに高い位置に立つ可能性もあり、前述のブローとともに地元ファンからの期待を背負う。
男子では、パリ2024の出場権を獲得したモハナド・シャバンや、東京2020銀メダリストのアハメド・エルゲンディなどのエジプト勢や、2022年世界選手権で3位となったバラージュ・シープ(ハンガリー)からも目が離せない。
パリ2024近代五種の出場権獲得方法は?
男女それぞれ33枠がさまざまな大会を通じて割り当てられるほか、開催国であるフランスに1枠、ユニバーサリティ枠として2枠の合計36枠が男女それぞれに用意されている。
- 33枠:2023年UIPM(国際近代五種連合)ワールドカップ・ファイナルで1枠 / 大陸選手権で20枠 / 2023年UIPM世界選手権で3枠 / 2024年UIPM世界選手権で3枠 / UIPMオリンピックランキングで6枠
- 2枠:ユニバーサリティ枠
- 1枠:開催国枠
パリ2024、近代五種の日程
8月8日(木)
11:00(日本時間18:00)〜
- フェンシング、女子ランキングラウンド
- フェンシング、男子ランキングラウンド
8月9日(金)
13:00(日本時間20:00)〜
- 男子準決勝
8月10日(土)
9:30(日本時間16:30)〜
- 女子準決勝
17:30(日本時間24:30)〜
- 男子決勝
8月11日(日)
11:00(日本時間18:00)〜
- 女子決勝