サーフィンWSLチャンピオンシップ・ツアー2023第10戦タヒチ・プロの見どころ、注目の選手、パリ2024出場枠

パリ 2024

パリ2024の会場になるチョープーの壮大な波にトップサーファーたちが挑むCT第10戦タヒチ・プロ。1年後に迫るオリンピックメダルをかけた戦いの試金石となるか。ファイナルに進出するのは誰?パリ2024出場枠を獲得するのは?日本の五十嵐カノアは出場枠を獲得することができるか?今大会の見どころを紹介しよう。

1 執筆者 Lena Smirnova
五十嵐カノア:2022リップ・カールWSLファイナルズ
(2022 Getty Images)

世界のトップサーファー34人が3mを超える波に挑むタヒチ・プロ(フランス領ポリネシア・タヒチ島チョープー)。今大会が開催されるチョープーは、唯一無二の壮観な波がブレイクすることで世界中に知られており、パリ2024オリンピックサーフィン競技会場でもある。

1月のハワイ・オアフ島から始まった2023年ワールドサーフリーグ(WSL)チャンピオンシップ・ツアー(CT)は、第10戦となる今大会と、9月のリップ・カールWSLファイナルズ(米カリフォルニア州サンクレメンテ・トレスルズビーチ)を残すのみとなった。8月11日から20日まで開催される今大会を終えた時点のCTランキング男女それぞれ上位5選手がファイナルズに出場することができる。

今大会は、世界ナンバーワンのサーファーを決める上で重要な大会のひとつであるが、同時に最終ランキング上位の男子10人と女子8人(ただし各国最大2人が上限のため同じ国の3人目以降を除いて)にパリ2024の出場枠が与えられる。このため、出場枠をめぐる戦いにも注目が集まっている。すでに男女それぞれ4人に割り当てられており、今大会ではその残りを巡る激しいランキング争いが予想される。

また、タヒチ島チョープーがパリ2024の会場となることから、今から1年後の戦いを見据えたトップサーファーらの力が試される機会としても今大会は重要な位置づけにある。

ここでは、WSLチャンピオンシップ・ツアー2023第10戦タヒチ・プロの見どころ、注目の選手、パリ2024出場枠についてお伝えする。

タヒチからファイナルズへ:男子トップ5に残るのは誰か

タヒチ・プロは、9月8日(金)から16日(土)に行われるWSLファイナルズ前の最後の1戦となる。最終ランキング上位5人までの男女がファイナルズに駒を進めることができる。

男子の3枠はすでに確定しており、前回チャンピオン、フィリペ・トレド(ブラジル)、イーサン・ユーイング(オーストラリア)、グリフィン・コラピント(アメリカ合衆国)が、7月に南アフリカ(ジェフリーズベイ)で開催されたCT第9戦オープンJベイでランキング上位3位を確定しファイナルズ進出を決めている。

ランキング首位のトレドは、最近の3戦のうち2戦を制しており、現在までに54,980ポイントを稼いでいる。キャリア3度目の優勝となったオープンJベイでは、パリ2024の出場枠(暫定)を獲得した。同じくランキング3位でファイナルズ進出を決めたコラピントも出場枠を獲得している。

トレドは、ブラジル男子チームで最初に出場枠を獲得したことになる。ブラジル男子チーム内では、各国が獲得できる最大2枠の2番目のスポットを巡って激しいランキング争いが繰り広げられている。現在、同国のジョアン・チアンカが4位、ヤゴ・ドラが5位、3度のWSLチャンピオン、ガブリエル・メジナが6位となっており、今大会の結果次第では順位が入れ替わる可能性がある。

メジナはドラより1,425ポイント遅れを取っており、自身初となるファイナルズを目指す現在7位のジョン・ジョン・フローレンス(アメリカ合衆国/ハワイ)より1,150ポイント先行している。

オーストラリアのジャック・ロビンソン(8位)、イアン・カリナン(10位)、コナー・オレアリー(11位)もトップ5を狙える圏内にいると言えるだろう。タヒチ・プロ後の最終ランキングで男子上位10人(ただし各国最大2人が上限のため同じ国の3人目以降を除いて)にパリ2024の出場枠が与えられるが、すでに出場枠が獲得しているユーイングに次いで、これら3人のうちの1人が出場枠を手に入れることができる。

すでにパリ2024への出場枠を獲得しているイタリアのレオナルド・フィオラヴァンティは現在9位。今大会の成績次第では初めてのファイナルズへ進出することが可能だろう。

東京2020金メダリストのイタロ・フェレイラ(ブラジル)は12位、同銀メダリストの日本の五十嵐カノアは13位。昨年のCTランキング5位に入り、リップ・カールWSLファイナルズへ進んだ五十嵐は、男子上位10人に与えられるパリ2024の出場枠を狙う。

女子ファイナリスト5人:残り1枠をかけた戦い

女子では、5度のWSLチャンピオン、カリッサ・ムーア(アメリカ合衆国)とタイラー・ライト(オーストラリア)が、CT第8戦リオ・プロですでにファイナルズ進出を決めている。また、キャロライン・マークス(アメリカ合衆国)とモリー・ピクラム(オーストラリア)もCT第9戦オープンJベイでファイナルズに駒を進めることを確実なものとしている。したがって、女子では5つあったファイナルズへの枠は残り1つしかない。

レイキー・ピーターソン(アメリカ合衆国)は、オープンJベイで優勝したことでランキングを2つ上げて6位になった。最後の残り1枠の獲得までもう1つ順位を上げたいところだ。同国のケイトリン・シマーズは現在5位で今シーズン2勝を挙げている。オーストラリアのレジェンド、ステファニー・ギルモア(7位)、タティアナ・ウェストン・ウェブ(ブラジル/8位)もファイナルズに出場する可能性は十分にある。今大会では、これらの選手間の激しい戦いが見られるだろう。

また、タヒチ・プロの結果を踏まえ、最終ランキングの女子上位8人(ただし各国最大2人)にパリ2024の出場枠が与えられる。ウェストン・ウェブは現在、暫定的な出場枠を確保しているトップ10内唯一の選手だ。

東京2020金メダリストのムーアは、5月下旬のサーフランチ・プロ(米カリフォルニア州レモー)を制して以来ランキング首位を維持し、現在57,745ポイントを獲得している。彼女は最近の3戦では決勝に進出することができておらず6度目の世界タイトルは確実ではないが、パリ2024への出場枠には十分に手が届く範囲にある。

アメリカ合衆国のマークス、シマーズ、ピーターソンもパリ2024の出場枠を獲得できる位置にいる。米国チームは、2022年ワールド・サーフィン・ゲームズ(WSG/カリフォルニア州ハンティントンビーチ)において国別出場枠を獲得しており、今大会の結果次第で次回のオリンピックに最大で3人の女子選手を送ることができる。その3番目の枠を巡る戦いにおいても今大会は注目される。

オーストラリアは2つの出場枠を獲得することができる。ライトとピクラムは初めてのオリンピック出場を望んでいるが、東京2020で9位に終わったギルモアはオリンピックへの再挑戦を目指しており、これらの中の出場枠争いが今大会で繰り広げられることは必至だ。

タヒチ・プロ:オリンピックに向けての試金石

パリ2024を1年後に控えるタヒチ・プロは、オリンピックサーフィン競技の開幕戦と言えるかもしれないが、メダル獲得を競い合うトップ選手にとって、現在の実力を推し測る試金石でもある。

2023年のワールド・サーフィン・ゲームズ(WSG)を通じてパリ2024の出場枠を獲得したタヒチ出身のカウリ・バースト(フランス)は、ワイルドカードとして出場したにもかかわらず、昨年のタヒチ・プロで2位に入り地元の強みを見せた。彼は今年も同じワイルドカードの立場で戻ってくるが、今回は優勝候補のひとりとして注目される。

チョープーに関する地元の知識は、ヴァヒネ・フィエロ(フランス)にとっても役立った。タヒチ出身のフィエロは、昨年のタヒチ・プロ準々決勝でムーアを破り、準決勝でブリサ・ヘネシーに敗れたものの3位に入った。

2006年以来、16年ぶりに女子選手が出場した昨年のタヒチ・プロ。出場した12人の女子選手のうち9人が、今大会で再びチョープーの波に挑戦する。

今大会に出場する各選手は、来年のパリ2024での究極の試練に備えるため、圧倒的な波にチャレンジする中でさまざまなテクニックや戦略を試み、多くの貴重な競技経験を持ち帰ることができるだろう。

WSLチャンピオンシップ・ツアー2023第10戦タヒチ・プロの日程、試合形式、放送予定

WSLチャンピオンシップ・ツアー第10戦タヒチ・プロは、8月11日(金)から20日(日)まで開催される予定だが、日程は天候や波の状況によって変更となる場合がある。

オープニングラウンドでは、選手は1ヒート3名ずつ、8ヒートに分かれて競い合い、各ヒート上位1名がそのままラウンド16に進出することができる。残り2名はエリミネーションラウンドで対戦し、勝者がラウンド16に進出する。勝ち残った16名によるラウンド16では2名ずつが対戦し、勝った選手が順に準々決勝、準決勝、決勝と駒を進めることができる。

タヒチ・プロの模様は、WSLウェブサイトYouTube WSLページでライブ配信される予定だ。

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