五十嵐カノアが語る、パリ2024とタヒチ・チョープーの波

日本サーフィン界を背負って立つ五十嵐カノアが、今年もワールドサーフリーグ主催のチャンピオンシップ・ツアーに参戦する。

1 執筆者 Olympics.com
Kanoa Igarashi

(2022 Getty Images)

ワールドサーフリーグ(WSL)が主催するチャンピオンシップ・ツアーが1月29日にハワイのオアフ島で幕を開ける。サーフィン競技オリンピック銀メダリストの五十嵐カノアにとって新たなシーズンが始まる。

今シーズンのツアー終了時にはパリ2024オリンピックの出場枠が割り当てられるため、オリンピックで金メダルを目指す五十嵐にとっては特に重要なシーズンとなるだろう。

1997年10月に米カリフォルニアで生まれた五十嵐カノアは現在25歳。昨年のチャンピオンシップ・ツアー(※)の第10戦で目標に掲げていた5位に食い込み、年間上位5人で行われるファイナルに初出場を果たした。

「夢は(オリンピックの)金メダルと世界チャンピオン」と語る五十嵐カノアは、2022年9月に米カリフォルニアのハンティントンビーチで行われたOlympics.comのインタビューで、パリオリンピックに向けた思いを語った。

※ワールドサーフリーグ主催のチャンピオンシップ・ツアーとは?…ワールドサーフリーグ(World Surf League: WSL)の最高レベルのツアーとして実施され、男子トップ36選手、女子トップ18選手のみが参加して行われる。チャンピオンシップ・ツアー(CT)10戦を終えた時点で上位5人がファイナルへと進み、そこで年間王者が決まる。

タヒチ・チョープーのビッグウェーブ

昨シーズンの第10戦の舞台、そしてパリオリンピックのサーフィン会場となっているタヒチのチョープー。巨大な波で知られるこの海は、世界の頂点を目指す五十嵐にとって重要な意味を持つ場所だ。

「チョープーの波は僕にとって本当に特別です。12歳か13歳のときに、初めて行ってとても怖かったのを覚えています」

南太平洋の仏領ポリネシアに位置するタヒチのチョープーは、サーファーにとって攻略が難しい海として知られている。

「世界で最も美しい場所なのですが、波がとにかく怖かった」と、当時の思いを五十嵐は振り返る。

「もう2度と戻りたくない」と、トラウマに近いほどの恐怖を覚えた五十嵐だが、家に戻るとその恐れは自分に対する不満へと変わっていく。

少年時代の五十嵐は鏡の前に立ち、こう語りかけた。「 世界一のサーファーになりたいんだったら、この恐怖に立ち向かうべきだ」。

「それは自分の中にある大きな山でした。他の人から見えるものではなく、他の誰かに言うものでもなく、自分自身の問題で僕が立ち向かわなければならない山でした」

自分の気持ちを認め、理解し、向き合うこと。五十嵐はチョープーの海と向き合うことを心に決めた。

「多くの時間をそこで過ごしました。ただただ、波をマスターしようとトライしました。あの国と、あの場所と、クレイジーな関係を築きました」

「世界の中でも、(タヒチ・チョープーは)僕の好きな場所のひとつです。とてもピュアな場所で、子どものころを思い出させてくれ、人生がとてもシンプルに感じられるんです」

彼の地に過去10年ほど足を運んでいるという五十嵐は、チョープーの海に思いを馳せ、「現地の人々や文化など、僕にとって特別なつながりを感じる場所です」と話し、「とても美しい場所です」と続けた。

パリ2024の目標は「金メダル」

「パリでの目標は、金メダルを取ることです。東京ではとても近いところまで行き、これまでにない刺激を受けました。あのときは複雑な気持ちで、銀メダル(という結果)をどう受け止めていいのかわかりませんでした」

2021年に行われた東京2020男子サーフィンの決勝で、五十嵐カノアはブラジルのイタロ・フェヘイラとの戦いに敗れて銀メダルを獲得。五十嵐は悔しい気持ちに苛まれた。

「みんなが祝福してくれて、でも祝福されるたびに悔しさが込み上げてきました」

だが次第にメダルを見せて若い世代に良い影響を与えることができることも実感した。「悔しさ」と同時にその「興奮」も五十嵐の胸にしっかりと刻まれている。

それから1年以上が過ぎた2022年9月、五十嵐は地元カリフォルニアのハンティントンビーチでパリ2024の予選を兼ねて行われたISAワールドサーフィンゲームズで優勝。その結果が日本男子チームの優勝に大きく貢献し、日本男子はパリ2024の出場権を1枠獲得した。

1月末から9月にかけて行われるWSLチャンピオンシップ・ツアーではツアー終了後にランキング上位10選手(女子は上位8選手)にパリ2024の出場権が与えられる。

「パリではもちろん金メダルが取りたい。東京で成し遂げられなかったことを成し遂げたい」と意気込む五十嵐にとって重要なシーズンがいよいよ幕を開ける。

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