2月5日と6日で男女個人ノーマルヒル種目が終了し、小林陵侑が金メダル**、高梨沙羅**は4位という結果で幕を開けたスキージャンプ。いよいよ2月7日、オリンピック初代チャンピオンを決める混合団体戦が行われる。
団体戦というと、激しい風と雪に見舞われた1998年長野大会で、史上最強と呼ばれた日本男子団体の逆転優勝、悲願の金メダルに日本中が熱狂したあの瞬間を思い出す人も多いのではないだろうか。
“いかに遠くへ、美しく飛べるか”
その挑戦は、何世代にもわたり追及され続けている。
感動のドラマを生み出した長野大会のメンバー、原田雅彦は現在チーム雪印メグミルクの総監督をしているが、北京2022では日本選手団総監督を務める。岡部孝信は同チームで監督として、伊東大貴をはじめ、小林潤志郎、**佐藤幸椰など選手育成に励んでいる。斎藤浩哉も同社でコーチ、監督を務めた後、社業に専念している。当時のラストジャンパーを務めた船木和喜は、ウィンタースポーツ青少年育成事業のほか、何足もの草鞋を履きながら、現在も冬は現役を続けている。リレハンメル1994で、原田、岡部と共に銀メダルを獲得した葛西紀明は、混合団体でチームのカギとなる小林陵侑、伊藤有希**が所属する土屋ホームの監督兼選手として49歳で現役でチームを引っ張っている。
IOCが推進する、男女平等を高める種目の導入に後押しされ、1924年の第1回冬季オリンピックから長い歴史を持つスキージャンプも、ここ数十年で大きな変化を見せてきた。
- 2012年:FISグランプリの一環として混合団体を実施/ワールドカップ新種目として追加/第1回冬季ユースオリンピックで新種目として採用(日本は高梨を含む3名のチームで5位入賞)
- 2013年:ノルディック世界選手権に混合団体を追加(日本が初代王者に)
- 2014年:ソチ2014で女子個人がオリンピックに採用
- 2019年:ノルディック世界選手権に女子団体を追加
- 2022年:北京冬季オリンピックで混合団体がオリンピックに採用
この10年間で女性アスリートが参加できる種目数の増加と共に、日本でも男女の競技力と選手層に厚みが増し、日本チームは満を持して北京2022を迎える。
日本は、これまでに5回開催された混合団体世界選手権(2年に1度開催)で、金メダル1つ、銅メダル2つ、5位が2回という実績を持つ。2013年の第1回大会を除き、4連覇中のドイツチームのほか、オーストリア、ノルウェー、スロベニア、日本が世界選手権TOP5の常連チームだ。チームメンバーの団結力が結果につながる混合団体。北京では、強豪国の接戦が予想される。
日本チームエースの小林陵侑は、2月6日の男子初戦となる個人ノーマルヒルで見事日本勢オリンピック金メダル第1号となった。
オリンピック初出場の平昌2018(個人ノーマルヒル7位、男子団体6位)後のシーズンで、ワールドカップ13勝を挙げ、日本男子選手として初めて総合優勝を果たし大躍進をみせてから、その勢いは止まらない。今シーズンは開幕戦で2位、第3戦は143mの大ジャンプで優勝して好スタートを切ると、北京2022前までに7勝し、日本男子単独最多記録のワールドカップ通算26勝を挙げた。
個人ノーマルヒル終了後は、「これからまだ競技続くので、日本選手団と僕の勢いにつなげていきたいと思います」と意気込みを語っている。
小林と共に、直近2回の世界選手権混合団体メンバーとして出場した佐藤は、個人でワールドカップ2勝、男子団体でも世界選手権とワールドカップで表彰台の実績を持ち、ここ数年で団体戦の経験値を上げている。
北京2022男子個人ノーマルヒルでは最終ラウンド進出ならず32位であったが、この悔しさをバネに、混合団体で彼のベストジャンプを期待したい。
メダル獲得に欠かせない女子メンバーとなるのは、昨シーズン3つのギネス世界記録を更新した、高梨だ。FISワールドカップの男女歴代単独最多優勝記録61勝と個人通算110勝目の表彰台を達成し、スキージャンプの歴史を塗り替え続けている彼女は、惜しくも北京2022の個人ノーマルヒルで表彰台を逃し、4位だった。
個人戦終了後、再びメダルのチャンスがある混合団体戦について「しっかり調整をして、そこに臨みたいと思います」と力強く語っている。
レジェンド葛西率いる土屋ホームに所属し、チームメイトの小林陵侑とも一緒に練習をする伊藤は、高梨と同じ自身3度目のオリンピックで、個人ノーマルヒルを13位に終えた。
混合団体の歴史がスタートした頃から高梨と共に日本チームメンバーとして世界の舞台で戦ってきた伊藤のジャンプで、オリンピックでも初代王者を目指してほしい。
スキージャンプ混合団体の初代チャンピオンを決める決戦が、2月7日18:30(日本時間19:30)からスタートする。日本は、高梨、佐藤、伊藤、小林がメンバーとして選出された。(2月6日現地時間21:38発表)
「また新しい歴史をぜひ北京で、今の日本人選手たちに作ってほしいなと思っています」と原田がOlympics.comに語ったように、24年の時を経て、もう一度日本チームの底力に期待したい。