【独占】高梨沙羅:メダル獲得に向けて心血を注ぐ

北京2022スキージャンプ日本代表に内定し、いよいよ自身3度目のオリンピックで頂点を目指す高梨沙羅。数々の世界タイトルを獲得し、スキージャンプ界の不動のエースとして長年世界のトップで活躍し続ける成功の秘訣と、2月に迫るオリンピックでの目標について、Olympics.com独占インタビューに語った。

文: Risa Bellino
写真: 2020 Getty Images

2022年元日。またもスキージャンプ界の世界記録が塗り替えられた。

スロべニアで行われたワールドカップで今季初勝利を挙げ、みずからが持つワールドカップ通算勝利記録を61勝に伸ばし、110回目の表彰台(167大会出場中)にのぼった高梨沙羅は、男女を通じた世界歴代最多記録を更新し、前人未到の領域を歩み続けている。

14歳でコンチネンタルカップ女子選手史上最年少優勝を果たし、2011/2012シーズンにスタートした女子ワールドカップ第1回大会から今日に至るまで、世界の女子スキージャンプ界でトップにこれほど長く立ち続けるアスリートは、高梨しかいない。

ワールドカップで4度の総合優勝を果たし、日本と世界の新記録を打ち立ててきた彼女は、記録は自分を前進させてくれる "モチベーション" だと話す。

「また、記録を更新できるように一戦一戦大切に頑張ろうと思える気力になります」

自分の可能性を信じ、全身全霊を傾けて競技に打ち込んできた揺るぎない情熱が、長きにわたり大記録を生み出してきた。

今回Olympics.comでは、スキージャンパーとして10年の道のりで高梨が培ってきた技術や強み、それらを支えるものについて単独インタビューで話を伺った。

並外れた集中力

「集中してしまうと周りが見えなくなってしまうところが、自分の性格の中で特徴的な部分だと思っています」

高梨は、自分の性格が一貫した姿勢で正確性を求められるスキージャンプにおいて、重要な役割を果たしていると感じている。ひとたび彼女がONモードに入ると、最高のジャンプを生み出すために、彼女の頭が司令塔となり、桁違いの集中力で数ミリ単位の動きを体へ伝え、スキージャンパー高梨沙羅を操る。

彼女のパーソナルコーチであるヤンコ・ツイッターコーチも、その集中力に驚嘆する。この高い集中力が、152cmの小柄な彼女の能力を最大限に引き出し、時速90kmから飛び立つ瞬間に備えることができるのだ。

高梨沙羅:FISノルディックスキー世界選手権=2021年3月2日オーベルストドルフ
写真: 2021 Getty Images

理想の追求

8歳からスキージャンプを始めた高梨が、トップであり続けるためにしてきたことは、間違いなく「努力」だ。

ギネス世界記録にも認定されたワールドカップの功績について聞いてみると、「競技を続けて、そこにのめり込んでこれたからこそ取れたものであると思う」と答える。

「目の前にあることをつないでいった先に記録があったという感じです」

記録への挑戦が先にあるのではなく、"自分が最高だと思える理想のジャンプを飛ぶ" という探求心が、今の高梨を作り上げてきた。

「今までスキージャンプを柱に動いているような生活だったんですけど、それの表彰をしていただけたというか。そういう感覚でとらえています」と、照れながら笑う。

継続と進化

オリンピック初出場のソチ2014は悔し涙の4位、2度目の挑戦となった平昌2018では、いろいろな気持ちが交錯する涙の銅メダルとなった高梨だが、自身の野望を叶える最後のタイトル『オリンピック金メダル』に、まだ届いていないことを自覚している。

「ソチオリンピックでは悔しい気持ちがありましたし、平昌大会ではすごくほっとした安心した気持ちと、全てを出し切ってこの結果だったって言う、心にぽっかり穴が開いたような…なんて言葉にしたらいいかわからないような、複雑な気持ちになりました」

その心の穴を埋めるために、高梨はこの4年間、オリンピックの金メダルを獲得するために技術を磨いてきた。平昌大会後、ジャンプをゼロから再構築し、武器となる進化したジャンプの習得に励んできた彼女は、北京大会を1か月前にして、1月のワールドカップで優勝を飾る。

良いイメージを持ちながら新たなジャンプで大舞台へ挑む、最高の流れを作った。

メンタル術

“あせらず、あわてず、あきらめず”

これまで上手くいかなかった時も、良かった時も、様々な時期を乗り越えてきた高梨が心に刻んでいる言葉だ。

「しっかりと自分を見据えて、物事を焦らずに組み立てていくことで結果となると思ってます」

それは、自分の経験から導き出してきた言葉でもあるのだろう。

数年にわたりフォームの改革に取り組んでいた中で訪れたパンデミック。「自分と向き合う時間がかなりあったので、そこでいったん自分のことについて考えられたのは、自分にとってもジャンプにとっても良かったと思います」メンタルの部分が大きくパフォーマンスを左右するというスキージャンプにおいて、コロナ禍での生活はメリットとなった面も多かったという。

「オンとオフの切り替えが年々やりやすくなってきていると感じているので。自分がどういうときに良い状態なのかっていうことがわかるようになってきました」

長い選手生活において、彼女は自分自身をより理解することで、精神力を強さに変えてきた。

自分を引き上げてくれる人に囲まれる

日本の女子スキージャンプ黎明期に活躍した第一人者の山田いずみは、高梨の「憧れの大先輩」だ。高梨がスキージャンプ競技を始めるきっかけとなった人物であり、コーチとして、人として、アスリートとして尊敬し続ける存在である。

「背中を追いかけていたら、いつの間にかここにいたといった感じです」と、山田がキャリアを通じて高梨に与えてきた影響を振り返る。平昌2018では、銅メダルを決めた2本目のジャンプを飛んだ高梨に駆け寄り、祝福のハグをしたのも山田だった。お姫様抱っこをする姿は、日本女子スキージャンプ界でふたりが歩んできた道のりと、その絆が現れた印象的なワンシーンだ。

高梨のスキージャンプ人生において、誕生日がわずか1か月違いの同い年、25歳の小林陵侑も大きな刺激を与えてくれる存在だ。平昌大会後から今シーズンまでのワールドカップで27勝を挙げ(うち、今季6勝)、年末年始に行われる男子スキージャンプのジャンプ週間では2度目の総合優勝を果たした。

大活躍を続ける小林について「すごく調子が良いので、この後も勝ち続けていってくれると思いますし、やっぱりそういう姿を見て私も刺激をもらっているのは大きくあります」と話す。

また、彼女の成功を近くで支えてくれる重要な存在にも、感謝を述べた。「やっぱり周りの人たちに支えられているなってすごく感じてます。笑顔にさせてくれているなって思いますね」

Olympics.com(以下、OC):アスリートにとって、メンタルヘルスとはどんな意味を持ちますか?

高梨:競技をやっている中で、メンタルはとても大事な部分で、柱になってくるものだと思います。慌ててしまう気持ちもあると思うんですけど、自分がしっかり自信の持てるだけのトレーニングだとか、できる限りのことを尽くしてポジティブに考えることで、良い発見があると思います。競技の中ではもちろんなんですけど、人として成長できた期間でもあったと思うので、私の中でそれが経験できたことは良かったなと思います。

OC:シーズン中のリラックス・リフレッシュ方法を教えてください。

高梨:写真を撮って編集をしたりすることが息抜きの時間になっています。いろいろな場所にせっかくいけるので、いろんな景色を取ったりとか、その街の感じを見て回ると気持ちもすっきりするので、そういうところでリフレッシュしています。

OC:2021年、自分自身について経験から学んだことや教訓はありますか?

高梨:いろんな試合ももちろんですけど練習を通して思ったことは、その場所・会場を自分のものにしないと、試合に出たときに結果に繋がらないなというのを感じたところです。自分の感覚がすごく良いとか、このジャンプすごく良かったっていうだけでは結果は残せないなっていうところを学びました。会場に合った感覚というのがあるので、対応させないといけないなと思いました。

OC:オリンピックシーズンの目標は?

高梨:やはり北京オリンピックでメダルを取ることはもちろんなんですけど、この4年間で成長した姿を見ていただくことが私の中では一番の目標なので、そこを目指して最後まで諦めずに自分のジャンプスタイルっていうのを作っていきたいと思います。

OC:北京2022で新種目としてデビューするスキージャンプ混合団体について、どう思いますか?

高梨:各国のチームを見て思ったところですが、チーム力と言うか…この人のために頑張りたいと思えるようなチーム作りが大事なんじゃないかなと思います。

純粋に楽しみという気持ちもありますが、自分が足を引っ張らないように頑張っていかなきゃいけないとも思います。やっぱりひとりでやっている競技ではないからこそ、チームの人たちとコミュニケーションをとりながら過ごしていかないといけないなと思うところです。選手は発表されていないのでまだわかりませんが、みんな仲は良いので、その仲をもっと深めていけるように過ごしていきたいと思います。

FISノルディックスキー世界選手権スキージャンプ女子銀メダリスト:高梨沙羅
写真: 2021 Getty Images

2月5日から14日にかけて行われる北京2022のスキージャンプ競技日本代表内定選手9名が、1月8日、全日本スキー連盟より発表された。

高梨は、悲願の金メダルを目指し、北京の空に追求してきた黄金比の曲線を描く。

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