愛に包まれパリ2024オリンピックに出場するスーパーカップル

1 執筆者 Jo Gunston
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(World Volleyball)

アスリートたちは、スポーツにおけるその卓越した能力からは超人的に見えるが、パートナーとの楽しい会話を見ると、実は私たちとほとんど変わらないように見える。

たとえば、ツール・ド・フランスを2回制覇したエリートサイクリスト、タデイ・ポガチャル(スロベニア)と、同じサイクリストとして2021年ツール・ド・フェミニンで総合7位になったウルシュカ・ジガルトのカップルを例に挙げてみよう。

ロードレース関連のウェブサイト、Road Codeの共同インタビューで、「2人で自転車に乗る時、ルート選びが上手なのはどちらですか?」と2人は尋ねられた。

ポガチャルは「僕です」と即答した。しかし、「いいえ!」とジガルトはすぐに反発した。「昨年、3回もチューブを交換しなければならなかったことを覚えてる?」

ポガチャルは一瞬黙った。そして言った。「昨年の最初のトレーニングを覚えてる?」

ジガルトは思い出した。「あっ確かに」と彼女はにっこりと笑い、2人は説明するまでもなく、その時を思い出した。
彼らは笑い、「結局、僕たちは2人とも下手なんですね」とポガチャルは認めた。

スロベニアの2人は、7月26日に開幕するパリ2024オリンピックに出場する予定で、東京2020男子ロードレースで銅メダルを獲得したポガチャルは、違う色のメダル獲得を熱望している。一方、ジガルトはオリンピックデビューを果たそうとしている。

フランスの首都パリは、競技における激しく壮大な舞台となる一方で、カップルにとっては愛と喜びに満ちた瞬間をもたらす舞台となるだろう。彼らは、ロマンチシズムで知られる愛の都パリをはじめ、ナンテール、ヴェルサイユ、マルセイユ、さらにはサーフィンが行われるタヒチ島チョープーで、お互いを支え合いメダルをかけて戦う。

日本期待のスーパーカップル:バレーボール西田有志&古賀紗理那

パリに向かう日本を代表するスーパーカップルと言えば、バレーボール西田有志(ゆうじ)と古賀紗理那(さりな)の2人だ。2022年12月に結婚したことを発表したバレーボール界のエース2人は、7月27日から始まるパリ南アリーナの同じ舞台で共にメダルをかけて競技に臨む。

「(紗理那)世界一愛しとるから、がんばろうぞー!」と、2023年10月7日、パリ出場枠獲得を決めたワールドカップ後の会場インタビューで西田が歓喜の声を上げ、ファンたちから喝さいを浴び会場は大いに盛り上がった。その一方で、今年6月15日、パリ出場枠獲得を決めていた女子日本代表チームが勝利したセルビア戦(ネーションズリーグ2024予選ラウンド)の後、キャプテンの古賀は会場インタビューの中で、男女ともパリ出場が決まったことについて聞かれたものの「はい」とだけ答え、意味深な表情で他にはコメントをしなかった。これに対し、西田は「ありゃ?首振って断ったね。期待したのにー」と自身のSNSで答えている。この2人のやり取りにファンは親しみをもって反応した。

西田と古賀は、西田のYoutubeチャンネルで共演している。世界を代表するバレーボール界のトップ選手でありながら、自然な姿で会話をする仲むつまじく愛らしいカップルの様子を誰もが身近に感じる存在であることが、彼らの人気をさらに高めている。

「けっこう私、(西田からアドバイス)してもらいます。腑に落ちて、なるほどと思ったら、すぐ次の日の練習でやったりします」と、古賀は明かした。

一方の西田は、「負けた次の日に落ち込むのは当たり前ですが、それを(古賀に)話せるだけでも違う。同業だからこそわかり合えます」と話しており、選手として家族としてお互いを支え合っている様子がうかがえた。

2024年7月9日、古賀はパリオリンピックを最後に現役引退することを表明した。2人が選手として一緒にオリンピックに出場するのは、これが最後の機会になるだろう。

「自分たちは結婚して家族になった。お互いがお互いを高め合えるようにがんばれたらと思います」と、西田は自身のYoutubeチャンネルで話した。

パリ2024オリンピックでは、お互いを支え合って高め合いメダル獲得を目指す。史上最高のバレーボールのスーパーカップルの躍動を日本中が期待している。

求められる努力の大きさを理解し合うカップルたち

アメリカ合衆国のフェンシングチームのリー・キーファーゲレク・マインハートにとって、オリンピックで一緒に競技を行うことはこれまでにもあった。

彼らはカップルとして3回目、キーファー個人にとっては4回目、マインハート個人にとっては5回目のオリンピック出場となる。マインハートは、過去2回のオリンピックの男子団体フルーレで2個の銅メダルを獲得し、ケンタッキー州レキシントンに持ち帰った。一方、キーファーは東京2020でアメリカ代表チームのメンバーとして、オリンピック史上初の個人フルーレ金メダルを獲得している。

キーファーの活躍を最も喜んでいたのは?もちろん彼女の夫、マインハートだ。

「妻が僕のオリンピックの夢をかなえてくれました」とマインハートは自身のSNSに投稿した。

「彼女がこれをどれだけ強く望んでいたか、どれだけハードに努力していたかは言葉にできません。そんな彼女を僕は誇りに思います」と彼は付け加えた。

「とても誇りに思います!!」とキーファーはインスタグラムにマインハートの獲得したメダルと一緒に祝福の写真を添えて記した。「彼の戦いは華麗でした」

2人はまた、共に医学の道に夢を追い求めている。 パリ2024の後、彼らは医学部3年生を再開する予定だ。

オリンピックカップルのデートにマルセイユの夜はいかが?

オーストリアのセーリング選手であるララ・ヴァドラウと、ドイツのサッカー選手である彼女のパートナー、レア・シュラーは、ドイツが出場する1次ラウンド2試合が行われる7月25日と28日の合間に、マルセイユでデートすることができるかもしれない。マルセイユのスタッド・ヴェロドロームではサッカーの試合が開催され、また、マルセイユ・マリーナではセーリング競技が実施される。

シュラーは、7月26日の開会式前に先駆けて開始される4競技(7人制ラグビー、アーチェリー、サッカー、ハンドボール)のひとつであるサッカーに出場し、オリンピックデビューを果たすことになる。

リオ2016チャンピオンであるドイツは、7月25日、マルセイユのスタッド・ヴェロドロームで2023年ワールドカップ4位のオーストラリアと初戦を迎える。同28日の2試合目は、4回のオリンピック王者、アメリカ合衆国との1戦となる。

ヴァドラウは、すでに女子ディンギー種目で2回オリンピックに出場していることから、シュラーに緊張とプレッシャーにどう対処したらよいかアドバイスをすることができるだろう。ヴァドラウは17歳の時、シンガポール2010ユースオリンピックのセーリングで金メダルを獲得した。

シュラーがプレーするプロサッカーチーム、バイエルン・ミュンヘンのインタビューで、2人はともにエリートアスリートであるということが2人の関係にどのように影響しているか尋ねられた。

「普段は離れて暮らすことが多いので、それぞれが競技のために何をしなければならないのかをお互いに理解して合えていることは本当に助かります」とヴァドラウは答えた。

また、シュラーは「私たちは、3日から5日ぐらいしか一緒にいることができません。それは遠距離恋愛のようなものです。異なる場所に住んでいるわけではなく、ミュンヘンに一緒に住んでいますが、いつもどちらかは出かけています」と付け加えた。

2人がフランスの同じ都市、マルセイユにいるということは、きっと特別な機会となるに違いない。

カップルたちは「愛の都」パリへ向かう

パリ2024に出場するため、多くのカップルたちがフランスを訪れる。

英国のメーガン・ジョーンズセリア・クアンサのカップルは、東京2020女子7人制ラグビーで4位になった雪辱を果たそうと共に努力している。

「家に帰ると、いつもお互いにそのことを思い出しています。オリンピックでは必ずメダルを取らなければなりません。それが必要なことだからです」と、ジョーンズは2023年に英国チームのウェブサイトで語っていた。

リオ2016で銀メダル、東京2020で銅メダルを獲得したイタリアのフェンシング選手、ロッセラ・フィアミンゴは、オリンピックメダルの全ての色を持つ競泳選手のボーイフレンド、グレゴリオ・パルトリニエリが泳ぐのを見て、「まるで自分自身が泳いでいるかのように興奮します」と話した。

ウクライナのテニス選手、エリナ・スビトリナと、地元フランスで人気のガエル・モンフィスの2人にとって、テニス競技が行われるスタッド・ローラン・ギャロスでは、2歳になろうとしている娘スカイが彼らの心強い味方となる。

パリ2024陸上競技女子400mで3連覇を目指すバハマのショーナ・ミラー・ウイボと、夫で、2019年世界選手権デカスロン銀メダリストのエストニアのマイセル・ウィボらも、息子のマイセル・ウィボJr.という強力な応援団を得ている。

2022年世界選手権ユージーン大会と東京2020女子4×400mリレーのメダリスト、ジャマイカのジュネル・ブロムフィールドは、ボーイフレンドのノア・ライルズと共に、パリの象徴的な会場、スタッド・ド・フランスでの活躍が期待されている。アメリカ合衆国のノア・ライルズは、2023年世界選手権ブダペスト大会の男子100m、200m、4×100mで獲得した金メダルを再びパリでも獲得することを目指しており、パリ2024で最も注目される選手であることは間違いない。

タヒチ島チョープーでサーフィン競技に出場予定のブラジルのジョアン・チアンカとルアナ・シウバや、混合リレーに出場するスロバキアの競歩選手ドミニク・チェルニーとハナ・ブルザロヴァのカップルたちもパリ2024に出場する。

スポーツファンは間違いなく、愛の都パリでのロマンチックな瞬間を期待している。そしてオリンピックカップルたちは、今ごろ、パリの美しい景観を背景にプロポーズする機会を心待ちにしているのだろう。

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