古賀紗理那、女子バレー日本代表キャプテンの強みを5つの視点で探る

執筆者 Risa Bellino
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古賀紗理那:バレーボールネーションズリーグ2024(VNL)予選ラウンド

バレーボール競技オリンピック4大会連続出場の荒木絵里香が引退後、2022年に主将のバトンを受け継いだ古賀紗理那は、パリ2024での日本女子バレー復活をかけ、ロンドン2012で日本女子を銅メダルに導いた眞鍋政義監督と共に、新体制のキャプテンとして大きな覚悟を持って自分とチームに向き合ってきた。

3年間の集大成として挑むオリンピックイヤーで、パリ出場枠をかけたラストチャンスとなる最終ポイントレース、バレーボールネーションズリーグ2024 第3週(6月12~16日)に挑む、女子バレーTEAM JAPAN。

ここでは、その女子バレー日本代表をキャプテンとして牽引する古賀の強みを5つの視点で探る。

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古賀紗理那のキャプテンシー:チームを牽引する力と覚悟

『声に出して伝える。プレーで示す』

キャプテンとして迎える日本代表3シーズン目。選手を鼓舞し、身振り手振りを使って改善点を模索しながら共有し、時には厳しく意見を伝える、そんな古賀の姿が代表合宿、試合を通じて見られてきた。古賀の3度目のオリンピックの挑戦は、キャプテンとしていかにチームと繋がり、最大の目標であるパリ2024の舞台で日本の女子バレーを出し切ることができるかに焦点を当てている。

パリのメダル争いに挑むためのチーム作りに全力を注いできた古賀は、同時に、エースとして逆境の場面で状況を打開し、流れを再び引き寄せる力をつけるために、自身の技術面とメンタル面の強化にも力を注いできた。

『みんなを安心させる、頼もしい存在になる』

その覚悟と熱量が、日本バレーボール協会のYouTubeチャンネルで公開されている練習映像や、試合に向けたミーティングでの古賀の発言からも、ひしひしと伝わってくる。

「強い集団を作っていきたい」。この3年で何度も古賀が口にしてきた言葉とその想いは、チームメンバーにも波及している。

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古賀紗理那が求めるキャンプテン像。憧れの存在、木村沙織

キャプテンとしてチームをまとめる中で、憧れの存在である木村沙織の存在は古賀に大きな影響を与えてきたことだろう。2013年、古賀が高校2年の時に初めて日本代表に選出された際に、キャプテン兼エースとして日本女子を牽引していたのが木村だった。2015年のワールドカップでは同じポジションのアウトサイドヒッターとして、ともに攻撃の中心としてコートに立ち、その精度の高いプレーや、重要な局面で決定打を放つエースの力を間近で学んできた。ここ一番で信頼できる木村のリーダーシップから多くのヒントを得た古賀は、日本代表でのキャリア、キャプテンとしての経験を経て、自身も人間力と実力を兼ね備えた存在感を放つプレーヤーに成長した。

バレーボールネーションズリーグ第2週の中国戦を控えたチームミーティングでは、「自分たちのひとつひとつの精度で結果って絶対変わる。それぞれがこだわって、それが一点に繋がるんだというのを、みんな意識してプレーすることが今日の勝利につながると思う。最初から最後まで攻め切れるように」と、活を入れると、「それはコートの中に入っているメンバーだけじゃ絶対できないことだと思うので。みんなで声を掛け合いながら助け合いながらプレーできるように今日も頑張っていきましょう」と、チームの士気を高めた。試合では、古賀の声に応えるかのように個々の力を集結させてチームワークを発揮した日本が、アジア勢として共にパリ出場枠を争う負けられない中国との対戦を3‐1で制し、パリに向けて勢いをつけた。

バレーボールネーションズリーグ2024(VNL)予選ラウンド第1週初戦で世界ランキング1位のトルコに日本がフルセットの末、勝利した

チームに頼られる存在になるために磨き上げた、得点力

世界基準で勝負するために、自分に適したジャンプ方法を探求し、一からフォームを見直した古賀は、高く飛び続けられるジャンプ力の強化、身体づくりに力を入れ、最高打点を305cmまで引き上げることに成功した。試合後半までキープし続けられる体力を身につけたことで、リーグ戦での安定感も増し、空中滞在時間が増えたことで、古賀の強みであるスパイクをさらに伸ばした。ストレートやクロス、ブロックアウトなどの打ち分けの精度が向上し、得点に繋げられる場面が増えたことは、東京2020後の大きな成果だと言えるだろう。

冷静な判断力とテクニックが加わったことで、さらなる進化を遂げた古賀のプレーは、Vリーグ1部女子で2期連続MVP(最高殊勲選手賞)達成や、5月16日に開催されたバレーボールネーションズリーグ2024(VNL)予選ラウンド第1週の初戦、トルコとのフルセットの激闘にも表れている。世界ランキング1位のトルコを相手に、苦しい展開を切り抜けるサービスエース3点とブロック1点を含む、31得点を挙げ、ベストスコアラーに。厳しいと言われていた初戦を白星発進に導いた。

古賀紗理那:バレーボールネーションズリーグ2024女子大会予選ラウンド日本 vs ドイツ

古賀紗理那、試練を原動力に変える

パリを目標に心身共にタフになった古賀だが、当初、キャプテン就任の依頼を眞鍋監督から受けた時には大きな葛藤があり、即答できなかったという。自分には向いていないのではないか…、パリに行けないのではないか…。それでもキャプテンを引き受けたのは、これまで先輩たちが繋いできた日本代表の重みを再認識し、日本代表メンバーとして選ばれたことに感謝すること、パリへの挑戦を避けて後悔するよりも、全力で挑みたいという自分の声を聞いたことで決意が固まった。

リオデジャネイロ2016オリンピックでは、大会直前に代表メンバーから外れるという厳しい現実に直面し、続く東京2020オリンピックでは、新エースとして初のオリンピック代表に選ばれたものの、初戦で足首を捻るアクシデントに見舞われ、その後2試合を欠場。中6日で試合に復帰するも、予選リーグで敗退するという不完全燃焼に終わった。東京大会から3年後のパリ2024へ向けて決意を新たにした古賀は、キャプテンとしての重責に応え、チームを引っ張り、3度目の挑戦に向けて奮闘している。

オリンピックで日本代表に選ばれなかった失意も、怪我によりコートの外からチームを見守る悔しさも、コートに立ち続ける辛さも知っているからこそパリを目指すべきだと、経験が古賀を奮い立たせた。これらのすべての試練が原動力となり、"自分の強み" だと語る古賀は、強い。

夫婦そろって目指すオリンピック

キャプテンとしてパリへの挑戦をスタートさせてから待ち受けていた重圧やストレスで心労している古賀を支えてくれたのが、親身になって話を聞いてくれた日本男子左のエース西田有志だったという。キープレーヤーとして自ら得点をあげるだけでなく、1点を勝ち取るごとに雄叫びをコートに響かせチームを盛り上げ雰囲気を変える、チームのために動く頼もしい姿が印象的な西田。選手として尊敬しあい、その人間性にも惹かれ合ったトップアスリート同士のバレー界のビッグカップルは、2022年大晦日に結婚を発表し世間を驚かせた。

時折、西田のYoutubeチャンネルに古賀が登場し、2人の仲睦まじい関係が配信されると、ファンから「仲良し夫婦」「ほっこり癒されました」「夫婦でパリ頑張ってください」など、ふたりを応援する多くのコメントが寄せられる。2023年10月に開催されたパリオリンピック予選を兼ねたワールドカップバレーで、日本男子がスロベニアに3‐0で完勝し、パリの出場枠を獲得した際には、西田が試合後のインタビューで「世界一愛しとるから頑張ろうぞー!」と、全国放送でパリへ向けての意気込みと古賀への愛の告白をしたことが話題になった。同年12月には、西田が所属するパナソニックパンサーズが5大会ぶり5度目の天皇杯優勝を飾り、古賀が所属するNECレッドロケッツ川崎も2大会連続2度目の皇后杯制覇を達成。夫婦そろってMVPに輝く大活躍を見せた2人は、公私ともに絆を深め、お互いの存在が2人を強くしていることを証明した。

日本女子が出場枠を獲得し、夫婦で挑むパリへの挑戦を見届けることができるか。大きな期待を胸に、2人の活躍を期待したい。

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  • 氏名:古賀紗理那
  • 生年月日:1996年5月21日(28歳)
  • 出身地:佐賀県神埼郡
  • 所属先: NECレッドロケッツ川崎
  • ポジション:アウトサイドヒッター
  • ソーシャルメディア:InstagramXYoutube

日本女子がパリ2024出場枠を獲得するには?

パリ2024出場枠12チームのうち、開催国フランスのほか、トルコ、アメリカ合衆国、ブラジル、セルビア、ポーランド、ドミニカ共和国が2023年のオリンピック予選トーナメントで出場枠をすでに獲得しており、残る5枠がネーションズリーグ(VNL)の予選ラウンド終了後となる2024年6月17日付の世界ランキングで決定する。

日本は、この世界ランキングでアジア最上位の成績を残すか、出場枠獲得7チーム以外で世界ランキング上位3位に入ることでパリ2024出場枠を獲得することができる。また、このほかに世界ランキングでアフリカ最上位の1チームがパリへの出場を決める。

※オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。各競技の出場資格に関する公式資料はこちら

ネーションズリーグ2024女子予選ラウンド第3週日程

会場:福岡県北九州市(西日本総合展示場)

  • 6月12日(水)19:20 日本 vs 大韓民国
  • 6月13日(木)19:20 日本 vs カナダ
  • 6月15日(土)19:20 日本 vs セルビア
  • 6月16日(日)19:20 日本 vs アメリカ合衆国

ファイナルラウンドは6月20日~23日にタイ・バンコクで開催。開催国と予選ラウンド上位7チームが出場し、ノックアウト方式のトーナメント戦で優勝チームを決定する。

バレーボールネーションズリーグ女子2024丨結果速報・日本代表・成績一覧