セーリングは、近代オリンピックではほぼ毎回実施されている競技だが、第1回アテネ1896オリンピック(悪天候によりレースはキャンセル)とセントルイス1904では行われなかった。
パリ1900では、女子選手は男子選手と同じレースで競い合ったが、ソウル1988で初めて女子種目が実施された。
これまでに使用されてきた艇や種目には数多くの変更があり、カイトがパリ2024で初めて登場する。
パリ2024では、以下のように男女混合2種目(470級とナクラ17級)と男女それぞれ4種目、合計10種目が行われる。
女子
- ディンギーILCA6級(旧名称:レーザーラジアル級)
- スキフ49erFX級
- ウインドサーフィンiQフォイル級 - 新種目
- カイト・フォーミュラーカイト級 - 新種目
男子
- ディンギーILCA7級(旧名称:レーザー級)
- スキフ49er級
- ウインドサーフィンiQフォイル級 - 新種目
- カイト・フォーミュラーカイト級 - 新種目
男女混合
- ディンギー470級 - 新種目
- マルチハル・ナクラ17級
パリ2024のセーリング競技は、2024年7月28日から8月8日までマルセイユマリーナ沖で行われる。
ここでは、パリ2024で実施されるセーリング競技で使用される艇や各種目の違いを確認したい。
セーリングで使用される艇の違いは何?
パリ2024でのセーリング種目の主な違いは、競技で使用される艇の種類の違いである。各種目の全ての選手は、デザインに違いがない同じモデルの艇を使用しなければならない。パリ2024で使用される艇は次の通りとなっている。
ILCA7級
アトランタ1996以来、男子ディンギー種目に使用されており、セール面積7.06m²の標準艤装を用いる。
ILCA6級
放射状にカットされたILCA6級のセールは、面積がILCA7級よりも18%小さい。また、マストがやや短く柔軟性がある。ILCA7級と同じFRP製のハル(船体)が使用されており、北京2008以来、女子ディンギー種目に使用されている。
470級
470級はモントリオール1976で初めて使用され、1988年に男女それぞれの種目に分けられた。ディンギーの船体長が470cm(4.7m)であることから「470級」と呼ばれる。選手はハーネスに取り付けられたトラピーズ(マストの高い位置に取り付けられたワイヤー)にぶら下がり帆走する。パリ2024では、470級は混合種目でのみ競い合われる。
ディンギーのもうひとつのタイプであるスキフと呼ばれる艇も競技で使用される。スキフは最も動きの速いタイプのディンギーで、平らで狭い船体を特徴としている。パリ2024では次の2種類のスキフが使用される。
49er級
シドニー2000以来、オリンピックで使用される49er級は、その船体の長さが4.99mであることからこのように呼ばれている。49er級にはメインセール、ジブ、スピネーカーの3枚のセールが装備されている。
49erFX級
49erFX級は、49er級を再設計した女子選手が用いる艇である。リオ2016で初めて女子スキフ種目に使用された。
マルチハルは、その名が示すように2つ以上の船体を持つ艇である。
ナクラ17級
ナクラ17級は、17フィート長のカタマラン(双胴船)で、男女混合選手によって使用される。水中翼により水面を跳ぶように進む。
パリ2024のセーリング競技では、さらに4つのボード種目が行われる。
カイト
パリ2024で新たに導入されるカイト種目では、選手は手動でカイト(凧)を操縦し風に乗って水上を滑走する。男女ともにパリ2024ではフォーミュラカイトを使用する。
ウインドサーフィン
ウインドサーフィンでは、これまでのRS:X級からを置き換わりiQフォイル級を使用する。また、スラローム、コースレース、マラソンの3つの種目が行われる。
セーリング競技で行われる種目の違いは何?
オリンピックのセーリング競技は、「フリートレース」と呼ばれる形で行われる。これは、同時に複数の艇がスタートし、海上を競い合うレースのことを言う。
各選手は、ブイで示されたコースを航行し、フィニッシュラインを目指し競い合う。各種目はオープニングシリーズとメダルレース(ウインドサーフィンとカイトボードはメダルシリーズ)で構成される。
選手には、各レースでの順位に応じて得点が割り当てられる(1位=1点、2位=2点など)。合計得点が低いほど、総合順位が上位になる。オープニングシリーズの後に、各選手の最も悪いレース結果は除外される(ウインドサーフィンとカイトボードの場合は最大3レース)。
各クラスのオープニングシリーズのレース数は次の通りとなっている。
- ディンギー:10レース
- スキフ・マルチハル:12レース
- ウインドサーフィン:20レース
- カイト:16レース