宇野昌磨、アンディ・マレー、ラファエル・ナダル…2024年に現役引退したオリンピックメダリストたち

トム・デーリー、宇野昌磨、アンディ・マレー、ラファエル・ナダル、アレックス・モーガンなど、数々のオリンピックメダリストが現役を引退した。Olympics.comでは、2024年に引退したアスリートたちのキャリアを振り返る。 

1 執筆者 ZK Goh
宇野昌磨
(2021 Getty Images)

2024年のオリンピックイヤーがまもなく終わりを迎える。この1年間でも多くのアスリートがスポーツ界に別れを告げ、新たな1歩を踏み出した。

夏に行われたパリ2024オリンピックは、多くのアスリート、オリンピックメダリストたちにとってそのキャリアの集大成となり、別れを告げる機会ともなった。 その一方で、オリンピックを前に現役選手生活にピリオドを打ったアスリートもいれば、シーズン終了時を最後の舞台に選んだ選手もいる。

Olympics.comでは、今年現役を引退したオリンピックメダリストの中から10人のアスリートを紹介したい。

トム・デーリー(英国、飛込)

2021年に開催された東京2020オリンピックを最後に引退していた飛込トーマス・デーリーは2023年7月、パリ2024オリンピック出場を目指し、選手として復帰することを発表し、英国代表の座を掴み取った。

2008年の北京大会で14歳のときにオリンピックデビューを果たしたデーリーにとって5度目の大会となったパリ2024の開会式では英国選手団の旗手に選出され、ノア・ウィリアムズとともに男子シンクロナイズドダイビング10m高飛込で銀メダルを獲得。5大会を通じて5個目のメダル(金メダル1個、銀メダル1個、銅メダル3個)となった。

閉会式の翌日に引退を発表したデーリー。選手生活を通じて、世界選手権で4度優勝し、ヨーロッパ選手権で5度優勝を果たした。

アリゲリク・ケルバー(ドイツ、テニス)

テニスのグランドスラムで3度優勝した経験を持つアリゲリク・ケルバーも引退した選手のひとりだ。WTA世界ランキング・女子シングルス1位で終えた2016年のシーズンを含め、キャリアを通じて34週間を首位で過ごしたケルバーは、2016年のリオ・オリンピックで銀メダルを獲得した。

近年では家庭を持つためにテニスから離れていたが、2024年のシーズン開幕時に復帰。ドイツチームの一員としてユナイテッド・カップで優勝し、ウィンブルドンで最後の四大大会出場を果たしたケルバーは、パリオリンピックの後に引退することを発表した。

パリ2024の1回戦で大坂なおみを退けて順調に勝ち上がったケルバーだったが、準々決勝でのちに金メダルを手にすることになるジェン・チンウェン(中華人民共和国)と対戦し、敗退。これが最後の試合となった。

ミハイン・ロペス(キューバ、レスリング)

レスリング界のレジェンド、ミハイン・ロペスは、パリ2024でオリンピック5大会連続金メダルを獲得した後、レスリングブーツを脱ぎ、マットの中央に置いた。それは世界選手権でも5度の優勝を誇るロペスの輝かしいキャリアの終わりを示した瞬間でもあった。

グレコローマンの最重量級(北京大会とロンドン大会は120kg級、リオ大会以降は130kg級)を主戦場とした彼は、オリンピック5大会で同じ個人種目で優勝した初めての、そして今のところ唯一の選手となった。彼は2021年の東京2020で優勝して以来、3年間、国際舞台でレスリングをしていないにもかかわらず、パリでこの偉業を成し遂げたことは特筆に値する。

また、2008年から2016年までの4大会の開会式では、キューバ代表選手団の旗手を務めた。

PARIS, FRANCE - AUGUST 06: Mijain Lopez Nunez of Team Cuba removes his shoes to signify his retirement following his victory and earning of fifth Olympic Gold during the Wrestling Men's Greco-roman 130kg Gold Medal match against Yasmani Acosta Fernandez of Team Chile (not pictured) on day eleven of the Olympic Games Paris 2024 at Champs-de-Mars Arena on August 06, 2024 in Paris, France. (Photo by Sarah Stier/Getty Images)

(2024 Getty Images)

エマ・マキーオン(オーストラリア、水泳)

水泳選手のエマ・マキーオンはオーストラリア史上最高のオリンピック選手である。30歳のマキーオンは、2024年のパリ大会が最後のオリンピックになるだろうと明言していたが、世界選手権やその他の大会に出場し続けるかどうかは明かしていなかった。

そのキャリアにおいて合計14個のオリンピックメダル(金メダル6個、銀メダル3個、銅メダル5個)を獲得したマッキオンは、11月に引退を決意した。

パリでは3個のメダルに輝いたが、特に多くの人の記憶に残っているのは東京2020だろう。7種目に出場した彼女は、そのすべてでメダルを獲得(そのうち金メダルは4個)を獲得。そのプロセスの中で、彼女はオーストラリアで最も多くメダルを獲得したオリンピック選手となった。また、キャリアを通じて長水路の世界選手権で5度、短水路で4度優勝した。

アレックス・モーガン(アメリカ合衆国、サッカー)

2012年ロンドンオリンピック金メダリストのアレックス・モーガンは、アメリカ女子サッカー代表チームの偉大なスター選手のひとりだ。

17年間の選手生活において、代表チームで通算224試合に出場して123点をあげたモーガンは、歴代の代表チームの中で通算試合数で9番目、得点数では5番目にランクインしている。

東京2020で銅メダルを獲得し、FIFA女子ワールドカップでも2度優勝したストライカーのモーガンは、クラブレベルでも成功を収め、特に2017年にはリヨンのUEFA女子チャンピオンズリーグ優勝に貢献した。

アンディ・マレー(英国、テニス)

男子テニス界の 「ビッグ4 」のうち、さらに2人が今年で引退することになった。近年ケガに悩まされ、2024年パリ大会が最後の大会となることを発表したアンディ・マレーは、ダン・エバンスとの男子ダブルスに専念するため、シングルスを棄権した。

2人は何度かマッチポイントを凌いだものの、結果的に準々決勝で敗退した。2012年ロンドン大会と2016年リオ大会の男子シングルスで優勝したオリンピック王者のマレーは、コート上で涙を見せて別れを惜しんだ。

マレーはオリンピックで連覇を達成した唯一のシングルス選手であり、四大大会では3勝を挙げ、2015年には英国代表としてデビスカップを制覇した。スコットランド出身のマレーは、「結果的に自分のキャリアを自分の言葉で、素晴らしい観客のいるコートで締めくくることができて嬉しい」とOlympics.comに語った。

そして年末には、「ビッグ4」の最後のひとり、ノバク・ジョコビッチのコーチとして新たにタッグを組むことが発表された。

ラファエル・ナダル(スペイン、テニス)

「ビッグ4 」のもうひとり、スペインのラファエル・ナダルも、スペイン代表として地元マラガで開催された国別対抗戦デビスカップ・ファイナルズを最後に、現役生活にピリオドを打った。

オリンピック金メダリスト(2008年北京大会のシングルス、2016年リオ大会のダブルス)であるナダルは、全仏オープンで14勝という記録を樹立したグランドスラムの会場、ローラン・ギャロスでオリンピックでのキャリアを終えた。マレーと同様、ケガに苦しんでいた彼は、パリ2024シングルス2回戦で、のちに金メダルを獲得することになるジョコビッチにストレートで敗れた。

グランドスラムで22勝をあげたナダルは、カルロス・アルカラスとペアを組んでダブルスにも出場し、マレーとエバンスと同じように準々決勝で敗退した。ナダルは10月に引退を表明し、翌月のマラガでの大会では、スペインが準々決勝でオランダに敗れ、そのキャリアに終止符を打った。

その輝かしいキャリアの中で、ナダルはデビスカップで5度優勝し、ゴールデンスラム(四大大会すべてとオリンピックのシングルスで優勝)を達成した3人のうちのひとりである。

ガブリエラ・パパダキス 、ギヨーム・シゼロン(フランス、フィギュアスケート)

ガブリエラ・パパダキスギヨーム・シゼロンアイスダンス界の偉大なペアだ。北京2022オリンピックを制したふたりは、同年3月にフランス・モンペリエで行われた2022年世界選手権以来、大会には出場していなかった。

20年近く一緒に滑ってきたふたりは、シニアの国際大会デビューの翌シーズン、2015年にヨーロッパ選手権と世界選手権で優勝して注目を集め、その年、彼らはカナダのモントリオールに移り住み、その後のトレーニング拠点となった。

パパダキスとシゼロンは平昌オリンピックで銀メダルに輝き、北京オリンピックでは悲願の金メダルを獲得。その1ヵ月後にモンペリエで優勝した後、チームは1シーズンの競技活動休止を発表し、のちに2シーズンに延長された。12月に引退が正式に発表され、「大きな感謝の気持ちを込めて......私たちはこのページをめくることにしました」と語った。

宇野昌磨(日本、フィギュアスケート)

フィギュアスケートの宇野昌磨も引退を発表した。世界選手権で2度優勝した宇野は、2018年の平昌オリンピックでは羽生結弦(日本)に次いでシングルで銀メダルを手にし、2022年にはネイサン・チェン(アメリカ合衆国)に金メダルを譲り、宇野は銅メダルを獲得した。

羽生とチェンがスケート界から去った後の2022年と2023年の世界選手権を制したが、2024年大会では4回転アクセルを跳んだイリア・マリニンが優勝し、宇野は4位。しかし、宇野は後悔することなく競技生活を終えた。

引退会見では、「まさかテレビで見ていたオリンピックの舞台とか、まさかそこでいい成績を残せるとは思っていませんでした。また、世界選手権で優勝する選手になれると、本当にこの3、4年前まで思っていなかった。フィギュアスケートとの出会いっていうのはすごく感慨深いものだなと思います」と話し、羽生やチェンが競技会を去り、「さみしい気持ちと取り残されてしまった思いもあった」とこの数年の心情を吐露した。

オリンピックで金メダルを獲得したことはないが、宇野昌磨は北京大会の団体戦で銀メダルも獲得しており、フィギュア人気の日本人で最も多くのオリンピックメダルを獲得しているフィギュアスケーターである。

ポーシャ・ウッドマンウィクリフ(ニュージーランド、7人制ラグビー)

7人制ラグビーのポーシャ・ウッドマンウィクリフは、パリオリンピックで2度目の金メダルを獲得した後に引退し、その素晴らしいキャリアに終止符を打った。ニュージーランド代表として7人制および15人制ラグビーでプレーした33歳の彼女は、ワールドラグビー女子セブンズと女子SVNSシリーズで200得点、そして250トライを記録した最初の選手でもある。

若い頃はネットボールや陸上選手として活躍したウッドマンウィクリフは、2012年にラグビーに転向。12年のキャリアの中で、オリンピック優勝2回、準優勝1回、ワールドカップ・セブンズで優勝2回、15人制女子ワールドカップでも2度優勝した。

オリンピック・ニュージーランド代表としての7人制での最後の試合は、パリ2024の決勝で、ニュージーランドはカナダを19-12で下して優勝した。彼女は10分に交代し、スタンディングオベーションを浴びた。 ウッドマンウィクリフはOlympics.comのインタビューで「今の自分、そして自分が歩んできた道のり、自分が成長したことを誇りに思います。内気なネットボールの少女から、今や世界的に有名なラグビー選手になったんです」と語った。

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