エリウド・キプチョゲ、リディア・コー…パリ2024を最後のオリンピックと位置づけた10人

執筆者 Michael Hincks
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写真: AFP or licensors

オリンピックのレジェンドたちが、パリ2024を最後にオリンピックでの戦いを終えた。

長きにわたって競技を続けることは決して容易なことではない。スポーツ界のレジェンドたちの中には、パリ2024を最後のオリンピックとすることを決意した選手が少なくない。

有終の美を飾った選手もいれば、パリでヒヤリとさせられた選手もいるが、全員がオリンピックの歴史に名を刻んだ。

金メダルを獲得して引退する競泳タチアナ・スミスサーフィンカリッサ・ムーアのほか、今大会が最後のオリンピックとなることを示唆している10選手を紹介しよう。

マ・ロン、卓球

中華人民共和国代表のマ・ロンは、パリ2024卓球男子団体戦で自身6個目となる金メダルを獲得し、キャリアの最終地点を迎えた。

ロンドン2012オリンピックからの4大会で金メダルを獲得し、世界選手権で14度優勝したマ・ロンは、現在35歳。決勝後の記者会見では、「パリオリンピックを私のキャリアの最終地点と考えているので、このような完璧な形で終えることができて非常に嬉しいです」と話し、「しかし、パリで全てが終わりではなく、人生はまだまだ長い道のりがあります」と続けた。

シェリーアン・フレーザープライス、陸上

史上最高のスプリンターのひとりであるジャマイカのシェリーアン・フレイザープライスは、最後の大会でメダルを獲得することはできなかったが、陸上競技に与えた影響により、オリンピックの伝説として永遠に語り継がれるだろう。

2009年の世界陸上選手権以降、金メダルを10個獲得した史上最速の女子スプリンター、フレイザープライスは、北京2008ロンドン2012の女子100mで金メダルに輝き、リオ2016では銅メダル、東京2020では銀メダルを獲得した。

37歳になった彼女は、家族との時間を優先するためランニングシューズを脱ぐ。「私は今、家族のために何か他のことをする義務があると思っています」と彼女は語った。

マックス・ウィットロック、体操

10年以上にわたって英国の体操競技界を牽引してきたマックス・ウィットロックは、リオ2016の種目別ゆかとあん馬で金メダルを獲得し、個人総合でも銅メダルを獲得した。

パリ大会ではあん馬の表彰台を惜しくも逃し4位。英国の体操界で最も成功した31歳の彼は競技から引退するかもしれないが、体操競技との関わりはまだ終わっていない。

「オリンピックの経験は信じられないほど素晴らしいものだった。最高のことのひとつは、他の人たちに影響を与え、スポーツを始めようとする人の背中を押せたこと。親御さんから、子どもたちがテレビで自分の姿を見て体操を始めたと聞くと、本当に嬉しい」

「そのような影響を与え続け、スポーツを通じて子どもたちに最高の機会を与えたい」

マルタ、サッカー

ブラジル代表の歴代最多ゴール記録を持つマルタは、女子サッカー界の史上最高選手として知られている。

8月10日の女子サッカー決勝で、マルタは代表選手として最後となるであろう国際試合に出場した。ブラジル代表チームは米国代表チームに0-1で敗れ、38歳のマルタは3つ目となるオリンピック銀メダルを獲得した。またしても金メダルを逃す形となったが、ワールドカップでの史上最多ゴール数を誇る彼女は、女子サッカー界に多大な影響を与えた選手として名を残すだろう。

そして、今後もサッカー界に貢献するつもりだ。「私はサッカー界から消えるつもりはない。今の世代のために力になりたい。彼女たちはとても才能があり、何を成し遂げられるかを理解しているから」。

エリウド・キプチョゲ、陸上

史上最高のマラソンランナーとして広く認められているエリウド・キプチョゲ(ケニア)のオリンピックは、タクシーでフィニッシュエリアに到着し、幕を閉じた。パリ2024でのレースは不本意な形で終わったが、キプチョゲのキャリアの長さは、彼を特別な存在にするひとつの要素に過ぎない。

20年前のアテネ2004では男子5000mで銅メダルを獲得し、北京大会の同種目では銀メダルに輝いた。2010年代にマラソンに転向し、リオ2016、東京2020で金メダルを獲得。メジャーマラソンでは11度頂点に立つなど、長きにわたって世界トップに君臨し、多くのアスリートたちに影響を与え続けてきた。

リディア・コー、ゴルフ

ニュージーランド出身のリディア・コーは、自分の意思を貫くゴルファーだ。リオ2016で銀メダル、東京2020で銅メダルに輝いた彼女は、パリ2024のゴルフ・ナショナルで金メダルを獲得した。

体操選手のシモーネ・バイルズ(米国)の影響を受けたという彼女は、「引き際は自分で決めると言い続けてきました。シモーネ・バイルズの言葉を引用したものです」とした上で、「自分の運命と今週の結末をコントロールできる自分になりたかったし、このような形で終われたことは夢のよう」と喜びを語った。

アンディ・マレー、テニス

パリ2024は、アンディ・マレーにとって最後のオリンピックだっただけでなく、輝かしいキャリアに終止符を打つ、彼にとって完全に最後の大会でもあった。

37歳のマレーは、ロンドン2012でロジャー・フェデラーを破り金メダルを獲得し、混合ダブルスでも銀メダルを獲得した。そして、ウィンブルドンで2度、全米オープンでも優勝し、リオ2016の男子シングルスでオリンピック2連覇を達成した。

彼のキャリアはパリ2024の男子ダブルスで幕を閉じた。マレーはダン・エバンスとともに彼の特徴とも言える粘りのプレーを見せ、マッチポイントをしのいで最初の2試合を制した後、準々決勝で第3シードのテイラー・フリッツとトミー・ポールに敗れた。

ケリー・ハリントン、ボクシング

ボクサーのケリー・ハリントン(アイルランド)は、2連覇を達成し歴史に名を刻んだ。東京2020で金メダルに輝いた34歳のハリントンは、パリでも圧倒的な強さを見せて優勝し、アイルランド代表の女子選手として初のオリンピック連覇を果たした。

2018年の世界選手権でもライト級で金メダルを獲得したダブリン生まれの彼女は、試合後に引退を表明した。

決勝で中国のヤン・ウェンルー(楊文璐)を破った彼女は、「引退します。王者のまま引退します。それが私のしたいことです」と語った。

トム・デイリー、飛込

18歳のときに出場したロンドン2012でオリンピックデビューを飾り、4大会連続出場、連続メダル獲得を果たした飛込界のスター、トム・デイリー(英国)も引退を発表したアスリートのひとりだ。

ロンドン2012では10m高飛込で銅メダル、4年後のリオ2016では10m高飛込シンクロで銅メダルを獲得し、東京2020では金銅メダルに輝いた。

パリ2024で銀メダルを獲得したデイリーは、VOGUE誌のインタビューで引退について語った。

「多くのプレッシャーと期待を背負っていた。それにどうしても応えたいと思っていた。でも、観客席にいる家族や友人を見たとき、僕はこう思ったんだ。これこそが、僕がこれをやった理由なんだとね」

「最後の瞬間は感動的だった。プラットフォームに立って、これが競技会での最後のダイブになるとわかっていたから。でも、いつかは決断しなければならない。今、そのときだと思う。終わりにするのがいいときだと思う」

エマ・マキーオン、競泳

オーストラリアで最も多くのオリンピックメダルを獲得した競泳選手、エマ・マキーオンは、自身のオリンピックメダルコレクションにさらに金メダル1つを加えて合計14個とし、華々しくキャリアを締め括った。

わずか3大会で、マキーオンは金メダル6個、銀メダル3個、銅メダル5個を獲得。東京2020は彼女にとって最も成功した大会で、50mと100mの自由形を制し、4×100m自由形リレーとメドレーリレーでも金メダルを獲得したほか、銅メダル3個を手にした。

マキーオンは、「寂しくなります。多くの素晴らしい人間関係や経験をもたらしてくれたし、今の私を形成してくれた」と競技人生を振り返り、「トレーニングやレースができなくなるのは寂しいけれど、次の人生への準備はできている。楽しみです」と語った。