冬季オリンピックに向け、挑戦を続ける兄弟姉妹アスリートたち
夏に開催された東京オリンピックでは、きょうだいアスリートの活躍が注目されたが、冬季スポーツでも多くのきょうだいがそれぞれの競技でともに汗を流している。
平昌大会で姉妹そろってメダルを獲得した高木菜那・美帆姉妹をはじめ、**北京オリンピック**出場を狙うきょうだいアスリートは意外と多い。きょうだいの絆が作用して互いを高め合うこともあれば、きょうだいであるがゆえに他人から比較されプレッシャーを感じることも。
2月に迫る北京大会を前に、出場権獲得を目指して切磋琢磨するきょうだいたちの姿をご紹介しよう。
高木姉妹、ライバル関係を超えて
2018年の平昌オリンピックのスピードスケート競技において、ふたり合わせて5個のメダルを獲得したのが高木姉妹。姉・菜那が金メダル2個(マススタートおよび団体パシュート)、妹・美帆がメダル3個(1000mで銅、1500mで銀、団体パシュートで金)を手にしたが、ここに至るまでの道のりは平坦ではない。
先にオリンピックデビューを果たしたのは、当時15歳だった妹の美帆だった。バンクーバー2010への出場が決まり、妹が脚光を浴びる様子を目の当たりにした2歳上の菜那は、嫉妬心が渦巻くこともあったという。ところが4年後のソチ2014では、逆に菜那が代表入りを果たす。菜那が歯を食いしばって目の前のことにひとつひとつ取り組んだように、今度は美帆が悔しい気持ちを胸に練習に励み、平昌2018には姉妹そろって出場。団体パシュートでは姉妹でともに金メダルを獲得した。記者会見で菜那は、「スピードスケートの中で初めに妹がメダルを取ってくれたことが、刺激になった」と笑顔で姉妹を称えた。
小林きょうだい、高め合う存在
平昌大会以降、男子スキージャンプのエースとして存在感を示している小林陵侑。彼のきょうだいは、全員がスキージャンパー。長男・潤志郎と次男・陵侑はともに平昌オリンピックに出場し、陵侑が男子ノーマルヒルで7位入賞した。長男・潤志郎は「自分も頑張らなきゃと思わせてくれる存在」だと認める。ふたりはともに10月24日に発表されたワールドカップ序盤戦の遠征メンバーに選出された。
偉大なきょうだいの背中を追うのが長女・諭果と、末っ子の龍尚。諭果は、きょうだいと同じ舞台で戦うことを目指し、「おにいちゃんとおとうとたちがいるから
わたしもまだまだがんばる」とつづる。一方、現在20歳の龍尚は、平昌大会でテストジャンパーを務め、オリンピックの雰囲気を経験済み。兄たちに負けないようにと「世界一」を目指し、挑戦を続ける。
床姉妹、互いへの安心感
元アイスホッケー選手の父と、テニスのインストラクターの母の下、スポーツ一家に生まれた亜矢可&秦留可姉妹。弟も大学でアイスホッケーに精を出す。ソチ2014ではふたりそろってオリンピックデビューを飾るはずが、大会直前に妹が落選し、姉の亜矢可(ディフェンダー)のみが大会出場した。しかし4年後の平昌にはふたりそろって出場。現在も代表選手として名を連ねる。
フォワードでプレーする妹・秦留可にとって、後ろで守っていてくれる姉は心強い存在。一方で、亜矢可は攻撃面で妹からアドバイスを受けるという。
女子アイスホッケーではもう1組、志賀葵(あおい/1999年7月4日)、紅音(あかね/2001年3月3日)姉妹が活躍中。北京オリンピックへの出場が確定している、日本女子アイスホッケーチーム。姉妹たちの活躍を見届けよう!
菊池姉妹、互いの思いを胸に
ショートトラック女子を盛り上げるのは菊池姉妹。菊池家5人姉妹のうち、長女を除く4人がスケートに取り組み、次女・彩花(スピードスケート)は平昌で金メダルを獲得後に引退し、現在は三女・悠希、四女・萌水、五女・純礼がショートトラックで活躍する。4人で目指した平昌オリンピックだったが、四女の萌水が落選。平昌大会期間中には「やっぱりあの場所で感動を届ける側になりたいと思いました」などと悔しい思いをにじませた。彼女の思いを胸に、大会に出場した姉妹らは萌水の分まで力を尽くした。
ショートトラックにはこの姉妹以外にも、もう1組「菊池きょうだい」がいる。男子の菊池哲平(1995年8月5日)&耕太(1997年1月24日)兄弟だ。菊池3姉妹、兄弟ともにワールドカップメンバーに選出されており、10月末に名古屋で開催された大会では、北京オリンピックで新しく採用される混合2000メートルリレー(男女各2人)のB決勝(6~8位決定戦)を菊池悠希&純礼姉妹、菊池兄弟というメンバーで戦い7位となった。北京オリンピックの混合リレーは12ヶ国で争われることになるが、出場権を獲得したら「菊池姉妹&兄弟」によるリレーが見られるかも!
渡部兄弟、平野兄弟、村瀬姉妹…
ほかにも、冬のスポーツで活躍中のきょうだいはいる。
オリンピック過去4大会のノルディック複合に出場している**渡部暁斗**(あきと/1988年5月26日)は、ソチ2014と平昌2018を弟・善斗(よしと/1991年10月4日)とともに出場。兄・暁斗は、この2大会のノーマルヒルで銀メダルを獲得した。ノルディック複合の団体戦では4位どまりの日本勢だが、北京ではメダル獲得を狙う。兄弟そろってメダルをかける姿に期待したい。
一方、スノーボードでは、スノボとスケートボードの二刀流で自分の道を突き進む**平野歩夢(あゆむ/1998年11月29日)と、彼の背中う追いかける弟の海祝**(かいしゅう/2002年10月14日)。ビッグエアのワールドカップ初戦で優勝を飾った村瀬心椛(ここも/2004年11月7日)と、妹・由徠(ゆら/2007年2月1日)。そして冨田せな(1999年10月5日)&るき(2001年12月28日)姉妹。平昌オリンピックで銅メダルを獲得した女子カーリングのロコ・ソラーレには、吉田知那美(ちなみ/1991年7月26日)&夕梨花(ゆかり/1993年7月7日)姉妹がいる。ロコ・ソラーレは北京オリンピック・女子カーリング出場の残り1枠をかけて12月の世界選手権に挑む。
兄や姉が真剣にスポーツに取り組む姿が弟や妹に影響を与え、年下の彼らの奮闘に刺激されて兄姉らがさらに努力を重ねる。北京オリンピックではそんな彼らの奮闘を楽しみにしたい。