世界水泳2023:男子自由形の注目選手・世界記録・日本記録…世界最速を目指し日本代表3選手が挑む

パリ 2024

2019年世界水泳200m自由形銀メダルの松元克央はじめ、塩浦慎理、中村克が挑む競泳世界最速の戦い。世界水泳選手権2023福岡大会の競泳・男子自由形の見どころを紹介する。

2 執筆者 Hirotaka Hikoi
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(World Aquatics)

世界最高峰の水泳選手たちが集う世界水泳選手権2023が、7月14日に福岡(マリンメッセ福岡)で開幕した。

7月23日〜30日に予定されている競泳では、日本代表「トビウオジャパン」は男女それぞれ20人の計40選手が出場。日本水泳連盟は個人種目で優勝した選手をパリ2024オリンピックの内定選手(※)とすることを発表しており、パリ2024出場を確かなものにするためにも、さらには1年後のパリに向けて現在の立ち位置を知るためにも、選手たちは積み上げてきたものをこの大会にぶつける。トビウオジャパンは、昨夏のブダペスト大会より1つ多い5個のメダルを目標に掲げる。

各種目でどんなドラマが展開されるのか。ここでは7月23日から始まる男子自由形(50m、100m、200m、400m、800m、1500m)の注目選手のほか、日本選手の紹介、現在の世界記録および日本記録をお伝えする。

※ 国際大会代表選手選考会において同種目出場が条件(日本水泳連盟より

世界水泳2023競泳、男子自由形の注目選手

男子自由形では、50m、100m、200m、400m、800m、1500mの6種目が行われる。同じ自由形とはいえ、爆発的なスプリント能力が必要な短距離の50m、100mに対し、持久力や後半のスタミナが要求される800m、1500m、そしてそれら両方の能力が求められる200m、400mと、種目に応じて特化した選手の個々の能力が試される各種目には見どころがいっぱいだ。

50m自由形の注目は、前回2022年世界水泳(ハンガリー・ブダペスト)、同種目金メダルのベンジャミン・プラウド(イギリス)だ。2019年世界水泳(大韓民国・光州)と東京2020の50mおよび100m自由形で金メダルに輝いたケーレブ・ドレッセル(アメリカ合衆国)が出場しない今回の福岡大会では、世界水泳2連覇がかかっている。

100m自由形には、リオ2016の金メダリスト、東京2020の銀メダリスト、25歳のカイル・チャルマース(オーストラリア)に注目が集まる。一方、東京2020ではチャルマースの後、7位に終わった18歳のダビド・ポポビッチ(ルーマニア)は、2022年6月の世界水泳で100mおよび200mで2冠に輝いた後、8月のヨーロッパ水泳選手権(ローマ)で現在の100m自由形世界記録(46秒86)をマークするという、競泳男子の中で最も勢いのある選手のひとりと言えるだろう。

200m自由形では、東京2020で金メダルに輝いているトム・ディーン(イギリス)とポポビッチの戦いが注目される。ディーンは、2022年世界水泳では200mで銅メダルとなりポポビッチの後塵を拝した。大会前の現在、鹿児島市でキャンプを張るイギリスチーム。ディーンは「絶対メダルを取りたいのでがんばります」と抱負を述べている。

400m自由形には、東京2020金メダルのアハメド・ハフナウーイ(チュニジア)、同4x200m自由形リレー銅メダルのエリジャ・ウィニントン(オーストラリア)が出場する。

800m自由形には、東京2020の800mおよび1500m自由形金メダルのロバート・フィンケ(アメリカ合衆国)と、リオ2016の1500m自由形金メダル、東京2020の800m自由形銀メダル、同マラソンスイミング銅メダルのグレゴリオ・パルトリニエリ(イタリア)のバトルに注目だ。この2人は、1500m自由形でも激突する。2022年世界水泳では、フィンケが800m自由形で、パルトリニエリが1500m自由形で金メダル(フィンケは銀メダル)を分けた。2人の熱いライバル物語に期待したい。

世界水泳2023男子自由形、注目の日本人選手

自由形は、競泳の中でも注目される種目のひとつだ。日本人男子がオリンピックの自由形で初メダルを獲得したのはアムステルダム1928高石勝男が男子100m自由形で銅メダルを獲得した。

ロサンゼルス1932では、同種目で宮崎康二(やすじ)が金メダル、河石達吾が銀メダル。400m自由形では大横田勉が銅メダル。1500m自由形で北村久寿雄が金メダル、牧野正蔵が銀メダルを獲得し、元祖トビウオジャパンが大活躍した。

ベルリン1936でも、1500m自由形で寺田登が金メダル、400m自由形で牧野正蔵が銅メダルを獲得し日本人男子の活躍が続いた。

その後、ヘルシンキ1952の100m自由形では鈴木弘が銀メダル。メルボルン1956では山中毅(つよし)が400mと1500m自由形で銀メダルを獲得し、続くローマ1960の400m自由形でも銀メダルに輝いている。

しかし、実はこれ以降、日本人男子がオリンピックの自由形でメダルを獲得することは途絶えてしまっている。

1973年に始まった世界水泳では、2001年の福岡大会で山野井智弘が50m自由形で銅メダルに輝いている。2013年スペイン・バルセロナ大会では、萩野公介が400m自由形で銀。2019年大韓民国・光州大会では、松元克央(かつひろ)が200m自由形で銀メダルを手にしている。

トビウオジャパンにとって、男子自由形は何としても上位を目指し、メダル獲得に向けて力を入れたい種目だ。

その男子自由形には、50m自由形日本記録保持者、塩浦慎理(しんり)が同種目に挑む。日本男子の世界水泳自由形初メダルとなった50m自由形の山野井を目標に、くしくも同じ福岡大会で31歳のベテランは悲願のメダル獲得を目指す。

同じく50m自由形には、同種目と100m自由形の元日本記録保持者、2度のオリンピアン、中村克(かつみ)もメダルを目指す。

そして、男子自由形のホープ、2019年世界水泳200m自由形銀メダルの松元克央。今大会では、100mおよび200m自由形にエントリーし世界の頂点を見据える。両種目で日本記録を持つ松元だが、それらの記録を更新する勢いを見せることができれば、今回の世界水泳でもメダルを獲得できるはずだ。

トビウオジャパン男子自由形に出場する選手の活躍に期待したい。

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(2023 Getty Images)

競泳・男子自由形の世界記録・日本記録

※以下の記録は、2023年7月13日現在

男子50m自由形

[世界]

  • 世界記録:20秒91
  • 世界記録保持者:セーザル・シエロ(ブラジル)
  • 記録日・大会:2009年12月18日・オープントーナメント(サンパウロ)

[日本]

  • 日本記録:21秒67
  • 日本記録保持者:塩浦慎理
  • 記録日・大会:2019年4月7日・日本選手権(東京)

[塩浦慎理の自己ベスト]

  • 記録:21秒67
  • 記録日・大会:2019年4月7日・日本選手権(東京)

[中村克の自己ベスト]

  • 記録:21秒87
  • 記録日・大会:2018年2月11日・きららカップ(山口)

男子100m自由形

[世界]

  • 世界記録:46秒86
  • 世界記録保持者:ダビド・ポポビッチ(ルーマニア)
  • 記録日・大会:2022年8月13日・ヨーロッパ水泳選手権(ローマ)

[日本]

  • 日本記録:47秒85
  • 日本記録保持者:松元克央
  • 記録日・大会:2023年4月6日・日本選手権(東京)

[松元克央の自己ベスト]

  • 記録:47秒85
  • 記録日・大会:2023年4月6日・日本選手権(東京)

男子200m自由形

[世界]

  • 世界記録:1分42秒00
  • 世界記録保持者:ポール・ビーデルマン(ドイツ)
  • 記録日・大会:2009年7月28日・世界水泳選手権(ローマ)

[日本]

  • 日本記録:1分44秒65
  • 日本記録保持者:松元克央
  • 記録日・大会:2021年4月5日・日本選手権(東京)

[松元克央の自己ベスト]

  • 記録:1分44秒65
  • 記録日・大会:2021年4月5日・日本選手権(東京)

男子400m自由形

[世界]

  • 世界記録:3分40秒07
  • 世界記録保持者:ポール・ビーデルマン(ドイツ)
  • 記録日・大会:2009年7月26日・世界水泳選手権(ローマ)

[日本]

  • 日本記録:3分43秒90
  • 日本記録保持者:萩野公介
  • 記録日・大会:2014年4月12日・日本選手権(東京)

男子800m自由形

[世界]

  • 世界記録:7分32秒12
  • 世界記録保持者:チョウ・リン(中華人民共和国)
  • 記録日・大会:2009年7月29日・世界水泳選手権(ローマ)

[日本]

  • 日本記録:7分49秒55
  • 日本記録保持者:黒川紫唯(しゅい)
  • 記録日・大会:2021年4月7日・日本選手権(東京)

男子1500m自由形

[世界]

  • 世界記録:14分31秒02
  • 世界記録保持者:ソン・ヨウ(中華人民共和国)
  • 記録日・大会:2012年8月4日・ロンドン2012オリンピック

[日本]

  • 日本記録:14分54秒80
  • 日本記録保持者:山本耕平
  • 記録日・大会:2014年6月20日・ジャパンオープン2014(東京)

世界水泳2023、競泳・男子自由形の日程

男子50m自由形

  • 予選:7月28日(金) 10:30〜13:15
  • 準決勝:7月28日(金) 20:00〜22:10
  • 決勝:7月29日(土) 20:00〜22:15

男子100m自由形

  • 予選:7月26日(水) 10:30〜13:30
  • 準決勝:7月26日(水) 20:00〜22:15
  • 決勝:7月27日(木) 20:00〜22:15

男子200m自由形

  • 予選:7月24日(月) 10:30〜13:15
  • 準決勝:7月24日(月) 20:00〜21:50
  • 決勝:7月25日(火) 20:00〜22:05

男子400m自由形

  • 予選:7月23日(日) 10:30〜14:45
  • 決勝:7月23日(日) 20:00〜22:20

男子800m自由形

  • 予選:7月25日(火) 10:30〜13:15
  • 決勝:7月26日(水) 20:00〜22:15

男子1500m自由形

  • 予選:7月29日(土) 10:30〜13:30
  • 決勝:7月30日(日) 20:00〜23:20

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