北京2022ガイド:冬季オリンピックの注目選手やチームを一挙紹介!(前編)
2回シリーズの前編として、アルペンスキー、フィギュアスケート、フリースタイルスキー、スノーボード、アイスホッケー、リュージュ、ショートトラック、スピードスケートの注目選手やチームをチェックしよう。
2022年2月4日、ウィンタースポーツの世界トップアスリートが北京に集結する。参加アスリートは、109の競技・種目にわたる約3,000人。活躍が期待されるスキーヤーやスケーターなど、名前を挙げればきりがないが、北京2022をもっと身近に楽しむために、各競技の金メダル候補選手・チームを紹介したい。まずは全15競技のうち8競技を、前編としてお届けする(後編はこちら)。
ミカエラ・シフリン|アルペンスキー
- 国籍:アメリカ|生年月日:1995年3月13日
- オリンピック競技/専門:スラローム(回転)、ジャイアントスラローム(大回転)、アルペンコンバインド(複合)
主な成績
- オリンピック:金メダル2個(スラローム:ソチ2014/大回転:平昌2018)、銀メダル1個(複合:平昌2018)
- 世界選手権:優勝6回、メダル合計11個
- ワールドカップ:表彰台(3位入賞)106回、通算69勝、種目別優勝8回、総合優勝3回
**ミカエラ・シフリンは現在アルペンスキー**界を席巻しているアスリート。オリンピックで2度の栄冠を手にし、オリンピックのスラローム種目において史上最年少で金メダルを獲得、ワールドカップ史上最多となる45回の優勝を収め、同一競技において4大会連続で世界選手権を制した初めての選手でもある。2021年世界選手権では、複合での金メダルを含む合計4個のメダルを手にし、スポーツにおける輝かしいキャリアにさらなる彩りを加えた。
シフリンは平昌2018において大回転(金メダル)、回転、複合(銀メダル)に出場した。順調に行けば、北京2022で複数の種目を制する女性アスリートとなるだろう。
「今とても誇りに思えることは、回転、(大回転、)スーパーG(スーパー大回転)、ダウンヒル(滑降)で勝つ方法を知っているということ。こんなことが起こるなんて思ってもみませんでした」
- ミカエラ・シフリン(第66回ワールドカップ勝利後のNBCのインタビューにて)
ミカエラ・シフリン
羽生結弦|フィギュアスケート
- 国籍:日本|生年月日:1994年12月7日
- オリンピック競技/専門:男子シングル
主な成績
- オリンピック:金メダル2個(ソチ2014、平昌2018)
- 世界選手権:優勝2回、2位3回、3位2回
- 四大陸選手権:優勝1回、2位3回
- グランプリファイナル:優勝4回、2位2回
**フィギュアスケート男子シングルで2連覇中の王者・羽生結弦**は、北京2022での勝利が有力視される選手。羽生が優勝すれば、同競技では1928年以来の3連覇達成となる。日本が生んだこの天才アスリートが新たな歴史を刻んだとしても決して驚くことではない。羽生はオリンピックのフィギュア男子シングルにおいてアジア人初、男子スケーターとして1948年以来の最年少で金メダルに輝き、スーパースラムを達成(シニアとジュニアの主要大会すべてを制覇)した唯一の男子シングル・スケーターなのだから。
これまでに世界記録を19回も塗り替えた羽生は、史上最高とまでは言わないまでも歴史上偉大なスケーターとして広く認知されている。つまり、北京2022での羽生の滑りからは目が離せないということだ。
「(オリンピックで)2回勝つことができましたけど、五輪って素晴らしいものだと思っています。五輪こそが競技者、フィギュアスケートのスポーツとして一番のめざすべきゴール。それをとってこそ、チャンピオンだと言えるんじゃないかなって。誰が北京五輪でチャンピオンになるのかを楽しみにしながら、これから過ごしたいなと思っています」
- 羽生結弦(AERA 2019年4月8日号より)
羽生結弦 / Yuzuru HANYU
スザンネ・シュルティング|スケート・ショートトラック
- 国籍:オランダ|生年月日:1997年9月25日
- オリンピック競技/専門:1000m、1500m、3000mリレー
主な成績
- オリンピック:金メダル1個(1000m:平昌2018)、銅メダル1個(女子3000mリレー:平昌2018)
- 世界選手権:優勝7回、メダル合計10個
- 欧州選手権:優勝13回、メダル合計18個
北京2022の**ショートトラックは、イム・ヒョジュン(韓国)、アリアナ・フォンターナ(イタリア)、シャオリン・サンドル・リュウと弟のシャオアン・リュウ(ハンガリー)など有力アスリートが目白押し。しかし、2021年の世界選手権の結果を受け、北京2022ではスザンネ・シュルティング(オランダ)**が一際スポットライトを浴びることになるだろう。
シュルティングは2021年の世界選手権で総合優勝を含むすべての種目を総なめ。女子選手として史上2人目、スキーヤーとしては4人目となる偉業を達成した。北京オリンピックで同様の成績を残すことは簡単なことではないが、シュルティングの挑戦をぜひとも見届けたい。
「金メダルを手にすること以上の喜びはありません。誰よりも早くゴールラインを通過するときの高揚感のために夏の間ずっと厳しいトレーニングをこなすのですから。そして勝ったら体の底から大声で叫ぶ。勝つときの感覚を思うと、もっと、もっと、もっととやる気が湧いてきます」
- スザンネ・シュルティング(olafhussein.comにて)
Suzanne SCHULTING
カナダ|アイスホッケー
男子の主な成績
- オリンピック:金メダル9回(1920、1924、1928、1932、1948、1952、2002、2010、2014)、銀メダル4回(1936、1960、1992、1994)、銅メダル3回(1956、1968、2018)
- 世界選手権:優勝26回、2位15回、3位9回
女子の主な成績
- オリンピック:金メダル4回(2002、2006、2010、2014)、銀メダル2回(1998、2018)
- 世界選手権:優勝10回、2位8回、3位1回
**アイスホッケー**の男女カナダ代表は、北京2022での金メダル候補の筆頭に挙げられるものの、男女ともに前大会の平昌2018では優勝を逃している。男子チームは現役NHL選手が参加できず、スーパースター不在が大きく影響して銅メダル “止まり”。一方、女子チームは決勝で米国に敗れ、5連覇の夢を絶たれる結果に。男子チームも同様に、バンクーバー2010とソチ2014に続く3 連覇がかかった平昌2018を3位で終えた。
しかし、NHLエリートアスリートがオリンピックに戻ることが見込まれるため、カナダ代表男子は多くの一流の選手(2度の冬季オリンピック金メダリスト、3度のスタンリーカップ・チャンピオンの**シドニー・クロスビー**など)を招集できるだろう。女子チームは、番狂わせが起こらない限り決勝で再びアメリカと対戦することが予想される。何が起こったとしても、オリンピックの王冠を取り戻すというカナダの戦いが楽しみだ。
「オリンピックを見て育ち、カナダ代表としてプレーすることを夢見ていたひとりの人間として、代表としての体験やここまでの道のりは、本当に特別なものでした」
- シドニー・クロスビー(バンクーバー2010男子アイスホッケーでの金メダルについて。NHL.comにて)
ナタリー・ガイゼンベルガー|リュージュ
- 国籍: ドイツ|生年月日:1998年2月5日
- オリンピック競技/専門:女子1人乗り、チームリレー
主な成績
- オリンピック:金メダル4回(1人乗り:平昌2018、ソチ2014/チームリレー:平昌2018、ソチ2014)、銅メダル1回(1人乗り:バンクーバー2010)
- 世界選手権:優勝9回、メダル合計16個
- 欧州選手権:優勝6回、メダル合計12個
オリンピックでの**リュージュ競技は伝統的にドイツが他国を圧倒しており、ドイツは42個のメダルを獲得している。ドイツ代表のフェリックス・ロッホ、トビアス・ウェンドル、トビアス・アルトは、男子1人乗り、2人乗りのそれぞれで確実にチェックしたい選手だが、同じくドイツのナタリー・ガイゼンベルガー**はオリンピックと世界選手権の歴史の中で最も成功している女性のルガー(リュージュ選手) であるため、今回の記事のいち押し選手として紹介したい。
北京オリンピック期間中に34歳を迎えるガイゼンベルガーは、北京2022のリュージュ女子種目で初めてとなる3連覇を達成することが予想される。それによって6大会連続のメダル獲得を成し遂げれば、リュージュで6個のメダルを手にした**アルミン・ツェゲラー(イタリア)**の記録と並ぶことになる。しかし、ガイゼンベルガーがチームリレーでも再び栄冠を勝ち取ることができれば、ガイゼンベルガーはオリンピック史上メダル獲得数が最も多いルガーとなる。
「オリンピックで金メダルを獲得し、世界選手権も制覇しました。もちろん優勝することを夢見ていましたが、今はとてもリラックスしています。もう手に入れましたから」
- ナタリー・ガイゼンベルガー(平昌2018のリュージュ女子1人乗りで金メダルを獲得した際のコメント)
Natalie GEISENBERGER
ミカエル・キングズベリー|フリースタイルスキー
- 国籍:カナダ|生年月日:1992年7月24日
- オリンピック競技/専門:モーグル
主な成績
- オリンピック:金メダル1個(モーグル:平昌2018)、銀メダル1個(モーグル:ソチ2014)
- 世界選手権:優勝6回、メダル合計11個
- ワールドカップ:表彰台93回、通算65勝、種目別優勝9回、総合優勝9回
北京2022の**フリースタイルスキー競技には13種目あり、デービッド・ワイズ(アメリカ/ハーフパイプ)、サラ・ヘフリン(スイス/スロープスタイル)、ペリーヌ・ラフォン(フランス/モーグル)など、有力アスリートがたくさんいる。中でもミカエル・キングズベリー**が群を抜き、それには正当な理由がある。
カナダ出身のキングズベリーは最も輝かしい成績を収めるモーグルスキーヤーであり、ワールドカップの男子モーグルで最多優勝数と最多通算勝利数を記録している。また世界選手権では男子モーグル選手として史上最多となるメダルを獲得。さらに、モーグルのオリンピックと世界選手権の現王者でもある。とにかく、北京2022のモーグル種目でキングズベリーは必見!
「自分の成功について正確に説明することはできません。室内やスキーを履いてのトレーニングをハードにこなしているし、優勝を目指して大会に出場するたびに、心の底から楽しんでいます。良い結果が得られるのは、すべての要素の組み合わせではないかと思います。スキーをするときの自分は完璧主義者で、自分がやっていることに長期間、完全に集中することができます」
- ミカエル・キングズベリー
Mikael KINGSBURY
クロエ・キム|スノーボード
- 国籍:アメリカ|生年月日:2000年4月23日
- オリンピック競技/専門:ハーフパイプ
主な成績
- オリンピック:金メダル1個(ハーフパイプ:平昌2018)
- 世界選手権:優勝2回、メダル合計2個
- 冬季Xゲーム:優勝6回、2位1回、3位1回
フリースタイルスキーと同じように、**スノーボード競技には多くの種目がある。各種目にスターアスリートが存在するので、ひとりに絞って紹介するのはとても難しい。それでも敢えて挙げるとするならば、ハーフパイプのクロエ・キム**だろう。
17歳の若さで平昌2018に挑んだキムは、スノーボードの女子ハーフパイプ種目で金メダルに輝き、同競技における最年少の女子金メダリストとして見事な成績を収めた。また、ハーフパイプの世界選手権、オリンピック、Xゲームの現チャンピオンであり、この主要3大会とユースオリンピックをすべて制した最初の選手。言うまでもなく、スノーボード界の大物のひとりであり、北京2022で再びニュースの見出しを飾るだろう。
「前回大会と同じマインドセットで、プレッシャーをかけずに挑みます。できる限りのことをして、どうなるか見てみたいと思います」
- クロエ・キム(北京2022に向けたコメント)
イレイン・ブスト|スピードスケート
- 国籍:オランダ|生年月日:1986年4月1日
- オリンピック競技/専門:1000m、1500m、3000m、5000m、団体追い抜き(チームパシュート)
主な成績
- オリンピック:金メダル5個(1500m:平昌2018、バンクーバー2010/3000m:ソチ2014、トリノ2006/チームパシュート:ソチ2014)、銀メダル5個(1000m、1500m、5000m:ソチ2014/3000m:平昌2018/チームパシュート:平昌2018)、銅メダル1個(1500m:トリノ2006)
- 世界オールラウンド選手権:優勝7回、メダル合計13個
- 欧州選手権:優勝7回、メダル合計13個
冬季オリンピックにおいて**スピードスケート**といえばオランダ勢で、メダル総数は121を数える。オランダに続くのがノルウェー代表で、合計メダル数は84個。平昌2018でオランダ代表は全42個のメダルのうち16個を持ち帰った。
オランダ出身の**イレイン・ブスト**はこのうち11個のメダルに貢献。オリンピック史上、最も多くのメダルを獲得したスピードスケーターで、最も多くのメダルを獲得している現役の冬季オリンピックアスリートでもある。ブストは冬季オリンピック個人種目で4大会において金メダルに輝いた最初の選手で、北京2022で再び優勝すれば5大会で金メダルを獲得する選手となる。夏冬のオリンピックを通じて、これを成し遂げたアスリートはまだ存在しない。
「レースが大きく重要になればなるほど、自分の力を最大限に発揮できるようになります。重要な大会で滑るのは楽しいし、怖いと感じたことはありません。本当に好きなんです」
- イレイン・ブスト