東京マラソン2024は、3月3日(日)9時10分、号砲が鳴り東京都庁前をスタートする。
パリ2024オリンピックマラソン日本男子代表枠の最後の1枠をかけたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)ファイナルチャレンジの第3戦(最終戦)となる今大会。その1枠を狙う選手は、MGCファイナルチャレンジ設定記録2時間5分50秒を突破して日本人最上位で東京駅前・行幸通りのフィニッシュラインを超えなければならない。パリ2024代表枠の獲得を目指す選手にとってはラストチャンスとなる。
昨年12月のMGCファイナルチャレンジ第1戦福岡国際マラソン2023、今年2月に行われた第2戦大阪マラソン2024では、設定記録を突破し代表枠に手が届いた選手は出なかった。もし、今大会で該当者が出なかった場合、昨年10月のMGCで3位の大迫傑(すぐる)が2大会連続で日本代表に内定する。
一方、日本陸上競技連盟のジャパンマラソンチャンピオンシップ(JMC)シリーズⅢの主要レースのひとつである今大会では、ポイント獲得を目指す選手も上位を狙う。また、2025年の世界陸上東京大会の代表争いのポイントにも関わるため、今大会はトップ選手にとって重要な位置づけにある。
以下、注目の男子選手を紹介しよう。
注目の日本男子選手
鈴木健吾:夫婦そろってパリの夢の舞台へ
自己ベスト:2時間4分56秒(2021年びわ湖マラソン)*日本記録
日本人唯一の4分台の自己ベストを持つ鈴木健吾は、2022年以来の出場となる。この時は、2時間5分28秒(日本人1位)の好記録をマークし4位入賞。2年ぶりとなる今大会でも活躍が期待される。
東京2020では代表になれず悔しい思いをした鈴木だが、パリ2024代表枠獲得を目指した昨年10月のMGCでは12キロ手前で棄権している。2022年の世界陸上(アメリカ合衆国オレゴン州)をコロナウイルス感染のため欠場して以来、体調不良や故障が続き不遇のマラソン日本最速ランナーの鈴木だが、そこで培った精神面での強さと、本来の持ち味であるスピードを生かし、今大会に臨みたいところだ。そして、MGCで2位に入って先に女子日本代表が内定している妻の一山麻緒とともにパリ2024こそは2人で出場を果たしたいところだろう。
山下一貴:世界陸上、MGCの悔しさをばねに戦う
自己ベスト:2時間5分51秒(2023年東京マラソン)*日本人歴代3位
山下一貴(いちたか)は、2023年東京マラソンで日本人歴代3位となる2時間05分51秒を記録している。2023年8月の世界陸上ブダペスト大会に出場をしたが、脚のけいれんに見舞われ12位に終わった。その後、10月のMGCに出場したが32位に終わっている。
今大会ではファイナルチャレンジ設定記録(2時間5分50秒)とほぼ同タイムとなる自己ベストを更新して最上位を目指し、パリ2024代表枠の最後の1枠を狙う。フィニッシュでの「イチタカスマイル」に期待したい。
其田健也:世界の舞台へもう一度
自己ベスト:2時間5分59秒(2023年東京マラソン)*日本人歴代4位
山下と同じく2023年世界陸上に出場した其田(そのた)健也。同世界陸上では35位に終わっている。また、昨年10月のMGCには出場したが途中棄権している。
2023年東京マラソンでは、日本人歴代4位となる2時間5分59秒で自己ベストを記録しフィニッシュし山下に次いで日本人2位となった。2時間6分を切って走った日本人はこれまでに自身を含め4人しかいない。しかし、ファイナルチャレンジ設定記録の2時間5分50秒を切った日本人選手は2人。その3人目となるか。世界陸上に続けて、もう一度世界の舞台を目指す。
細谷恭平:3度目のチャレンジにかける
自己ベスト:2時間6分35秒(2021年びわ湖マラソン)
昨年12月のMGCファイナルチャレンジ第2戦、福岡国際マラソンでは日本人最上位の総合4位となったが、タイム(2時間7分23秒)が設定記録を突破できず、パリ2024の代表枠を逃している。また10月のMGCでは転倒して途中棄権となり悔しい思いをした細谷恭平。パリ代表枠獲得を目指して3度目のチャレンジにかける。
その他、山下、其田とともに、世界陸上ブダペスト大会に出場した西山和弥(かずや/自己ベスト2時間6分45秒)、昨年9月に開催されたアジア競技大会・杭州出場の池田耀平(自己ベスト2時間6分53秒)と定方(さだかた)俊樹(自己ベスト2時間7分5秒)ら日本人選手にも注目だ。また、東京2020代表の服部勇馬(自己ベスト2時間7分27秒)も出場する予定となっている。
注目の海外男子選手
海外からの招待選手には、オリンピック2大会連続金メダリスト、2023年ベルリンマラソンの覇者エリウド・キプチョゲ(ケニア/自己ベスト2時間1分9秒)のほか、2023年東京マラソン初優勝のチャル・デソ(エチオピア/優勝タイム2時間5分22秒)、同年ベルリンマラソン2位のヴィンセント・キプケモイ・ゲティッチ(ケニア/自己ベスト2時間3分13秒)、同年ロッテルダムマラソン2位のティモシー・キプラガト(ケニア/自己ベスト2時間3分50秒)ら強豪選手が名を連ねている。
キプチョゲは2022年東京マラソンで2時間2分40秒の大会記録をマークし優勝しているが、今大会でも彼を先頭に自己ベストが3分台のゲティッチ、キプラガトらがトップ集団を形成する速いペースでのレース展開が予想される。パリ代表枠を狙う日本人選手は、果たしてその速い展開についていき勢いに乗って設定記録の突破を目指すか、第2集団につけて設定記録ペースを刻みつつ日本人選手同士の駆け引きを試みるか、パリ2024男子マラソン日本代表枠をめぐる最終戦での各選手の戦略が見どころと言えるだろう。