溌剌とした笑顔と、自信を感じさせる安定感のある滑り。スケートボーダーの四十住(よそずみ)さくらは王者の貫禄を漂わせている。
初めて出場した2018年の世界選手権・南京大会で金メダルを獲得し、サンパウロで行われた翌年の世界選手権では準優勝、そして2021年の東京2020オリンピックで優勝するなど、21歳の四十住は女子パーク界で怖いもの知らずとも言える数年を過ごしてきた。
だが、2月に行われたオリンピック予選1戦目のパーク世界選手権では、「追う立場」を経験。準決勝で自分が思ったほどのスコアが得られず、決勝進出が危ぶまれたのである。
パリ2024オリンピックの開催が1年2ヶ月に迫る中、スケートボード・パーク種目の出場権獲得のためのランキングポイントをかけたオリンピック予選2戦目が、アルゼンチン北西部に位置するサンフアンで行われる。
大会を前に、四十住さくらの戦いに迫りつつ、Olympics.comのインタビューで本人が語ったパリ2024オリンピックの目標と「夢」をたどってみたい。
「追う立場」に立たされた金メダリスト
2023年2月にアラブ首長国連邦のシャルジャで行われた世界選手権で、四十住は準々決勝9位通過となり、16人で競われる準決勝では2組中1組目8番手に登場した。
通常スケートボードの大会では、準々決勝の通過順位の下から順番に準決勝の滑走順が1組目、2組目へと振り分けられる。2組目には実力ある選手たちが控えていることから、1組目ではできるだけ高い得点を確保して2組目の選手にプレッシャーを与えつつ、自身の決勝進出を確かにしておきたいというのが選手の心理だろう。
ところが、オリンピック王者の四十住はこの準決勝で、自分が思ったほどのスコアが得られず、2組目の8人を残した時点で2位となったのである。決勝に進めるのはわずか8人。決勝常連の四十住が準決勝で姿を消すのか…。そんな不安は観客のみならず、本人を襲った。
2組目の選手たちが滑走したそれからの1時間、四十住は不安な思いで過ごしたものの、2組目が終了した時点で全体6位で決勝通過が決定。2組目終了直後に、親しい友人で、同じく決勝進出を果たしたスカイ・ブラウン(英国)と抱き合って涙を流したことからも、四十住が感じていたプレッシャーを想像できる。
「セミ(ファイナル)でこんな気分になるのが初めて…」と決勝進出が確定した後に語った四十住は、「これからこの経験を生かせるように、(次も)頑張ります」と前を向いた。
「追いかけられるのを逃げるよりは、追いかける方が楽」と気持ちを切り替えて臨んだ決勝だったが、全3本のランうち2本目を終えた時点の順位は8人中8位。しかし、四十住はここで勝負強さを発揮する。
もう後がなくなった最後のランで85.15点を叩き出すと全体の3位に躍り出て、そのまま全員のランが終了。ブラウン、開心那(ひらき・ここな)に続く銅メダルを確定させたのだった。
パリ2024での2連覇に向けて
四十住はひとつひとつの大会の先に、パリ2024オリンピックを見据える。
Olympics.comのインタビューで、パリ2024に向けた準備は着実に進んでいることを語った四十住は、「1個1個の技のクオリティーを上げること。(例えば)エアの高さを上げること(など)、クオリティーを上げることをメインで頑張ってます」と語気を強めた。
目指すところはパリ2024での2連覇。
「東京オリンピックで金メダルを取れて、ちょっと気持ち的には楽です。2連覇できるように自分の最高の滑りをみんなに披露できるように頑張ります」
四十住の視線の先には、パリ2024の次のロサンゼルス2028もある。だがそれは自分ひとりのことではなく、若手選手に向けられる。
現在、自分のトレーニングに励む傍ら、数名の若きスケーターを指導する。その中には6年にわたって指導を続けている生徒もおり、「(パリオリンピックの)次のロスに一緒に行けるように頑張ります」を夢を膨らませる。
「教えるときは、技ひとつひとつで、力を入れる場所とか目線とか、全部言うんですけど、口にするからこそ自分もわかることもある」と、自身のパフォーマンスにも良い影響を及ぼしていることを実感。
「(教えている子たちは)まだ子どもだから恐怖心もないし、休憩もしないので、同じ時間滑ったら自分も勝手にトレーニングされる。同じ時間、同じ本数、休憩なし。それが一番役に立ってるかなって思います」と笑顔を見せた。
そして将来の夢はそうした若手選手たちの力になること。
「私と同じように夢を持った子どもたちをサポートしていけたらいいなって思ってます」と目を輝かせた。