「これがスケートボードです」
パリ2024オリンピック予選の最初の大会となった2023年2月のスケートボード・パーク世界選手権。準々決勝で敗退した高校生スケーターの永原悠路(ゆうろ)が晴れやかな表情でこの言葉を残してから3ヶ月が過ぎ、5月12日〜14日の日程でエクストリームスポーツの大会「エックスゲームズ」が2度目の日本開催を迎える。そして翌週の5月21日にはアルゼンチンでオリンピック予選を兼ねた「WSTサンフアン・パーク2023」が始まる。
東京2020オリンピックで初めて実施されたスケートボード競技では、ストリート種目とパーク種目が男女それぞれで実施され、男子パークを除いてすべての種目で日本勢が表彰台に立つ活躍を見せた。世界トップレベルにまだ到達していないその男子パークにおいて、パリオリンピックに向けて挑戦を続けるのが、世界を沸かせるスケーター・永原悠路である。
スケートパークに響いた「ユウロ」コール
永原は2005年6月生まれの17歳。昨年、初開催となったXゲームズ千葉では初出場で日本勢トップの4位に入賞すると、昨年11月の日本選手権で優勝、今年4月の日本オープンでは大会2連覇を飾った。
オリンピック世界スケートボードランキングでは現在、日本勢トップの23位。世界選手権の準々決勝では、大舞台で挑戦する人は少ないという「バックサイドフリップ・リップスライド」を決め、スケートパークを興奮の渦に包んだ。
その予兆のようなものは、公式練習の時点ですでに見ることができた。練習中に永原が難易度の高い技を決めると、周りのスケーターたちからは「ユウロ! ユウロ! ユウロ!」という声援が上がっていたのである。
「日本だけではなく、いろいろな国の人が応援してくれる。嬉しいですね」と、永原は笑みを浮かべる。
スケートボード競技において、こうしたシーンは少なくない。だが「ユウロ」コールの裏には、スケートボード文化が生みだす空気感の他に、永原の努力もある。
ストリートに比べると大会数やイベント数が限られるパークで、永原は海外のスケーターたちとどんな風につながっていったのか。そんな質問を投げかけてみると、永原からはこんな答えが返ってきた。
「いろんな人と関わって、場慣れという意味でもいろんな人とつながって、言葉がわからなくても一生懸命話すという努力はしています。それがこういう状態につながったかなと思います。小さい頃からお父さんに、『どんどん友達作っていけ』って言われていて、頑張ってやってきたことなので」
「中学1年生のときから海外の大会に出はじめたんですけど、なかなか友達と言えるくらい仲を深めることはできなかった。だけど、今回これだけ声援をもらえて、すごいパワーになります」と永原は続けた。
「(世界選手権の結果について)後悔はないとは言えないけど、得点・順位関係なく、ああやって会場を沸かせられたことが一番嬉しいですね」
「これがスケートボードです」
「順位や得点は人がジャッジするものなので、それだけにこだわらないで、スケートボードというものを見せられたことにすごい嬉しさを感じています」
「とはいっても、やっぱり順位は残したいので、次はしっかり順位を残せるように頑張ります」
挑戦心をのぞかせる永原の視線の先には、パリ2024オリンピックがある。5月上旬には次のオリンピック予選の地、アルゼンチンに遠征したことを自身のソーシャルメディアで投稿しており、次の大会でもスケートボードの魅力を伝えるランを見せてくれることを予感させる。
永原はまずは自身2度目のエックスゲームズ(5月12日~14日)でそのパフォーマンスを日本のファンの前で披露し、その後、アルゼンチンに向かい、オリンピック予選を兼ねて行われる「WSTサンフアン・パーク2023」(5月21日~28日)に出場する。永原の挑戦に注目したい。