東京2020オリンピックを通じて初めてスケートボードの面白さに触れた人も多いだろう。
中でもお椀をいくつも組み合わせたようなコースで行われるパーク種目や、 U字型のコースで行われるバート種目(オリンピックでは採用されていない)では、底から傾斜を勢いよく駆け上がって空中に飛び出して繰り出される「エア・トリック(空中技)」が醍醐味のひとつともいえ、スピード、高さ、スタイルが組み合わさったダイナミックな技の数々で観客を魅了する。
その一方で、会場を盛り上げるMCの技解説に耳を傾けてみると、「ジャパンエアー」「マドンナ」「ジュードー」などといった以外なワードが飛び出してくる。それらは一体何なのか?
5月12日〜14日に迫るXゲームズ千葉2023や、5月21日〜28日にパリ2024オリンピック予選を兼ねて行われるWSTサンフアン・パーク2023(アルゼンチン・サンフアン)を前に、ユニークな名前を持つスケートボードのトリックを紹介しよう!
ジャパンエア
スケートボード界のレジェンド、トニー・ホークがその名を確立したことで知られる「ジャパンエア」。
ボードをつかんで体を一瞬反らせているように見えるこのトリックは、ホークがある写真を目にしたことからすべてが始まった。ホークはそこに写っていた、これまで見たこともない形のエアをすぐに真似し、その写真の上の方に書かれていた「Japan」の文字をもとに「ジャパンエア」と名付けた。
雑誌「Transworld Skateboarding」のインタビューでホークはそのことを語っているが、同雑誌は後に、その技をやっていたのは日本とフランスの血を引く日本生まれのフィリップ・マントンさんで、その写真が撮影されたのは日本という事実にたどり着いている。
ホークはまもなく行われるXゲームズジャパンに出場予定。ジャパンエアを披露するのだろうか? 乞うご期待!
ちなみに、日本人の母を持つスカイ・ブラウン(英国)もジャパンエアを「好きなトリックのひとつ」として自身のソーシャルメディアに投稿している。
マドンナ
大会でも多くの人が取り入れているので、耳にするチャンスが多いのがこのマドンナ。前足側のボードの先端つかんで前方の足を後ろ側に蹴り出す技で、トニー・ホークが生み出したことで知られている。トリックが誕生した当時、ポップ界の歌姫マドンナがアルバムを発売したばかりでマドンナの名前がそのままつけられたという。
プロスケーターのアンディ・マクドナルドは、数年前に自身のソーシャルメディアに動画を投稿し、「この技は1980年代に生まれたけど、もし今、できたものだとしたら、何と呼ばれたかな?」とコメントした。
ショーン・ペン
マドンナをバックサイドに回りながら行う技がショーン・ペン。このトリックが作られた当時、マドンナとショーン・ペンが夫婦だったことからその名が付けられたというが、若いスケーターたちにとっては、ふたりが夫婦だったことの方が新鮮な情報かも!?
ジュードーエア
空中で板の先の方をつかみ、前方の足を前に蹴るエアトリックがジュードー(柔道)エア。武術の蹴るイメージからその名が付けられたといわれている。
スケートボードに武術を組み合わせる発想の自由さがスケートボードの無限の可能性を感じさせる!?
サランラップ
前方の足で板の前方をくるりを巻き込むような動きをするのがサランラップ。くるりと巻くことからサランラップと呼ばれ、プロスケーターのロドニー・ミューレンが生み出した。
2023年3月にオリンピック予選を兼ねて行われたパーク世界選手権で、4位に入賞した草木ひなのがルーティーンの中に組み入れている。動きが速いのでわかりづらいが、解説者の「サランラップ」という言葉を頼りに草木の動画投稿をチェック!