男子バレーボールネーションズリーグ2023決勝ラウンド:龍神NIPPON、ベスト4を目指しスロベニアとの準々決勝へ

決勝ラウンドに進出する日本男子代表「龍神NIPPON」はスロベニア代表チームと悲願のベスト4をかけて対戦する。この1戦の見どころを紹介しよう。

1 執筆者 Hirotaka Hikoi
VNL2023決勝ラウンドに臨む龍神NIPPON
(World Volleyball)

6月6日から開催されている国際バレーボール連盟(FIVB)男子バレーボールネーションズリーグ(VNL)は、3週間の予選ラウンドを経て、いよいよ7月19日(水)から上位8チームによる決勝ラウンド(ポーランド・グダニスク)に突入し、ここで男子バレーボール世界王者が決まる。日本男子代表チーム「龍神NIPPON」は、これまで10勝2敗の成績を残し、予選ラウンド2位で決勝ラウンドを迎える。

日本代表は、7月20日(現地時間)に、予選ラウンド8勝4敗で7位のスロベニア代表と準々決勝で対戦する。両代表は予選ラウンドでいつも同じグループに属していたものの、この準々決勝が今大会初顔合わせとなる。

2021年のVNLイタリア大会で4位に入っているスロベニア代表。日本代表は予選ラウンドで対戦し、0-3でストレート負けを喫している。2022年のフランス大会では、スロベニア代表と予選ラウンドで戦い、この時は3-1で日本代表が勝利している。

今大会のスロベニア代表は、日本代表同様、予選ラウンドでイタリア、ポーランドに敗北しており、現在、世界ランキング6位(7月14日現在)の日本と同8位のスロベニアの実力は拮抗していると言えるかもしれない。

前回フランス大会では、5位に甘んじ悔しい思いをした龍神NIPPON。悲願のベスト4に入るためには何としてもライバル、スロベニア代表チームに勝利し、準々決勝を突破しなければならない。

ここで、まずは龍神NIPPONのこれまでの戦いを振り返ってみたい。

開幕から10連勝、破竹の勢いで勝ち進んだ龍神NIPPON

第1週名古屋大会から始まった日本男子代表チームの今年のVNL。イラン、セルビア、ブルガリア、フランスの各代表チームとの4戦にまずは臨んだ。日本代表は、世界ランキングが下位のイラン、セルビア、ブルガリアに快勝し、VNL開幕後の3連戦で弾みをつけた。

4戦目はVNL前回覇者のフランス代表との1戦。東京2020金メダルの強豪国との戦いに注目が集まった。日本代表は、キャプテンの石川祐希、アウトサイドヒッターの髙橋藍(らん)、オポジットの西田有志(ゆうじ)、宮浦健人らの活躍で、フランス代表に7年ぶりの白星を挙げ、4戦全勝で自国開催の第1週を締めくくった。

第2週はフランスに舞台を移し、カナダ、キューバ、ブラジル、アルゼンチンの各代表チームとの4戦。世界ランキングが下位のカナダとキューバにまずは連勝。

しかし、ここでは世界ランキング2位のブラジル、同8位のアルゼンチンが待ち受ける。特にブラジル代表との1戦は、30年という長い間、公式戦での勝利がなかったという日本代表にとっては大きな山場となった。

「ブラジルに勝ちたい」とキャプテンの石川は気持ちを込めた。そして、チーム最多の27得点を挙げ日本代表を30年ぶりの勝利に導いた。

続くアルゼンチン代表戦では、32得点を挙げた髙橋、ブラジル戦から2試合連続でスタートメンバーとなったオポジットの宮浦、司令塔のセッター関田誠大、ミドルブロッカー小野寺太志らが活躍して8勝目を挙げた。「チーム全員で戦うバレー」という龍神NIPPONのスタイルが完全に確立されたことを確認した1戦となったと言えよう。

そして、迎えた予選ラウンド最終週のフィリピン大会。地元の大きな応援に励まされる中、龍神NIPPONは、中華人民共和国、オランダ、イタリア、ポーランドの各代表チームと対戦した。高さのある中華人民共和国とオランダの両代表チームには苦戦を強いられたが2勝を挙げ、開幕から10連勝の龍神NIPPONはさらに世界から注目された。

すでに決勝ラウンド進出を決めていた日本代表は、世界ランキング4位のイタリア、同1位のポーランドの強豪国と予選ラウンド最終の2戦を戦った。決勝ラウンドに向けて、ベストメンバーをそろえギアを上げてくる強豪を相手に、日本代表はここで連敗を喫した。この時点で、予選ラウンド2位の結果で日本代表は決勝ラウンドに駒を進めることになった。

フィリピン大会の後、キャプテン石川は「(これまで)チーム全員の力が合わさって勝利につながった。(決勝ラウンドでは)もっと厳しい状況が続くと思う。個々の力とチーム力を合わせて臨みたい」と話した。

予選ラウンドでは、ベストスコアラー(205得点)とベストアタッカーで3位(177得点)の石川、ベストセッター4位の関田、ベストディガー3位のリベロ山本智大(ともひろ)と活躍が目立った。ベストレシーバーでも石川は3位。髙橋が7位、山本が8位に入っており守備力の高さも際立っていた。

しかしながら、予選ラウンドでの強豪国は毎試合ベストメンバーで戦っていたわけではなく、これらのランキングはあくまで予選ラウンドでの出場試合数に関連している場合も多い。逆に、ほぼ全試合ベストメンバーで活躍してきた日本代表のこれまでに蓄積された肉体的、精神的な疲労を心配する声もある。強豪国がベストの体制で臨む決勝ラウンドこそ本当の戦いの始まりと言える。

日本代表には、決勝ラウンドが開催されるポーランド(グダニスク)に発つ前に、まずは心身ともに十分にリフレッシュされ、万全の体制で臨むことが期待される。

「(決勝ラウンドで)まずは1勝する。そしてベスト4に入ることが目標。簡単なことではないが、トライする気持ちをもう一度、日本に帰って作ってから臨みたい」と、フィリピン大会最終ポーランド戦の後、キャプテン石川は語っている。

悲願のベスト4なるか。龍神NIPPONとスロベニア代表チームとの1戦に注目だ。

決勝ラウンド準々決勝、日本男子が対戦するスロベニアはどんなチーム?

中央ヨーロッパに位置するスロベニアは、ヨーロッパのスポーツ王国のひとつ。隣国にはイタリアがあり、自ずとバレーボールも盛んだ。

予選ラウンド8勝4敗で7位のスロベニア代表チームと日本代表の過去の対戦成績は1勝1敗。世界ランキング8位(7月14日現在)のスロベニア代表に対し同6位の日本代表。実力がほぼ拮抗していると言えるだろう。

2021年イタリア大会で日本代表は予選ラウンドでスロベニア代表に敗北している。この年、スロベニア代表はベスト4。2022年フランス大会では、同じく予選ラウンドで戦い日本代表が勝利。スロベニア代表はこの両大会で活躍したベテランメンバーが、今大会でも最前線で気を吐いている。

2015年欧州リーグでスロベニア代表の優勝に貢献した34歳のアウトサイドヒッター、ティネ・ウルナウトは、予選ラウンドを全て戦い、サーブ力を強みとしてベストスコアラー9位に。石川とはミラノでチームを共にしている。

最年長37歳のミドルブロッカー、アレン・パジェックは203cmの高さでネット前に立ちはだかる。

2015年欧州リーグの優勝メンバー、2021年欧州選手権ベストセッター、34歳のグレゴール・ロプレトは192cmの長身セッター。予選ラウンドベストセッター6位で関田の背後にいる。

リベロのヤニ・コバチッチは、予選ラウンドベストディガーとベストレシーバー共に1位。スロベニアの守備の要として2021年VNLから活躍する。

その他、31歳のアウトサイドヒッターのクレメン・チェブリに加え、21歳のアウトサイドヒッターのロク・モジッチや27歳のミドルブロッカーのヤン・コザメリニクら若手らも2021年大会からVNLでのスロベニア代表の中心的存在だ。

このような経験豊富なヨーロッパの強豪を相手に迎える準々決勝。龍神NIPPONはどのような戦いを見せてくれるのだろうか。7月20日17時(日本時間21日0時)の試合開始のホイッスルが待たれる。

男子バレーボールネーションズリーグ2023決勝ラウンド日程

*時間は全て現地時間(日本時間は+7時間)

準々決勝

7月19日(水)

17:00~ アメリカ合衆国 vs フランス

20:00~ イタリア vs アルゼンチン

7月20日(木)

17:00~ 日本 vs スロベニア

20:00~ ポーランド vs ブラジル

準決勝

7月22日(土)

17:00~ アメリカ合衆国またはフランス vs イタリアまたはアルゼンチン

20:00~ 日本またはスロベニア vs ポーランドまたはブラジル

決勝・3位決定戦

7月23日(日)

17:00~ 3位決定戦

20:00~ 決勝

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