大会中止や派遣取りやめなど、調整が難しかった昨シーズンを経て、世界最高のフィギュアスケーターたちは**北京2022**冬季オリンピックが行われる今シーズン(2021/2022)に、最高の状態で臨みたいと考えていることだろう。
選手らの目標? それは北京オリンピックでの表彰台。しかし、それ以前にも各大会が行われる。
9、10月のISU(国際スケート連盟)チャレンジャーシリーズではすでに今季を予想させる面白い展開が繰り広げられている。オリンピックの出場枠がかかったネーベルホルン杯では16歳のアリサ・リュウ(米国)ら若手選手がシニアデビューを果たし、世界選手権を4度制しているアイスダンサーの**ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン**組(フランス)らベテラン選手はオリンピックシーズンのプログラムを披露した。
ISUグランプリシリーズの初戦となるスケートアメリカ(10月22-24日)を控え、Olympics.comでは、北京2022に向けて、各種目の有力選手を紹介する。グランプリシリーズは10月から11月にかけて開催され、各種目の上位6名が12月中旬に大阪で開催されるファイナル(最終戦)に出場する。
オリンピック派遣選手の発表のタイミングは各国の運営組織によって異なるが、通常は国内選手権の終了後、12月中旬から1月中旬にかけて発表される。
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それでは、北京オリンピックシーズンのフィギュアスケートをより楽しむための情報をチェック!
女子シングル、10代の戦い?
女子シングルで存在感を発揮しているのがロシア出身の3選手。世界ランキングを見てみると、1位が**アンナ・シェルバコワ(17)、2位がアレクサンドラ・トゥルソワ(17)、4位がエリザベータ・トゥクタミシェワ**(24)で、この3選手が2021年の世界選手権で表彰台を独占しており、今シーズンも引き続き活躍することが予想される。
しかしここ数年、他のロシア出身選手らも世界トップの実力をつけているため、世界選手権メダリスト3人のうち、北京大会への出場を確約された選手はいない。世界選手権の出場を逃した**アリョーナ・コストルナヤ(18)は、同じく10代のカミラ・ワリエワ**(15)、マイア・フロミフ(15)、ダリア・ウサチョワ(15)とともに注目の選手。
オリンピック出場をかけてこの7人のスケーターを中心に激しい代表戦いを繰り広げることになるだろう。
では、北京オリンピックでROCの選手らに挑戦できるスケーターは誰か? その役割を担うのは、紀平梨花だ。過去2シーズンで素晴らしい演技を見せており、2021年9月にはブライアン・オーサーコーチの下で練習を行うことを発表。右足首の怪我を理由に予定していたグランプリシリーズ第2戦のスケートカナダを欠場する決定を下したが、平昌2018オリンピックを経験している**坂本花織や宮原知子**など、強力な日本勢を牽引することだろう。
冒頭で触れた才能あふれる米国出身のリュウは、シニアの国際大会において最初の2戦で優勝を果たし、絶好調と言える。4回転ジャンプをプログラムに組み込むロシア選手らや紀平に対抗するには、トリプルアクセルの成功率を高めることが必須。米国勢としては**カレン・チェンとブレディ・テネル、マライア・ベル**も話題となるだろう。
韓国出身で17歳の**ユ・ヨン**は、2020年のユースオリンピックで獲得した金メダルを自信にさらなる高みを目指すが、昨シーズン以降、安定性を欠いている。
他にも、2021年の世界選手権で5位に入賞したベルギー出身のベテラン選手**ルナ・ヘンドリックスや、今シーズンすでに力強い滑りを見せているジョージア出身のアナスタシヤ・グバノワ**にも注目したい。
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男子シングル、羽生やチャンを止められるのは?
男子シングルには世界各地からトップ選手が集まるが、中でも2選手の存在が際立っている。ひとりめが、オリンピック2連覇中の**羽生結弦。そしてもうひとりが、世界選手権を3度制し、現在の世界王者でもある米国のネイサン・チェン**。
氷上ではライバル関係にある2人だが、リンクの外では友人。技術面においてフィギュアスケート界をより高みへと押し上げたとして、互いに敬意を示す。12月に27歳になる羽生は、3大会連続の金メダル獲得を目指す。実現すれば、1920年から1928年にかけてこの偉業を達成した**ギリス・グラフストローム**以来となる。一方のチェンは、平昌2018のショートプログラムでのミスが響いて5位で大会を終えたことから、北京での狙いは表彰台の頂点。
女子と同様、彼らのチームメイトも興味深い。日本勢は、平昌2018で銀メダルを獲得した**宇野昌磨や、昨シーズンの世界選手権でチェンに次いで2位となった18歳の鍵山優真**がいる。鍵山はユースオリンピック・ローザンヌ2020で金メダルを獲得した選手だ。
一方、22歳のチェンは、5連覇を目標に第1戦スケートアメリカに出場し、翌週には第2戦スケートカナダに出場する予定。米国代表に選ばれる可能性のある他の選手としては、2019年の世界選手権で3位となった**ヴィンセント・ジョウ**がいる。2021年の世界選手権でフリー出場を逃すという悔しい経験をしたが、ネーベルホルン杯では米国のオリンピック3枠確保に貢献した。
また、米国チームの話題選手としては、ソチ2014に出場したものの平昌2018への出場を果たせなかった**ジェイソン・ブラウン**が、オリンピック復活への意欲を見せている。
今シーズンの注目すべきトップ選手として、他にもロシアのスケーター、ミハイル・コリヤダ、カナダのキーガン・メッシング、フランスの**ケヴィン・エイモズ**が挙げられるが、エイモズは夏に故障し、オリンピックシーズンの準備が遅れている。
ペアはスイ&ハン組、ミシナ&ガリアモフ
中国の**スイ・ウェンジン&ハン・ツォン**組は、中国が得意とするペア種目で地元に錦を飾ることが期待される。実際、オリンピック開催国・中国でのペア種目の盛り上がりを予想し、全4種目の最後に競技が行われるようスケジュールが変更された。スイ&ハン組は平昌2018で銀メダルを獲得し、2017年と2019年の世界選手権を制している。
しかし、今シーズンはスイ、ハン両選手の怪我が心配され、今年初めの世界選手権では本領を発揮できず2位。ロシア・フィギュアスケート連盟の有力ペア、アレクサンドラ・ボイコワ&ドミトリー・コズロフスキー組を差し置いて、チームメイトのアナスタシア・ミシナ&アレクサンドル・ガリアモフ組がサプライズ優勝した。
ミシナ&ガリアモフ組は10月初めに開催されたチャレンジャーシリーズのフィンランディア杯で優勝し、混戦が予想されるROCの代表権(3枠)争いをリードする。そこには、ベテランのエフゲーニヤ・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ組、ダリア・パブリュチェンコ&デニス・ホディキン組も含まれている。
平昌2018で銅メダルを獲得したカナダの**エリック・ラドフォードは、元パートナーのメーガン・デュアメルの引退により、新しくヴァネッサ・ジェームズとペアを組む。ジェームズのパートナーだったモルガン・シプレ**も引退した。
この他、中国のペン・チェン&ジン・ヤン組や、昨シーズンから新たに加わった米国のブランドン・フレイジャー&アレクサ・クニエリム組、三浦璃来&木原龍一組が、今シーズンのペア種目を盛り上げるだろう。
アイスダンス、フランスのスターが復活
フランスのアイスダンス界のスター、パパダキス&シゼロン組は、2020年1月以降、国際舞台で活動していなかったが、フィンランディア杯で金メダルを獲得して復帰。彼らは平昌2018で銀メダルを獲得しているほか、世界選手権を4度制している。12月のグランプリファイナルでは、現在の世界チャンピオンであるロシアの**ヴィクトリア・シニツィナ&ニキータ・カツァラポフ**組との直接対決が見られるだろう。
この2組が今シーズンのアイスダンスを牽引する一方、米国では、マディソン・ハベル&ザカリー・ドノヒュー組と**マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ**組が、グランプリシリーズの第1戦スケートアメリカで競い合う。
また、カナダのパイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組をはじめ、ロシアのアレクサンドラ・ステパノワ&イワン・ブキン組、イタリアのシャルレーヌ・ギニャール&マルコ・ファブリ組、英国のライラ・フィアー&ルイス・ギブソン組などにも注目だ。
2021/2022 ISUフィギュアスケートカレンダー
ISUグランプリ
- 第1戦:スケートアメリカ 10月22-24日 @ラスベガス(米国)
- 第2戦:スケートカナダ 10月29-31日 @バンクーバー(カナダ)
- 第3戦:イタリアグランプリ 11月5-7日 @トリノ(イタリア)
- 第4戦:NHK杯 11月12-14日 @東京
- 第5戦:フランス国際 11月19-21日 @グルノーブル(フランス)
- 第6戦:ロシア杯 11月6-28日 @ソチ(ロシア)
- 最終戦:ファイナル 12月9-12日 @大阪
ISUチャンレンジャーシリーズ
- ロンバルディア杯:9月10-12日 @ベルガモ(イタリア)
- オータムクラシック:9月16-18日@ピエールフォン(カナダ)
- ネーベルホルン杯 9月22-25日 @オーバーストドルフ(ドイツ)
- フィンランディア杯:10月7-10日 @エスポー(フィンランド)
- アジアンオープントロフィー:10月13-17日 @北京(中国)
- デニステンメモリアルチャレンジ:10月28-31日 @ヌルスルタン(カザフスタン)
- オーストリア杯:11月11-14日 @グラーツ(オーストリア)
- ワルシャワ杯:11月18-21日 @ワルシャワ(ポーランド)
- ゴールデンスピン:12月8-11日 @ザグレブ (クロアチア)
ISUチャンピオンシップ
- 欧州選手権:1月10-16日 @タリン(エストニア)
- 四大陸選手権:1月18-23日 @タリン(エストニア)
- 世界選手権:3月21-27日 @モンペリエ(フランス)