坂本花織: 勢いだけじゃない、4年をかけて成長したエース

2大会連続で冬季オリンピック日本代表に選ばれた坂本花織が、いよいよメダルを懸けて北京2022フィギュアスケート個人戦に出場する。日本のエースとなって、冬のオリンピックの銀盤へ戻ってきた彼女の原点、平昌2018までの旅路を振り返る

1 執筆者 Yukifumi Tanaka/田中幸文
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(2022 Getty Images)

**北京2022が開幕し、連日の熱戦が続くなか、フィギュアスケート団体戦で日本チームのラストを飾ったのは、前回の平昌2018に続いて2大会連続代表に選ばれた坂本花織**だ。

女子代表のなかで、唯一オリンピック出場経験のある坂本は、今やTEAM JAPANの中心的存在として世界から注目されている。

「(北京2022に向けて)今シーズン初めの方は本当に不安で、どうなっていくか自分でもわかりませんでした。ですが、試合を重ねていくうちにどんどん調子が上がっていき、全日本で『優勝して一発内定』という目標を達成することができ、2度目のオリンピックの切符をつかむことができました。2回目のオリンピックで、今回はすごく前回以上にわくわくしていて今から楽しみです。4年前からの成長を試合でしっかり魅せられるよう精いっぱい滑ります」

- 坂本花織(北京2022に向けたコメント・日本オリンピック委員会より)

そんな坂本の、オリンピック初出場となった平昌2018までの足跡を、いま一度振り返る。

シニアデビュー年の快挙

2016年リレハンメル冬季ユースオリンピックで日本代表を務めた坂本にとって、翌年の平昌オリンピックのシーズン(2017/2018)は、シニアデビューを果たした年であり、フィギュアスケートグランプリ(GP)シリーズに初参戦したシーズンでもあった。

2017年10月、モスクワで行なわれたGPシリーズ第1戦のロシア杯に初出場した坂本は、ショートプログラム(SP)4位、フリースケーティング(FS)5位、最終5位で終える。シニアのレベルの高さや国際大会の壁を痛感する、ほろ苦いスタートで始まった。しかしながら、坂本の快進撃は、ここから始まる。

それから1ヶ月後のアメリカ・レークプラシッドにて、坂本はGPシリーズ最終戦に出場する。自己ベスト69.40をマークして、SPを2位で終える。つづくFSでも、自己ベストの141.19(2位)を記録し、最終順位は合計得点210.59で銀メダルを獲得し、表彰台に立った。大会直後のインタビューで坂本は、「やってやろうという気持ちだけだった。初めてショートとフリーでパーフェクトの演技ができた。ここで決められたのは大きい」と語っている。

ジュニアからシニアへ、クラスアップしたばかりの彼女の言葉通り、平昌オリンピック候補として坂本への期待がここから一気に膨らんだ。

(2017 Getty Images)

17歳のシンデレラ

そして迎えた2017年末の全日本選手権。坂本は、SPでほぼノーミスの演技を披露し、73.59をマークして首位に立つ。驚きながらも、喜びが爆発する。

そして、坂本にとって、全日本初優勝だけでなく、平昌2018の切符をかけて臨んだ決勝のFS。大きなミスはなかったものの、冒頭の3回転フリップ - 3回転トーループで後半部分の回転不足などが響いてしまい、思うように点数が伸びず、4位(139.92)に沈む。それでも、合計得点213.51で2位となり、全日本の表彰台の上で初めてメダルを首にかけることができた。

そして、上り調子の勢いが評価され、当時17歳の坂本は、国内ライバルたちとの熾烈な代表権争いを勝ち抜いて、オリンピック初出場のチケットを手中に収めた。シンデレラ・ストーリーのようなオリンピック出場を実現した坂本だが、代表会見では、たくさんの祝福メッセージを受け取っていることに「おー、ヤバイこれって」と笑いを誘いながら、10代とは思えない責任感の強さや、他のアスリートへのリスペクトを覗かせた。

「選ばれた限りは、他の人が行きたかった中で自分が行くので責任がある。その責任の中で、しっかり自分の演技ができたらいいかなと思っています」

- 坂本花織

あれから、4年。

2021年の年の瀬、坂本は北京2022最終選考会となる全日本選手権に出場し、圧巻の演技でSPとFS共に1位となり、完全優勝を達成。目標にしていた北京2022への一発代表内定を実現させた。

「4年前は本当にたくさんのシニアのグランプリとか世界選手権とか、たくさん経験している人の中にジュニアあがりとして戦ってきて、本当に悔いのないように練習して、最後の最後まで、誰が出られるんだろうと待ってたのが4年前だったんですけど。今年は演技が終わって、キスクラで点数が出て、順位が出て、その時点でオリンピックが決まったっていうのは、だいぶ成長したなと自分でも思いました」

代表内定後の記者会見で、坂本は団体戦への目標も含めて、北京2022への思いを力強く語っている。

「今回の日本代表のメンバーで、団体戦をやって、本当にメダルが取れるチャンスがあると思っている。どの選手が選ばれるかまだわからないが、団体にしても個人にしても、やるべきことは本当に自分の精いっぱい滑りをするだけ。団体はTEAM JAPAN として一丸となって頑張って、個人は自分との戦いだと思ってます」

見届けよう。

勢いだけじゃない、この4年というオリンピックサイクルの時間をかけて、存分に成長したエースの姿を。

北京2022フィギュアスケート女子シングル・フリースケーティングは、2月17日19:00(北京時間18:00)よりはじまる。

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