柔道家ウルフ・アロン、パリオリンピックに向けた第一歩

パリ2024柔道男子100kg級でのオリンピック2連覇を掲げる柔道家のウルフ・アロンが、東京オリンピック以来、初めての国際舞台に戻ってくる。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
aaron wolf
(2021 Getty Images)

「柔道界の入り口的な存在に」

東京オリンピックの柔道100kg級の決勝で、延長戦の末に一本勝ちを決めたウルフ・アロンは、シドニー2000の**井上康生**・元日本代表監督以来の100kg級の日本人金メダリストとなった。

金メダル獲得以降、ウルフは「柔道界の顔」としてメディア出演を続けてきた。アメリカ合衆国出身の父親と日本人の母親を持つウルフが明かすその理由は、柔道人気を広めるため。

自身のYouTubeアカウントも定期的に更新し、登録ユーザー数は3万2000人超。そんな彼が、12月3日、4日に行われるグランドスラム東京で、東京2020オリンピック以来、初の国際試合に挑む。

パリ2024オリンピックへの第一歩として「必ず優勝しなければいけない大会」とテレビ東京の取材で語ったウルフの東京オリンピック以降の歩みと、今大会の男子100kg級に出場する主な選手を紹介したい。

「ここからも愚直に」

世界選手権(2017年)、体重無差別で争う全日本選手権(2019年)を制した後、ウルフはオリンピック(2021年)で金メダルを獲得。日本柔道8人目となる「柔道3冠」という偉業を成し遂げた。

大きな達成感に包まれた一方、ウルフは2021年の東京オリンピック以降、競技に対するモチベーションが上がらず、同年末までの練習が4回くらいだったことをNumberで語っている。

だが、柔道への思いは変わることなく、「柔道を広めるために」殺到するメディアやイベント出演依頼に対応した。

そして今年の初めには、2022年を「パリオリンピックに向けてしっかりと準備をできるような1年にしたい」と明言。「パリオリンピックでの2連覇」を目標に改めてトレーニングをスタートさせた。

ところが、オリンピック後、初の実戦として自身が定めた4月の全日本選抜体重別選手権は、右足関節前脛腓靱帯損傷により欠場。

続く8月のアジア選手権では、日本代表選手に選ばれていたものの、新型コロナウイルスの陽性反応により大会出場が叶わず、復帰は10月の講道館杯全日本柔道体重別選手権まで待つこととなった。

東京オリンピック金メダリストとして臨んだ国内での復帰戦の結果は3位。自身のYouTubeチャンネルでは、「不甲斐ない結果に終わったし、あまりいい試合内容ではなかった」と結果を受け止めた上で、「1年3ヶ月ぶりに畳に戻ってきて最後まで戦いきることができた」と胸を撫で下ろすと、「たくさんの収穫があった」「ここからも愚直にやっていくだけです」と気合いを入れ直した。

この成績を踏まえてメンバーに選出された今回のグランドスラム東京は、東京オリンピック後、初の国際試合。さらにはパリオリンピックに向けて重要な戦いとなる。「ここで優勝するかしないかで来年の世界選手権につながるかどうかが変わってくる」(テレビ東京より)と語るウルフ。東京2020、そして怒涛のメディア対応から1年。気持ちを新たにした「柔道界の顔」が、その先のパリオリンピックを見据え、日本のファンの前でグランドスラム東京大会の優勝を目指す。

グランドスラム東京、男子100kg級のエントリー選手

しばらく国際舞台から離れていたウルフは、現在世界ランキング21位で、グランドスラム東京の100kg級では第4シード。

一方、第1シードとなっているのはカナダの柔道家で日本育ちのレイズ・カヨル。29歳のカヨルは今年10月に行われた世界選手権100kg級の決勝で22歳のムザファルベク・トゥロボエフ(ウズベキスタン)に敗れ、銀メダルを獲得。同月のグランドスラム・アブダビ大会では決勝でスペインのニコロス・シェラザディシビリを破り、グランドスラム初優勝を飾った。

日本勢にとっては、このグランドスラム東京が2023年5月に行われる世界選手権(カタール・ドーハ)の日本代表選考において重要な位置を占めており、パリ2024の代表争いにおいても注目の大会となる。

日本からは、第3シードに飯田健太郎がいる。24歳の飯田は10代の頃から将来の活躍が期待されていたものの、近年は成績を伸ばせず、今年7月のグランドスラム・ハンガリー大会でようやく表彰台の頂点に立った。だが10月の世界選手権では2回戦敗退しており、その悔しさを晴らす舞台がグランドスラム東京となる。

また、10月の講道館杯全日本体重別選手権の100kg級の準決勝でウルフを破り、最終的に優勝した22歳の植岡虎太郎、同大会2位のグリーンカラニ海斗も出場を予定している。

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