その舞台となるのはローマの歴史的建造物コロッセオに隣接するスケートパーク。パリ2024オリンピック予選をかねて、スケートボードの国際競技団体「ワールドスケート」が主催する大会「WST: ローマ・ストリート2023」が実施される。
6月18日〜25日の日程で行われるWST: ローマ・ストリート2023を翌月に控えた5月末、織田夢海(ゆめか)はOlympics.comのインタビューに応じ、ローマ大会の目標やパリ2024オリンピックへの思いを語った。
オリンピック予選、SLS、エックスゲームズ…頭角を現した1年
2006年生まれの織田は現在16歳。この1年で数々の国際舞台に立ち、国内外のトップスケーターたちの前で大技を披露し、注目を集めてきた。
東京2020オリンピック前の2019年には、当時12、3歳ながらも世界最高峰のストリート・リーグ・スケートボード(SLS)に出場するなど、国際舞台でパフォーマンスを披露。しかし、東京2020代表争いでは惜しくも出場を逃す結果となり、その後は、国際大会から少し遠ざかってしまう。
「(東京)オリンピックに出られないと決まったときは、メンタルも弱くなりました。オリンピック後の1年は自分だけ(国際)大会に呼ばれなくて、その1年は『次こそはみんなと同じ立ち位置で、いろんな大会に呼ばれたらいいな』と思って、大技のメイク(成功)率だったり、完成度だったりを上げるために頑張って練習しました」
悔しい思いをバネに練習に励んだ織田は、パリ2024に向けた最初の予選となった昨年6月のローマ大会で3位に入賞。同7月には、東京2020金メダルの西矢椛や銅メダルの中山楓奈(ふうな)らが出場するSLS第1戦ジャクソンビル大会に、ワイルドカード枠として招待された。
「(昨年の)ローマで結果を残せて、そこからSLSだったり、エックスゲームズのカリフォルニアだったり、いろんな大会に呼ばれてとても充実した1年だったかなと思ってます」
織田はこの1年間を「充実した」という言葉で振り返るが、その言葉以上のことを成し遂げたと言っても過言ではない。
多くのストリート・スケーターにとって憧れの舞台として知られるSLS第1戦では、優勝したライッサ・レアウ(ブラジル)に0.2ポイント及ばずも、堂々の準優勝。のみならず、彼女が繰り出した「キックフリップ・フロント・フィーブル」は9.4点というSLS史上女子最高得点を記録したのである。
その翌週には、カリフォルニアへと向かい、エクストリーム・スポーツの祭典「エックスゲームズ」にも出場すると、ここで銅メダルを獲得した。
さらにSLSの第2、3戦そしてブラジルで行われた最終戦までシーズンを戦い抜き、一躍、日本女子スケートボード・ストリート界の「顔」のひとりへと成長した。
「優勝しか見ていない」
今回のローマ大会での目標を尋ねると、織田は「優勝しか見ていない」としっかり言葉にした。これはちょうど1年前にローマで彼女が口にした目標とまったく同じものである。
「自分はベストトリックよりもルーティーンの方が苦手なので、常に練習からつなげる意識だったりとか、技に入る前のスピードだったりとか、いろんなことを気をつけてやってます」
オリンピックのスケートボード・ストリートの競技は、「ラン」と「ベストトリック」で構成され、それぞれで高得点を出すことが求められる。ランは45秒間を使って技と技をつないでパーク内を自由に滑って採点されるもので、これが織田の言う「ルーティーン」にあたる。一方ベストトリックでは、1つの技(トリック)を披露して難易度や完成度などを競う。
各大会によって競技フォーマットは異なるが、前述のSLSで織田はこのベストトリックで女子史上最高得点を叩き出した。
技の引き出しを増やし、技の精度を上げていき、そしてそれらをどう繋いでいくか。スケーターたちは求められるのは練習の積み重ねと、大舞台で出し切る精神的な強さ。
織田はオリンピック世界ランキング3位で臨んだ1月の世界選手権では準決勝9位で決勝進出を逃し、世界ランキングは現在6位。日本勢では全体2位の西矢椛、3位の中山楓奈、5位の赤間凛音(りず)に続く、4番手に位置する。
「この前のUAEの大会で順位を抜かされちゃって、めっちゃ悔しかったし、自分の順位の下にも日本選手がいっぱいいるので、(順位を)気にしちゃう部分もたくさんあります」。そう語る一方で、自身の課題をしっかり認識する。
「自分はみんなよりも自信というか、メンタルがちょっと弱い方なので、そこが少し強くなれば上にはいける自信はあるかなと思ってます」
「ローマでは決勝まで行って、優勝しか見てないです」
「東京オリンピックには出られなくてすごい悔しい思いをしたので、パリには絶対に出たいなと思ってます」と力強く語った。