スケートボード・織田夢海インタビュー「勝つこと」と「楽しさ」と

パリ2024オリンピックを目標に掲げて躍進しているスケートボーダー織田夢海。パリに向けた最初の予選大会で活躍をみせた15歳の織田にとって、スケートボードとは…?

1 執筆者 Chiaki Nishimura
ODA Yumeka at Rome
(2022 Getty Images)

「東京オリンピックは出られなかったので、いろんな国際大会で上位に入ってポイントゲットして、パリに出られたらいいなと思っています」

7月にローマで行われたストリート・スケートボード・ローマ2022に先駆け、パリ2024オリンピックを見据えた意気込みを語ったスケートボーダーの織田夢海(ゆめか)。この大会で3位の成績を収め、国際大会で自身初となる表彰台で笑顔を輝かせた。

パリ2024に向けた戦いをいい形でスタートさせた2006年生まれの織田が、Olympics.comのインタビューでスケートボードの楽しさや勝つことへの想いを語った。

最初は「ちょっと怖かった」

幼い頃から冬になるとスノーボードに親しんでいたと話す織田は、夏の期間に取り組むスポーツを探していた小学1年生のとき、叔父の勧めでスケートボードを始めた。

「ちょっと怖かったです。スピードも速くて、怖くて、めっちゃビビってました」

初めてスケートボードに乗ったときの印象をこう語るが、自宅近所のスケートボードパークのスクールに通ううち、その楽しさを実感。「最初は遊びでやっていた」スケートボードが、試合に出場して好成績を残すにつれ、彼女の中心を占めるようになった。

2018年5月に行われた第2回日本スケートボード選手権ストリートでは2位。翌年1月には、ブラジルのリオデジャネイロで行われたストリート世界選手権の舞台に立っていた。13歳のときである。

(2018 Getty Images)

スケボー=楽しい

まもなく16歳を迎える織田だが、日本女子スケート界ではさらに若い選手も台頭している。今回のローマでの大会で、織田は自分よりも若い選手の活躍を目の当たりにした。

「年下の子らに負けたくなくて、そういう面でどうしようと考えちゃって…」

準決勝の前は不安な気持ちに押しつぶされそうになったが、「気にせず、自分に集中しました」と語る通り、準決勝2組中、1組目に登場した織田は同組トップスコアをマーク。2組目が終わった段階で無事に決勝進出が決まると、決勝では不安を感じさせない堂々とした滑りで3位を飾り、「結果的に勝てたので良かったです」と笑顔で振り返った。

織田の言葉に耳を傾けていると、頂点に立つこと、そして「勝つこと」へのこだわりが伝わってくる。

大会前には「優勝しか見ていない」と話していた織田は、「倒したい相手がいる」として、東京2020で銀メダルを獲得した**ライッサ・レアウ**を名を挙げ、「(レアウは)自分ができない技をいろんなところでやったりするから、負けていられないです」と、良きライバルとして刺激を受けていることを語り、その言葉通り、この大会ではレアウを上回るスコアで表彰台入り。だが、決勝直後のインタビューでは「ライッサを倒したのは嬉しいけど、(中山)楓奈を倒せなかったから…」と、「勝ち」にこだわる姿勢をのぞかせた。

だがそれは織田にとってスケートボードの楽しみ方のひとつとも言えるだろう。

自分にとってスケートボードとは何かを一言で表すと「楽しい」と答えた織田は、ライバルであり仲間でもある選手を「倒せなかった」と語った直後、「でも、楽しかったです」と清々しい表情で付け加えた。

「諦めたら終わり」

東京2020への出場を逃した経験を経て「今年は勝つって決めた」と話す織田は、平日は3時間ほど、休日は午後のほとんどを練習に費やして技を磨いている。

もちろん、すべてが楽しいことばかりではない。技が決まらず、「次の日に滑りたくないと思うことはある」と認めた上で、それでも練習を続ける理由をこう語る。

「諦めたら終わりなので、乗れるまで(技が決まるまで)頑張ってやってます」

しっかりとした口調でこう続けると、10月にブラジルのリオデジャネイロで予定されている次のオリンピック予選大会に向け、「次のリオではこれよりもうちょっと上を目指して、いい結果を出せればいいなと思います」と抱負を口にした。

インタビューの最後に、スケートボードの話を逸れて、オフの時間は友達とどんな風に過ごしているかを尋ねてみると、織田は急に体の力をふわっと緩めてはにかみ、「わかんない」と一言。その仕草に彼女がまだ15歳であることを再認識させられた。

パリまでの2年間で、オリンピック予選以外にもさまざまな大会が予定され、7月16、17日には米フロリダのジャクソンビルで開催されるストリートリーグに織田はワイルドカード枠で参戦を予定している。自分の目標に向かって前進し続ける若きアスリートの活躍を応援したい。

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