2020年東京オリンピックの追加種目として初採用となった空手。日本の沖縄発祥の立ち技格闘技で、海外でも映画などの影響で競技者を増やした。空手競技は、技の正確性やフォームの美しさを競う「形」、実戦形式で勝ち負けを競う「組手」の2種目で行われる。日本発祥競技とはいえ、今や世界のスポーツとなっており、日本勢にとっても東京五輪は険しい戦いとなる。
空手:東京五輪出場枠争いの概要
空手は「組手」で男女3階級、「形」は男女各1種目で行われる。組手の階級は、男子が67kg級、75kg級、75kg超級。女子は、55kg級、61kg級、61kg超級。1種目10人で行われる。選考過程においては、大きく5段階に分かれる。
- 第1段階:オリンピック・スタンディング(オリンピック選考用ランキング)による選考
オリンピック・スタンディングは、WKF(世界空手連盟)世界ランキングの順位を基に決定する。WKF階級とオリンピック階級が同じ場合(男・女の形、男子組手75kg級、女子組手61kg級)は、WKF世界ランキング上位4選手が選出。1つの国から1種目1名なので、上位4選手で同じ国の選手がいた場合は、ランキング上位の選手が選ばれる。
残り4種目については、WKF2階級で統合されるので、WKF世界ランキングそれぞれの階級上位2選手を選出。同じ国の選手が2選手になった場合は、1位の選手が優先される。1位選手同士の場合は、ポイントが多い選手が出場する。
- 第2段階:予選大会による選考
2020年5月8日から10日にパリで予選大会を実施し、各種目上位3選手がオリンピックの出場権を確保できる。予選大会に限っては、WKF世界ランキング50位以内に入っていなくても出場できる。
ただし、第1段階(オリンピック・スタンディング)で選出されている選手は、第1段階で選抜されているので、階級ごとでエントリーできないケースもある。
- 第3段階:開催国枠
第1段階、第2段階で開催国の選手がいない場合は、日本人最上位の選手が開催国枠として本戦出場できる。これにより、日本人選手は全種目でオリンピック出場ができる可能性は高い。
- 第4段階:大陸代表枠
各大陸空手連盟から2~3名が指名される。
- 第5段階:三者委員会招待枠
IOC、国内オリンピック委員会連合、オリンピック夏季大会競技団体連合(ASOIF)の三者が男女2名ずつ指名する。後進国のアスリートを支援する制度である。
【出場権の掛かった大会一覧】
WKF世界ランキング(オリンピック・スタンディング)ポイント対象大会が、本大会出場権獲得に直結する。
- ・WKF 世界空手道選手権大会(2018年開催)
- ・各大陸選手権大会(隔年または毎年開催)
- ・WKF KARATE1 プレミアリーグ(世界中で年間複数回開催)
- ・WKF KARATE1 シリーズA(世界中で年間複数回開催)
欧州勢が上位を独占! 東京五輪出場権争いの現状と出場決定選手
出場枠については、2020年4月6日時点のオリンピック・スタンディングで決定の上で、各段階で出場選手が決められる。
・現在のオリンピック・スタンディング(2019年5月13日現在)
【男子・形】
1位 喜友名 諒
2位 QUINTERO CAPDEVILA DAMIAN HUGO(スペイン)
3位 SOFUOGLU ALI(トルコ)
4位 BUSATO MATTIA(イタリア)
:
6位 本 一将
7位 新馬場 一世
【男子・組手67kg級】
1位 DACOSTA STEAVEN(フランス)
2位 CRESCENZO ANGELO(イタリア)
3位 ASSADILOV DARKHAN(カザフスタン)
4位 FIGUEIRA VINICIUS(ブラジル)
:
8位 佐合 尚人
19位 篠原 浩人
【男子・組手75kg級】
1位 BUSA LUIGI(イタリア)
2位 AGHAYEV RAFAEL(アゼルバイジャン)
3位 西村 拳
4位 ASGARI GHONCHEH(イラン)
:
19位 崎山 優成
【男子・組手75kg超級】
1位 AKTAS UGUR(トルコ)
2位 HORNE JONATHAN(ドイツ)
3位 GANJZADEH SAJAD(イラン)
4位 KVESIC IVAN(クロアチア)
:
7位 荒賀 龍太郎
12位 香川 幸允
【女子・形】
1位 SANCHEZ JAIME(スペイン)
2位 清水 希容
3位 BOTTARO VIVIANA(イタリア)
4位 LAU MO SHEUNG GRACE(香港)
:
11位 大野 ひかる
12位 岩本 衣美里
【女子・組手55kg級】
1位 OZCELIK ARAPOGLU SERAP(トルコ)
2位 WEN TZU-YUN(チャイニーズ・タイペイ)
3位 宮原 美穂
4位 TERLIUGA ANZHELIKA(ウクライナ)
:
11位 山田 沙羅
【女子・組手61kg級】
1位 YIN XIAOYAN(中国)
2位 LOTFY GIANA(エジプト)
3位 COBAN MERVE(トルコ)
4位 PHILIPPE GWENDOLINE(フランス)
:
14位 染谷 真有美
【女子・組手61kg超級】
1位 QUIRICI ELENA(スイス)
2位 CHATZILIADOU ELENI(ギリシャ)
3位 植草 歩
4位 ZARETSKA IRINA(アゼルバイジャン)
:
6位 染谷 香予
東京五輪で期待される日本人有力選手たち
男子・形で、現在オリンピック・スタンディング1位の喜友名 諒(きゆな りょう)(一般社団法人 劉衛流龍鳳会)は、東京大会金メダル候補と言われている。
2018年10月にスペイン・マドリードで行われた世界選手権で優勝し、大会3連覇を達成。初戦から全試合でポイントを落とさずに完勝している。個人大会3連覇は、佐久本嗣男以来30年ぶりの快挙だった。五輪種目ではないが、団体のメンバーとして参加し、スペインを5-0で下して2連覇を達成している。
男子・組手では、75kg級の西村 拳(チャンプ)に注目したい。世界選手権を5度制したAGHAYEV RAFAEL(アゼルバイジャン)に2016年から4連勝するなど、世界から注目を集めている。
180㎝の長身から繰り出す足技とスピードが持ち味。女性ファンも多く、会場ではサインを求められる存在だ。2018年の世界選手権では銅メダル、オリンピック・スタンディングも3位につけている。こちらもメダル候補と言っても良いだろう。
一方、女子では組手61キロ超級の植草歩がメダル最有力になるだろう。主戦場は68kg超級のため、1階級下の選手とメダルを争うことになる。国内では、全日本空手道選手権で4連覇中と無敵だ。
プレミアリーグでも2年連続年間チャンピオンに輝いている。五輪の階級となる61kg超級では、現在オリンピック・スタンディング3位につけている。「金メダルが欲しい」と公言する植草に注目してほしい。
日本人選手の出場枠/開催国枠争いの状況、選考大会への出場権獲得状況
上段でも触れている通り、日本は全階級で開催国枠を確保している為、全種目で出場権を確保できる見込みだ。開催国枠はあるが、1種目につき出場できるのは1人のみ。狭き門をめぐって、2020年4月6日まではランキング日本人最上位に入る事が大事。
開催国枠を確保しているが、メダル獲得及び入賞の為には、開催国枠ではなく、世界ランキング上位4選手及び2020年5月に行われる予選大会で出場枠を確保しておきたい。
東京オリンピック日本代表内定選手
<男子>
- 67kg級:佐合尚人
- 75kg級:西村拳
- 75kg超級:荒賀龍太郎
- 形:喜友名諒
<女子>
- 55kg 級 :宮原美穂
- 61kg 級 :染谷真有美
- 61kg超級:植草歩
- 形:清水希容