【バレーボール】男子世界選手権総括:成長を遂げた日本、Tokyo2020金のフランスに惜敗でベスト8進出ならず

日本代表の世界選手権は、王者・フランスに敗れラウンドオブ16で幕を閉じた。それでも、Tokyo2020金メダルの強豪国をあと一歩まで追い詰めた激闘は、日本の確かな成長を示している。

1 執筆者 オリンピックチャンネル編集部
Volleyball Team Japan
(Getty Images)

FIVB(国際バレーボール連盟)2022男子世界選手権が9月12日、ポーランド・カトヴィツェで閉幕した。優勝は24年ぶりとなるイタリア。Tokyo2020以後、メンバーも入れ替わり若手主体となる中、セッターで主将を務め、大会MVPにも選出されたシモーネ・ジャネッリがチームの柱となり、多彩な攻撃陣を自在に活かし、自国開催のポーランドの3連覇を阻んだ。

準優勝は日本のウルフドッグス名古屋で主将も務めるバルトシュ・クレク率いるポーランド。3位はブラジル、ポーランドと共に共催国であったスロベニアが4位と躍進を遂げた。

大会前に「ベスト8進出」を掲げた日本代表の最終成績は12位。Tokyo2020、FIVBネーションズリーグに続いての世界トップ8入りはならなかったが、ベスト16で対戦したフランス戦はまさに激闘であり、2年後のパリ2024に向けた期待を大いに高める素晴らしい一戦となった。

■石川祐希が外れても……

まずは予選ラウンドから振り返ろう。

初戦となったカタール戦は、ネーションズリーグ決勝ラウンド直前に左足首捻挫で離脱した主将の石川祐希がスタメンから外れ、アウトサイドヒッターは大塚達宣、髙橋藍という若い2人が対角に入った。

現役大学生でもある2選手だが、大塚は昨年Vリーグのパナソニックパンサーズで、髙橋はイタリア・セリエAのパドヴァに在籍し、高いレベルで経験を積んだ。ネーションズリーグで安定したパフォーマンスを発揮し続けた力を世界選手権でも見せ、勝利必至の初戦を見事3-0のストレート勝利で飾った。

続く2戦目はブラジル。ネーションズリーグとはメンバーも変わる中、試合序盤は日本がオポジットの西田有志のサーブやスパイクで先行。実に29年ぶりとなる勝利に近づいたかと思われたが、ブラジルは競り合った場面で着実にサーブ、スパイク、ブロックを決めて見せ、日本のリードに慌てることなく点差を縮め、逆転勝利。ストレートで敗れた日本は1勝1敗とし、3戦目のキューバとの一戦を迎えた。

大会前からフィリップ・ブラン監督が「大会の中でも最も重要といえる試合」と位置付けていた通り、この試合に勝利すればグループ2位通過が確定し、決勝トーナメントの初戦で上位国との対戦を逃れる可能性が高くなる。

もし、キューバに敗れればグループ3位通過、24チーム中16チームが決勝トーナメントへ進出できるとはいえ、全体1位、2位といった強豪国と対戦することとなるため、勝ち上がりは厳しい。最重要と位置付けられたこの一戦、満を持して主将の石川がスタメンに復帰。チームを鼓舞するサービスエースなど圧巻のプレーを見せたが、最も存在感を発揮したのはミドルブロッカーの小野寺太志だった。

世界屈指のミドルブロッカーと言われるロベルランディ・シモンを擁するキューバに対し、まさに「壁」としてキューバの攻撃陣を前に小野寺が立ちはだかる。両チーム最多の6本のブロックポイントを挙げた小野寺の活躍や、同じミドルブロッカーの山内晶大や石川、髙橋のバックアタックも絡めた関田誠大の絶妙なトスワークも光り、試合は3-1で日本が勝利を収め、グループ2位、全体の11位で決勝トーナメント進出を果たした。

■王者との対戦

しかし、ここで思わぬ事態が生じた。前述の通り、1次リーグの結果から1位と16位、2位と15位が対戦する決勝トーナメントの初戦、11位の日本が対戦することとなったのは6位のフランス。同勝敗で多くのチームが並ぶ中、セット率や得点率といったわずかな差によって11位となったため、ベスト8進出をかけて戦う相手がTokyo2020の覇者で、ネーションズリーグも制したフランスに決まった。

対戦成績や、近年フランスが残している好成績を見れば確かに日本の分は悪い。だが、ベスト8進出を果たすためには勝利しなければならない相手であり、むしろ挑戦者として失うものはない。フランスに第1セットを先取された後、日本が見せた底力はまさにそんな強さを裏付けるものでもあった。

攻撃、守備だけでなくサーブも世界屈指の力を誇るフランスに対し、日本はリベロの山本智大と髙橋が中心となり、堅守からの攻撃を関田が自在に操り、西田を筆頭にさまざまな攻撃を展開した。ミスの少ないことに定評があるフランスも、日本の堅守と機動力を生かした攻撃の前にミスが目立ち始め、1、3セットを奪うものの、2、4セットは日本が取り返し、最終第5セットを迎える。

15点先取の最終セットで、日本は髙橋の連続スパイクや西田のスパイクで4-1と先行する。王者フランス相手に3点のリードを得て、勝利が一気に近づいたかと思われたが、フランスも脅威の粘りと底力を発揮し、中盤に同点とされ、逆転を許す。

しかし、西田のブロックや石川のスパイクで再び追いつき、最初にフランスにマッチポイントとされるも、再逆転した日本は15-14とマッチポイントに到達し、勝利を手中に収めたかに思われた。だが、あと1点を獲らせてくれないフランス。2時間を超える大熱戦の末、最終セットは16-18、セットカウント2-3で敗れた日本は12位で大会を終えた。

王者フランスに対し、あと一歩まで迫る敗戦に、選手は悔しさを露わにしたが、この経験は来年行われるパリ2024最終予選に向け、大きな力となるのは言うまでもない。世界ランクも7位まで上げた日本が次はどんな戦いを見せるのか。

今季がスタートした時から成長課題と掲げたサーブ力、ミドルブロッカーの攻撃力向上、サーブ力など着実にクリアし、成長を遂げてきた。きっと世界選手権で見せた雄姿以上に来季は輝く姿が見られることだろう。

■日本代表メンバー

  • 1 西田有志(ジェイテクトSTINGS)
  • 2 小野寺太志(JTサンダーズ広島)
  • 5 大塚達宣(早稲田大学)
  • 6 山内晶大(パナソニックパンサーズ)
  • 7 高梨健太(ウルフドッグス名古屋)
  • 8 関田誠大(ジェイテクトSTINGS)
  • 9 大宅真樹(サントリーサンバーズ)
  • 12 高橋藍(日本体育大学)
  • 13 小川智大(ウルフドッグス名古屋)
  • 14 石川祐希(パワーバレー・ミラノ/イタリア)
  • 16 宮浦健人(スタル・ニサ/ポーランド)
  • 20 山本智大(堺ブレイザーズ)
  • 23 佐藤駿一郎(東海大学)
  • 26 村山豪(ジェイテクトSTINGS)
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