今シーズンのワールドカップ初戦で優勝し、第2戦では2位に輝いた**スノーボード男子ハーフパイプの平野流佳**(るか/以下、流佳)。初出場となった招待制の国際大会デューツアーでも3位という好成績を収めるなど、好調のオリンピックシーズンを過ごしてきた。
勝利のカギとも言われる「トリプルコーク」を**平野歩夢(あゆむ/以下、歩夢)が12月に初めて実戦で成功させ、男子ハーフパイプ界の温度がぐんと高まった今、北京2022オリンピック**では熱い戦いが繰り広げられることが予想される。その一翼を担うであろう、スノーボーダー平野流佳。ローザンヌ2020ユースオリンピックの際には好きな言葉として「努力あるのみ」をあげた彼の努力の道を辿った。
2018年ワールドカップデビュー
大阪出身の平野は、6歳の頃に両親の影響でスノーボードを始めた。すぐにその楽しさに取り憑かれ、降雪量の少ない大阪から頻繁にスキー場に連れて行ってもらったという。
ワールドカップデビューはそれから10年ほどが過ぎた2018年のことだ。2018年といえば2月に平昌オリンピックが開催された年。この大会で、歩夢が銀メダルを獲得し、同学年の**戸塚優斗**がオリンピックデビューを果たした。国際大会でのパフォーマンスや代表選出など、彼らの姿が流佳の気持ちを昂らせたとしても不思議ではない。
だが、平昌大会が盛り上がりをみせる一方、流佳は札幌の空を舞っていた。同時期に行われたFIS公認の国内大会に出場していたのである。世界中のウィンタースポーツファンが平昌に注目する中、流佳は自分自身のパフォーマンスに集中し、その大会で表彰台に立つと、9月の世界ジュニア選手権で2位に輝き、12月にワールドカップデビューを果たした。
3位、3位、3位…
さらなる飛躍の年となったのは2019/2020シーズンだ。流佳が参戦したシーズン最初のワールドカップ3戦は次のような結果となる。
- 2019年12月 カッパーマウンテン大会 3位(1位 スコッティ・ジェームズ、2位 戸塚優斗)
- 2019年12月 シークレットガーデン大会 3位(1位 スコッティ・ジェームズ、2位 戸塚優斗)
- 2020年1月末 マンモスマウンテン大会 3位(1位 戸塚優斗、2位 コールド・テイラー)
安定して表彰台に上がったが、歩夢や**ショーン・ホワイト(米国)が不在となった平昌大会以降、スコッティ・ジェームズ**(オーストラリア)、戸塚が頂点争いを繰り広げており、しかもジェームズは負け知らずの戦いが続いていた。
2020年1月中旬に行われた、15〜18歳を対象としたユースオリンピック・ローザンヌ大会は流佳にとって大事な局面となったのかもしれない。ユースオリンピックの舞台ではこれまでの努力が身を結び、見事優勝を収めると、自身のインスタグラムで「応援しに来てくれた方々ありがとうございます! 最高に楽しかったです!」と喜びを表現した。
1月末にワールドカップに戻ると再び3位となるが、2月のカルガリー大会では、ジェームズの連勝記録を止める形で初勝利をあげた。
「努力あるのみ」
好きな言葉を「努力あるのみ」とする流佳は、その理由を「昔はあんまり上手くなかったんですけど、めっちゃ人よりも努力して上手くなってきたんで、その言葉があります」と説明する。
今季ワールドカップ初戦でも勝利をあげ、その努力が求める形で表れつつある。だが、ハーフパイプでは何が起こるかわからないのも事実だ。
ハーフパイプの決勝では通常3本の滑走を行い、最終的にそのいずれかで高い得点を出した選手が勝者となる。難易度の高い技に挑戦して着地に失敗すれば、点数は遠く及ばないこともある。反対に、難易度の高い演技構成を成功させれば、順位は簡単に入れ替わる。2021年12月のワールドカップ第2戦の決勝は2本のみで行われ、流佳は決勝1本目でトップとなる84.80点を出し、2本目でそれを上回る93.40点を叩き出した。そのまま逃げ切るかと思われたが、その後に滑走した歩夢が95.80点でトップに躍り出て大会は終了した。
スター選手がひしめき、誰が勝ってもおかしくないハーフボード種目において、流佳にとってはあらゆることが「努力あるのみ」なのかもしれない。ワールドカップデビューシーズンのカルガリー大会で2位となった彼は、自身のインスタグラムにこんな言葉を残している。「悔しいけど1440を決めれたので良かったです」。結果を受け止めながら自分のすべきことに集中し、努力を重ね続ける平野流佳。彼の活躍から目が離せない。
北京オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプは2月9日に予選が行われ、決勝は2月11日に予定されている。