スノーボーダー戸塚優斗、悔しい平昌から4年、北京の舞台に立つ

トリック(技)の進化が止まらないスノーボード界で、その中心で活躍する日本人スノーボーダーがいる。2021年のハーフパイプ世界選手権を制した、戸塚優斗である。 

1 執筆者 Chiaki Nishimura
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(2021 Getty Images)

男子ハーフパイプでは多くの日本人スノーボーダーが活躍するが、中でも**戸塚優斗**は2020/2021シーズンの主要大会を完全に自分のものにし、オリンピック・メダル候補として国内外で呼び声が高い。世界を舞台に活躍する20歳のスノーボーダー戸塚の活躍ぶりを見てみよう。

2020/2021シーズン、主要4戦で全勝

ハーフパイプの頂点に立つ日本人スノーボーダー、戸塚優斗。これは彼の活躍を大袈裟に表現した言葉ではない。2021年1月から3月までの昨シーズンの彼の成績に注目してみれば一目瞭然だ。

  • 2021年1月 FISワールドカップ・ラークス大会、優勝
  • 2021年1月 Xゲーム・アスペン、優勝
  • 2021年3月 FIS世界選手権、優勝
  • 2021年3月 FISワールドカップ最終戦(アスペン)、優勝

ワールドカップをはじめ、Xゲーム、世界選手権の主要4戦で優勝し、ワールドカップでは種目別でも優勝。国内では2021年4月の全日本スキー選手権のスノーボード・ハーフパイプでも**平野歩夢平野流佳**(るか)を抑えて栄冠を手にした。

平昌の悔しい思い出

物心つく前からスノーボードを始めた戸塚が初めて主要国際大会で好成績を残したのは、高校生のときだ。

小学校低学年でハーフパイプの練習を始めた彼は、2017年3月の全日本スキー選手権で世界選手権・元王者の**青野令**を抑えて優勝。同年9月にワールドカップデビューし、高校1年生で初参戦、初優勝を成し遂げ、国際舞台でもその存在をアピールした。

だが、初出場となった2018年の冬季オリンピック平昌大会では決勝2本目でハーフパイプのふちに乗り上げて激しく転倒し、担架で運ばれる事態となり結果は11位。自身のインスタグラムでは、悔しさをにじませながらも「自分の課題などが見えたりもしたのでいい経験になりました!」とつづった。こうした経験が、現在の戸塚を強くしていることは間違いないだろう。

高難易度のルーティン

スノーボードのハーフパイプといえば、トリックの難易度や完成度、高さなどをもとに採点され、順位が決まる。各トリックを繋ぐ形でルーティンが構成され、選手らはルーティンに磨きをかける。

戸塚が優勝を決めた2021年世界選手権の決勝3本目は次のようなルーティンだ。まず最初にフロントサイド・ダブルコーク1440、そしてキャブダブルコーク1260スイッチ・バックサイド・ダブルコーク1080バックサイド・ダブルコーク1260を決め、最後にフロントサイド・ダブルコーク1260でダイナミックかつ高難易度のルーティンを締めくくり、96.25ポイントを叩き出した。

だがスノーボード界における技の進化は止まらない。現在のスノーボード男子ハーフパイプにおいて、「トリプルコーク」が勝敗のカギのひとつと言われており、昨年12月に平野歩夢がこれを実戦で成功させた。戸塚のみならず、ハーフパイプの多くの選手の顔色が変わったとしてもおかしくはない。

高いエアで人々を魅了する戸塚だが、壁に苦戦するプライベートのオフショットも。スノーボードを楽しんでいる様子が伝わってくる微笑ましい映像だ。

競合ひしめく男子ハーフパイプ

北京では、平野歩夢や平野流佳、さらにハーフパイプ界のレジェンド的存在の**ショーン・ホワイト、さらに平昌大会以降の数年間で、戸塚とともにハーフパイプ界を賑わしてきたオーストラリアのスコッティ・ジェームズ**などが表彰台の頂点を目指し、それぞれのパフォーマンスを披露する。

今シーズンは他の選手に押され気味の戸塚だが、子どもの頃からの夢だったというオリンピックの舞台でしっかりと自分の滑りをして表彰台、そしてその頂点を目指す。

北京オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプは2月9日に予選が行われ、決勝は2月11日に予定されている。

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