マラソングランドチャンピオンシップ2023注目の男子選手/パリ2024オリンピック日本代表選手選考会

パリ 2024

パリ2024日本代表選考レース、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が10月15日に開催される。上位2選手が獲得する日本代表内定の座。国立競技場に誰よりも早く到着しそれを手にするのは誰か?ここでは注目の男子選手を紹介しよう。

1 執筆者 Hirotaka Hikoi
マラソングランドチャンピオンシップ2023注目の男子選手
(GETTY IMAGES)

パリ2024オリンピックマラソン競技(2024年8月10日/男子・11日/女子開催予定)までおよそ10か月となった10月15日(日)、パリ2024日本代表選手選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)が行われる。男女各代表枠3枠のうち2枠が1発勝負で決まる。パリを目指し、この日に照準を合わせ、時間をかけて入念な準備をしてきた、国内屈指のランナーたちが集結する。

当日は、午前8時ちょうどに号砲が鳴り、男子選手から国立競技場をスタートする。今回出場予定の男子選手の数は、2019年前回大会の出場者数31名から61名(10月10日時点)にほぼ倍増。そのうち47名の選手が初出場となる。2つのパリ2024日本代表内定の座をめぐってハイレベルな激戦が予想される。

東京2020男子マラソン6位入賞の大迫傑(すぐる)、日本記録(2時間04分56秒)保持者の鈴木健吾をはじめ、今年8月の世界陸上ブダペスト大会を戦った山下一貴(いちたか)、其田(そのた)健也らが名を連ね、パリ2024に向けて今大会に挑戦する。

前回大会で東京2020日本代表を勝ち取った中村匠吾服部勇馬は、ともに今年5月のプラハマラソンで今大会の出場権獲得を目指したが、設定基準記録に到達していないため今回は出場できない。また、山下、其田とともに、世界陸上ブダペスト大会に出場した西山和弥(かずや)、今月行われたアジア競技大会・杭州出場の定方俊樹と池田耀平は今大会への出場を見合わせている。

61名の男子選手の中でパリ2024代表内定の座を射止めるのは誰か。ここでは注目の男子選手を紹介する。

なお、オリンピック各国代表の編成に関しては国内オリンピック委員会(NOC)が責任を持っており、パリ2024への選手の参加は、選手が属するNOCがパリ2024代表選手団を選出することにより確定する。

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大迫傑:底力を発揮してパリを目指す

東京2020では、日本男子9年ぶりとなる6位に入賞した実績をもつ大迫。自己ベストの2時間05分29秒は日本歴代2位の記録だ。2019年前回大会では、中村、服部らと激しいデッドヒートを展開し、2位の服部にわずか5秒差で3位となり東京2020代表の座を1度は逃した。MGCファイナルチャレンジでは、当時、自身の保持していた日本記録を更新することが3枠目を獲得する条件となっていたため、MGCでの3位の結果をもってしても選考される可能性は十分にあった。しかし、翌年の東京マラソンにあえて挑戦し、自らの日本記録を更新して東京2020代表を確実なものとした。チャレンジャー大迫の底力を見せつけたと言える。

全力を出し切った東京2020後、いったんは現役を退いた大迫だったが、2022年2月に現役復帰。同年11月のニューヨークシティマラソンで日本人最上位の5位に入賞し完全復帰を印象付けた。今大会へは今年3月の東京マラソンで2時間06分13秒の好タイムで日本人3位となり出場権を得ている。

3000mと5000mの現日本記録保持者である32歳の大迫が、紆余曲折を経て、精神的にもさらに成長し今大会に戻ってくるのは間違いない。海外での豊富な経験を強みに、どんな展開が待っていようともぶれない挑戦者、大迫らしい戦いぶりを見せてくれることだろう。

鈴木健吾:日本人唯一4分台のスピードに期待

今大会で最も注目される選手のひとりである鈴木は、2021年2月のびわ湖マラソンで大迫のもつ日本記録を更新して、日本人唯一の4分台(2時間04分56秒)突入を果たした。前回大会の鈴木は、終盤まで上位につける積極的な走りを見せたが最後は失速し7位に終わっていた。

昨年の東京マラソンでは、大迫の自己ベストより早い2時間05分28秒(日本人1位)をマーク。ここで、今大会の出場権だけでなく、同年の世界陸上オレゴン大会への出場も決めていた。しかし、妻の一山麻緒と出場予定だった同世界陸上へは新型コロナウィルス陽性のため欠場。フルマラソンは、今大会が昨年の東京マラソン以来となる。

故障や体調不良、それによるレース欠場が続き不遇のマラソン日本最速ランナーの鈴木だが、そこで培った精神面での強さと、本来の持ち味であるスピードを生かし、ライバルに揺さぶりをかける勝負強さが発揮されれば、パリへの道は切り拓かれるに違いない。パリ2024こそは一山と2人で出場を果たしたいところだろう。

山下一貴:世界陸上の悔しさをばねに戦う

MGC初出場者が多い今大会で注目を集めるひとりは山下だろう。マラソン3度目となる今年3月の東京マラソンでは、今季日本人最高記録となる日本歴代3位の2時間05分51秒をマークしている。この東京マラソンで日本人1位となり、今年の世界陸上ブダペスト大会に出場を果たした。同世界陸上では酷暑の中を健闘したが、脚のけいれんに見舞われ12位に終わった。そこから今大会まで2か月もない中で、どこまで疲労や暑さのダメージから回復して準備できているかが大きな鍵となるだろう。今大会へは昨年2月の大阪・びわ湖マラソンで日本人2位に入り出場権を獲得していた。

世界陸上での暑さの中を走った経験を強さに変え、そこから十分に回復ができているなら、今大会でその「効果」を大いに発揮するかもしれない。走るたびに進化する山下にとって、5度目のマラソンとなる今大会でもさらなる進化を見せるか。緊迫した選考レースで見せる「イチタカスマイル」に期待だ。

其田健也:世界陸上からの回復次第で上位の可能性も

MGC初出場、世界陸上ブダペスト大会出場という点で山下と共通している其田。同世界陸上では35位に終わっている。山下同様、今大会までの準備期間が少ない中、いかに疲労からの回復ができているかが鍵となる。

今年3月の東京マラソンで、日本人歴代4位となる2時間5分59秒でフィニッシュし、山下とともに大迫に競り勝ち2年連続で日本人2位となった。2時間6分を切って走った日本人はこれまでに4人しかいない。そのひとりである其田が今大会で上位2人に入りパリ2024代表の座を射止めたとしても何ら不思議ではない。

MGC初出場組の走りにも注目

誰が上位争いを繰り広げてもおかしくない緊迫したレースが予想される今大会。けっして自己ベストだけで結果を計り知ることはできない。初出場選手の中には虎視眈々と上位の様子を伺い機先を狙ってくる選手も多いはずだ。

今大会がMGC初出場となる細谷恭平は、2021年12月の福岡国際マラソンで日本人1位となり誰よりも真っ先に出場権を獲得していた。今大会では出場者の中で6番目に早い日本人歴代8位の自己ベスト(2時間6分35秒)を持って臨む。

同じく、今大会がMGC初出場となる星岳(がく)は、初マラソンだった昨年2月の大阪・びわ湖マラソンで山下に9秒差で競り勝ち、日本人1位(2時間07分31秒)となって出場権を獲得していた。同時に、2022年世界陸上オレゴン大会への代表を獲得していることから、ここぞという時の勝負強さが見せどころだ。星と同じく出場した同世界陸上で13位の西山雄介も3度目のマラソンとなる今大会がMGC初出場となる。

また、前回大会27位の屈辱をばねに再挑戦する、2018年アジア競技大会(ジャカルタ)男子マラソン金メダリストの井上大仁(ひろと)の走りにも注目だ。

1発勝負とはいえ実力を備えた精鋭ばかりがそろう今大会だが、勝負強い選手こそが最後に栄冠を勝ち取る見どころ満載の選考レースとなるだろう。混戦となれば、選手同士の駆け引きにも注目だ。

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