やり投・北口榛花、ダイヤモンドリーグ4大会連続で表彰台、いよいよファイナルへ

東京オリンピックで日本勢57年ぶりに女子やり投決勝に進出し、今シーズンはダイヤモンドリーグで大活躍を見せる北口榛花。弾けんばかりの笑顔が特徴的な北口は、日本女子初のアスリートとして9月7日、8日のダイヤモンドリーグ・ファイナルへと進む。

1 執筆者 Chiaki Nishimura|公開日:9月4日
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(2019 Getty Images)

5月にドーハで開幕した2022年のダイヤモンドリーグが、まもなく最終戦(ファイナル)を迎える。

陸上競技の最高峰のリーグ戦として各都市を転戦して行われるダイヤモンドリーグは、ワールドアスレティックス(旧国際陸上競技連盟)の主催で5月から9月にかけて14戦(今年は13戦)が行われ、最終戦では年間王者が決定する。

スイス・チューリッヒで9月7日、8日に実施される今年の最終戦への出場権を手にしている日本人アスリートが、パリ2024での活躍が期待されるやり投の北口榛花(きたぐち・はるか)である。

北口榛花が保持する日本記録、66m

1998年に北海道で生まれた北口は、高校生のときにやり投げを始めた。高校3年だった2015年には日本選手団の主将として世界ユース選手権に出場して、女子やり投で優勝。世界トップレベルのアスリートへの道を歩み始めた。

北口が大きく飛躍するきっかけとなったのが、チェコ出身のデイビッド・セケラック・コーチとの出会いである。

前コーチの退任により大学2年からコーチ不在で練習に励んでいた北口は、2018年11月にフィンランドで行われた国際講習会でチェコ出身のセケラック氏と出会ったことをきっかけに、言葉の壁を乗り越えて指導を受けるように。

まずは2019年2月に1ヶ月間、武者修行のために単身でチェコに渡り、北口は新たな競技人生をスタートさせた。その成果はすぐに目に見える形となって現れる。

2019年5月に行われた日本グランプリシリーズ大阪大会で日本新記録を更新する(64m36)を投げ、「次の目標は65m」と言っていたのも束の間、10月の大会では66mの記録を打ち立て、自身の持つ日本記録を大幅に更新した。

2021年夏に行われた東京2020では、日本女子として57年ぶりにやり投の決勝に進出。決勝では左腹斜筋の肉離れにより12人中12位で大会を終えた。

女子陸上の歴史を切り拓く北口榛花

大会後は肉離れからの回復に時間を費やしたが、今季の北口は新たなステージに到達したような活躍を見せている。

今季ダイヤモンドリーグで女子やり投が実施された最初の大会となった6月の第7戦パリ大会で優勝したのを皮切りに、7月に米オレゴンで行われた世界選手権では銅メダルを獲得し、日本女子としてフィールド種目で初の表彰台に。

自身のソーシャルメディアで、「また一つ歴史を作ることができとても嬉しいです。人と違うからと言われてもずっと自分の道を進んできてよかったと思いました」と、これまでの苦労をにじませた。

北口の2022年はそれでは終わらない。8月に行われたダイヤモンドリーグ第9戦ポーランド・シレジア大会では、自己シーズンベストとなる65m10を投げて2勝目をあげると、世界ランクで1位に浮上。さらに、その翌週の第10戦モナコ大会で東京2020オリンピック銅メダリストのケルシーリー・バーバーに3m13の差をつけられたものの、2位の成績を残した。

「最初は出られるだけで満足していましたが、勝ったり負けたりするうちに勝ちたいと思うようになりました」(Twitterより)

勝つことへの欲を持つようになった北口は、9月2日に行われた第12戦ブリュッセル大会で再び2位の成績をおさめ、やり投が実施された今季の4大会すべてでメダルを獲得した。

そしてまもなくその最終戦が行われる。シリーズ戦で上位の成績を収めた選手のみが参加できるファイナルで、日本勢は2019年に男子走高跳の戸辺直人(結果は5位)と棒高跳の山本聖途(11位)が出場したのみで、女子では初めてとなる。また今季は、男子3000m障害の三浦龍司もファイナル出場を決めている。

北口榛花のライバル、女子やり投の実力者たち

北口をより強くさせるライバルたちの存在に触れておくと、まず、北口とともに世界ランキングのトップ争いをしているオーストラリアのケルシーリー・バーバーが挙げられる。

まもなく31歳を迎えるバーバーは東京2020オリンピックで銅メダルを獲得し、今季のダイヤモンドリーグでは8月のモナコ大会で優勝。今年の世界選手権ではシーズンベストとなる66m91を記録し、2連覇を達成した(自己ベストは2019年に記録した67m70)。

一方、9月2日に行われたダイヤモンドリーグ・ベルギー大会で、パーソナルベストを12年ぶりに更新するビッグスロー(68m11)を披露し会場を沸かせたのが、カラ・ウィンガー。その直後に投てきを行った北口とは4m66差で、アメリカ合衆国のウィンガーは優勝を果たした。現在36歳になる彼女は、今季限りでの引退を宣言しており、ファイナルイヤーとなった今年の世界選手権では自身初のメダル(銀メダル)を獲得している。

世界の実力者を相手に、北口が日本女子初出場となるダイヤモンドリーグ・ファイナルでチャームポイントの笑顔を弾けさせることができるのか。その活躍に注目したい。

北口が出場する女子やり投は、9月8日の現地時間20:20(日本時間は翌3:20)に予定されている。

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