インタビュー・Shigekix、世界選手権へ「最後の最後まで努力して」

10月21日、22日の日程で大韓民国・ソウルでWDSF世界ブレイキン選手権2022が開催される。この大会に、2018年のユースオリンピックで銅メダルを獲得し、7月のワールドゲームズでも銅メダルに輝いたBボーイShigekixが出場する。

1 執筆者 Olympics.com|公開日:10月17日
Shigekix
(Kenta HARADA)

10代前半から国際舞台で活動をしてきたBボーイShigekixは、2018年にブエノスアイレスで行われたユースオリンピックのブレイキン競技に出場し、銅メダルを獲得した。

本名は半井重幸(なからい・しげゆき)、2002年大阪生まれの20歳。

15歳だった2017年に国際大会「レッドブルBC Oneワールドファイナル」に最年少出場を果たし、3年後には同大会で最年少優勝を飾った。

1970年代の米ニューヨーク・サウスブロンクス地区で、ギャングたちの抗争を鎮める過程で生まれたブレイキンは、**パリ2024**で新しくオリンピック競技に加わる。国内外で活躍する半井は、世界選手権を前にOlympics.comのインタビューに応え、ブレイキンの魅力やオリンピックへの思いを語った。

オリンピックにおけるアーバンスポーツ

ブレイクダンスの名でも知られるブレイキンは、スケートボードなどと並び、アーバンスポーツ(都市型スポーツ)のひとつとして親しまれている。

東京2020ではスケートボードBMXフリースタイルなどのアーバンスポーツが新たにオリンピック競技として実施され、大会を盛り上げたことは多くの人の記憶に残っていることだろう。

ブレイキンと同じストリートカルチャー由来の競技を中心に東京大会を見ていたという半井は、「カルチャー要素の強い競技が入ることによって、(スポーツの)また違う良さみたいなものが(東京2020オリンピックで)出ていたんじゃないかなと思います」とその影響を分析する。

「(ユースオリンピックのときも)僕たちはいつも通り、どんな競技の選手、どんな国の選手であっても、開催期間中も大会前日も普通に対戦相手と食事をしていました。その風景は『オリンピックが掲げている国際交流の理想的な形をあらわしている』と、ブレイキンを評価していただきました」とブエノスアイレス2018を振り返った半井は、東京大会でもそれに近いものが見られたことを嬉しく思ったと話す。

「スケートボードだったり、BMXだったり、対戦相手になるライバルの選手がいいプレー、いいライディング、パフォーマンスをしたときに、素直にひとりのプレイヤーとして称え合うような、そういう場面が見られました」

そんなアスリートたちの姿は東京2020で大きく注目され、スポーツの価値を改めて思い出させる機会にもなった。

「僕たちがやってきたことをポジティブに受け止めていただけたことは、いちストリートカルチャーに属している人として誇らしいし、嬉しい気持ちになりました」

パリ2024で初めて採用されるブレイキン

そんなアーバンスポーツのひとつであるブレイキンが、2024年にフランスの首都パリで行われる夏季オリンピックで新たに採用される。

「『ブレイキンっていいよね』っていう、シンプルなそのリアクションをいただけるようなアクションを起こす」ことを半井は思い描く。

「自分が出場する立場になったとしたら、プレーヤーとしてやることっていうのは、(ほかの大会と)変わらないんですよね。常に練習してコンディショニングして、自分のベストを発揮できるように準備して、当日、全力で戦う。そこに関しては変わらないんですけど、見てくれる人の層や数が違ったり、色んな視点からブレイキンを見ていただけるいいタイミングになると思う。そこでブレイキンの魅力が少しでも皆さんに伝われば嬉しいです」

「いつも通り僕たちらしくやっていれば、今までブレイキンに興味を持ったことがない人や初めて見るような人たちにも、面白そうとか格好いいとか楽しそうとか、いい雰囲気だなとか感じ取ってもらえるんじゃないかなって思っています」

差ではなく個性として

現在20歳の半井は7歳のときにブレイキンを始めて以来、10年以上ブレイキンと向き合ってきた。その魅力を彼はこう語る。

「ボーダーがまったくないんですよね。オリンピック競技として実施するにあたって、男女のカテゴリー分けは今はあるんですけど、でもそもそもカルチャーとしては男女の差だったりとか、年齢の差だったりとか、もちろん国だったり、人種すべてにおいてラインというのがない」

「こんなに違う世界中の人たちが、大会だったらそこでかけられる音楽を共有し合って、みんなでひとつの空間を作っていく。その共通点の部分に僕たちは常に目を向けている。そういう良さがブレイキンにはあると僕は思っています」

ブレイキンの大会では、DJが即興でかける音楽に合わせて、ブレイカーらがパフォーマンス・バトルを繰り広げる。観客にとって、それは音楽とダンスを介した、ダンサー同士の一種のコミュニケーションのようにも感じられる。その理由は、この「共有し合う」ことにあるのかもしれない。

「人と人との違いを差として見るのではなく個性として受け止め合うという、ブレイキンの素晴らしい風潮が世の中に伝われば、それがすごく魅力的に映るんじゃないかなと僕は思います」

世界選手権に向けて「今の自分ができるすべてのことを」

国内大会では、2020年に行われた第2回全日本ブレイキン選手権、2022年1月の同大会で2大会連続で優勝。4月の国内大会「マイナビDANCE ALIVE HERO’S 2022 FINAL」でも優勝を果たし、半井は日本のブレイキン・シーンを圧倒している。

そんな半井は10月21日、22日に大韓民国・ソウルで行われるWDSF世界ブレイキン選手権2022に出場する。

「いつもやれることは絶対にやってから挑むという風にやってきていて、今回も今の自分ができるすべてのことはやってきています。その成果をしっかり出せたら嬉しいです」

「もう10年以上やってるので、今回も変わらず、やってきたことを発揮できるように、最後の最後まで努力して本番を迎えたいなと思ってます」。

もっと見る