BガールAmi(湯浅亜実)が語るブレイキンの魅力「自分を表現するアート」

来年に迫るパリ2024オリンピックで新たに採用される競技、ブレイキン。世界女王のBガールAmi(湯浅亜実)が語るブレイキンの魅力とは?

1 執筆者 Olympics.com
ami yuasa
(Kenta HARADA)

即興で流される音楽に合わせ、ダンサーたちがアクロバティックな動きを取り入れたダンスを披露し合い、「バトル」を繰り広げる「ブレイキン」。ブレイクダンスの名で知られるこのダンススポーツを生で目にしたことがある人は決して多くはないだろう。

だが、一度でも目にすればブレイキンの特徴として挙げられる迫力やエンターテインメント性、さらには会場を包む一体感に圧倒されるはずだ。

ブレイカーと呼ばれるダンサーたちには驚異的な身体能力や技術のほか、音楽性や独創性などが求められる一方、日本ダンススポーツ連盟の石川勝之氏いわく「何をやっても認められる」のがブレイキンなのである。

そんなブレイキン界において世界トップで活躍を続けているBガールAmi(湯浅亜実)が、Olympics.comのインタビューに応え、パリ2024オリンピックで新競技として実施されるブレイキンの魅力を語った。

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ブレイキンの見方・楽しみ方「勝ち負けではなく…」

BガールAmiは1998年12月生まれの24歳。

6歳のときに姉・亜優(BガールAyu)の影響でヒップホップに出会い、10歳のときブレイキンの回転系の技「ウィンドミル」を目にしたのをきっかけにブレイキンの世界に足を踏み入れた。

ウィンドミルは背中や肩などを床について体を支えながら足を開脚させて回転する技で、ブレイキンを代表するパワームーブのひとつとして知られている。

この技をやってみたいという衝動からAmiのブレイキン人生は始まり、以来、14年にわたって技術や表現力を磨いてきた。そして、数々の国際大会で栄光を手にし、2022年にソウルで行われた世界選手権自身2度目の優勝を飾った。

世界のトップブレイカーとして知られるAmiだが、ブレイキンの見どころは勝ち負けではないと強調する。

「勝った人がすごいわけじゃないのがブレイキンの良さだと思っています」

「いろんなスタイルの人がいて、いろんな踊りをする人がいる。踊りだけじゃなくて、例えば服装とか入場の仕方とか、すべてに個性がある」

それこそがブレイキンの魅力だと断言するAmiは、「勝ち負け(の判定)に全員が賛成することはブレイキンではあり得ない」と続ける。

それは競技性とアート性が融合するこのダンススポーツの特徴のひとつなのかもしれない。ブレイキンがスポーツかアートかと問われれば、「私はアートだと思ってやってます」とAmiは答えた上で、「もちろん勝つ人はいるし、みんな勝つために全力でやってるけど、勝つことだけがすべてじゃなくて、そのステージで自分の作り上げたものをどう表現するかが大事」と世界女王はブレイキンとの向き合い方を語る。

それは見る側の楽しみ方にもつながっていく。

「『誰が勝つかな』というだけではなくて、『この人の踊り好きだな』とか、『この人の服装好きだな』とか、勝ち負けだけじゃないところにも注目して、自分の好きな選手とかお気に入りの選手を見つけて応援してみるのが楽しいんじゃないかなって思います」

オリンピックに期待するもの

パリ2024オリンピックが来年に迫る中、ブレイキンの認知度は日を追うごとに高まっている。

「オリンピックに向けての大会とかも増えてきているし、今までは一部の人しか取り組んでいなかったのが、挑戦する人の枠がだんだん広がってきている感じはありますね」

2月18日、19日に東京・代々木体育館で行われた全日本選手権では、19日の決勝の模様がNHKで生中継され、これに続き、2月24日、25日には日本で初開催される国際大会「WDSFブレイキン・フォー・ゴールド・ワールドシリーズ 北九州」の決勝の模様がTBS系でテレビ放送される。

ブレイキンへの関心の高まりは、ブレイカーたちにも影響を与えることになるだろう。

「ブレイキンをしてなかったら出会えなかった人とか、できなかった経験がたくさんあるので、大げさにいったら、人生の楽しさを教えてくれたものがブレイキン」と目を輝かせるAmiは、オリンピックでのブレイキン実施に、ある期待を寄せる。

「ブレイキンをやってる人ってみんな全力でやってて、でもそこまで注目されてないアンダーグラウンドな世界。オリンピックとかを通してより多くの人に知ってもらって、その可能性が広がるといいなと思います。本当はブレイキンに集中したいのに、サイドで仕事をしなくちゃいけない人も多いので、ブレイキンだけに集中できる環境になっていったら嬉しいなと私は思います」

北九州で行われるワールドシリーズにはAmiも参戦する。日本からは女子カテゴリー(Bガール)にAmiのほか、全日本選手権を制したAyumi(福島あゆみ)、BガールRiko(津波古梨心)がエントリー。

そのほか、2022年の世界選手権で2位になった中華人民共和国のBガール671、2022年のレッドブルBC Oneファイナルを制したBガールIndia(オランダ)、ユースオリンピック銅メダリストのBガールYell(大韓民国)らがバトルに参戦する。

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