ブレイキンの魅力「何をやっても認められる」ブレイキン部長Katsu Oneが語る 

2024年に行われるパリオリンピックで新しく採用される競技、ブレイキン。日本勢の活躍が目覚ましいこのダンス競技の魅力に迫る。

文: Chiaki Nishimura

東京2020スケートボードサーフィンスポーツクライミングが新たにオリンピック競技に加わって大会を盛り上げたように、パリ2024でも大会に新たな魅力をプラスしてくれることが予想されるブレイキン。 

ブレイクダンスという名でも知られるこのダンス競技は、パリ2024に先駆け、2018年にアルゼンチンのブエノスアイレスで行われたユースオリンピックで採用された。14歳から18歳が参加して行われたこの大会で、日本のBガールRam(河合来夢=かわい・らむ)が金メダル、BボーイShigekix(半井重幸=なからい・しげゆき)が銅メダルを獲得した。 

パリ2024で新たに採用されるとはいえ、まだ馴染みの少ないブレイキンについて、ユースオリンピックで日本代表のコーチを務め、現在、日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス部の部長を務めるBボーイKatsu Oneこと石川勝之氏に、その魅力について話を聞いた。

日本におけるブレイキンシーン

「他のスポーツに比べれば、(知名度は)まだまだで、『そうなんだ、パリの種目になったんだ』ぐらいだとは思います。でも、徐々に知られるようになったというのは肌感覚でありますね」

オリンピックでの採用が決まって以降、メディアでの露出も増え、知名度が上がっているブレイキンだが、日本のブレイカーはすでに世界トップレベルで活躍しており、ユースオリンピック以外でも、2021年の世界選手権ではBガールの Ayumi(福島あゆみ)が金メダル、Ami(湯浅亜実)が銀メダルという実績を残している。

「ヒップホップツリーっていう言い方をしてるんですけど、上の世代がちゃんと下に伝えていくような、そういうツリーができているところ(国や地域)って、レベルが高いイメージがあります」

国内の活動にとどまらず、国外の大会の審査員や責任者として世界各地を飛び回っている石川氏は、ブレイキンが発展する土壌をこう分析。各国のワークショップを覗く中で、上の世代がブレイキンの文化や歴史を伝え、若い世代が敬意を持ってそれを聞くような文化がある場所でトップダンサーが輩出される印象があるという。

さらに日本に関して言えば、親の世代の変化もあり、「『ブレイキンをずっとやってて、どうやってお金稼ぐの?』というような考え方が減ってるんではないかなと思います」と石川氏。子どもの活動を手厚くサポートしている親も珍しくなく、「どの国に比べても親が熱心」。スノーボードの平野歩夢をはじめとするトップアスリートたちと同じように、親が子どもの競技をサポートする例はブレイキンの世界でも見られ、「世界トップレベルの子たちは共通して、やっぱり親が付いていますね」と石川氏は話す。

技に関して言えば、日本人の「細かいところにものすごいパワーを注ぐ」ような職人気質が、日本のダンサーがトップで活躍する要因のひとつなのではないかと指摘する。

「自分が表現したようにやればいい」

石川氏自身も子どものころにマイケル・ジャクソンに魅了され、ダンスを始めたBボーイのひとり。ただ単に「かっこいい!」という思いから始まったブレイキンとの付き合いが、次第に世界各地でのパフォーマンスに発展。世界中で仲間を作り、そして世界各地の大会で審査員や責任者を務めるようになり、日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス部の部長にも就任した。

そんな石川氏はブレイキンの魅力をこう語る。

「ブレイキンの魅力は、ほんとに何をやってもよくて、そこが認められるところだと思います。本当に自由です。 自分が表現したようにやればいい」

技や踊り方もさることながら、身体的な特徴も個性として認められる文化がある。

「足がないやつがかっこいいんですよ。手がないやつがかっこいいし、デブなやつがカッコいいし、めちゃめちゃ体が柔らかいやつがへんてこりんな動きをすると、かっこいいんですよね。それがオッケーというところで始まる」

「自分の欠点だと思っているようなことが、ブレイキンの中ではものすごい魅力になる」と石川氏は語る。

そして人種の壁も軽々と越える。

「踊れるだけで友達がすぐできてしまう。僕、旅行で海外に行ってホテルを取ったことがあまりなくて。練習場所に行って出会った人たちが良くしてくれて、そこを泊まり歩いたりとか。そうやって世界中でコミュニティができていくんですよ」

それは1970年代初頭のニューヨーク・サウスブロンクス地区で、喧嘩に代わって抗争をおさめる手段として始まったダンスが、のちに各地で強い絆で結ばれたクルー(仲間)を生み出し、カルチャーとして発展して世界中に広がっていったという、ブレイキンの文化に通じるところがある。

「(オリンピック競技となって)メダルとかキラキラしたとこからブレイキンに入るのは大歓迎なんですけど、そのときに僕らが大切にしているものを発信して、『ブレイキンって素晴らしいじゃん』っていうような人が増えて、学校教育入っていくなり、いろんな新しいことが生まれていく。そういう風になってほしいなと思います」

ブレイキンの見方

ブレイキン競技では、通常1対1あるいは複数での「バトル」が行われ、ブレイカーはDJが流す即興の音楽に合わせてパフォーマンスを披露し、審査員が技術力や表現力、構成などをもとに評価をする。もちろん勝ち負けは気になるところだが、会場が一体となる空気感も楽しみのひとつだと石川氏は話す。

「会場のバイブス(ノリや雰囲気)を感じられるところが、ブレイキンの魅力かなと思っていて、そういう目で見ている方もいると思っています。僕らは音楽に密接してるから、DJが選んだ曲でお客さんたちが縦ノリになったりして一体感が出るんですよね。勝負以外のところでは、そういったところが魅力的です」

さらに、パフォーマンス自体を楽しむ上では、アクロバティックな動きが見どころのひとつだが、その上で、ダンサーひとりひとりがどんな踊りをしているのかを見ていくと面白さが増すという。

「絵を見るのと一緒です。ピカソってこんなタッチだなとか、ゴッホってこんなタッチだなとか。あれと全く一緒なので、この人の1本の線の書き方ってどうやって描くんだろう。みたいな感じで見ると面白いかもしれないですね」。

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