NHK杯直前に右足関節靭帯を損傷したことから、続くロシア杯も欠場していた**羽生結弦**は12月24日、全日本フィギュアスケート選手権で今シーズン初の演技を披露した。
23日に行われた公式練習後の会見で、羽生は4回転半の手応えや**北京オリンピック**への思い、ここまでの道のりなどを振り返り、4回転半のため努力と、やり尽くしたとも感じられる疲れの感情を吐露し、それでも前を向き「皆さんが僕にしかできないって言ってくださるのであれば、それを全うするのが僕の使命なのかなって思いました」と、男子フィギュア界を牽引するアスリートとしての決意を示した。
その中でショートプログラムに関する思いも語った羽生。まもなく始まる北京オリンピック男子フィギュアスケートのショートプログラムを前に、羽生がショートに込めた想いを紹介したい。
ピアニスト清塚信也が編曲、ロンド・カプリチオーソ
会見の中で羽生は、ショートプログラムの楽曲としてピアノ曲を探していたこと、また以前から使いたかったというサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を選んだことを口にした。もともとはバイオリンと管弦楽の協奏曲だが、以前、エキシビションの「春よ来い」で共演したピアニストの清塚信也さんが編曲。羽生は決定にいたるまでの経緯をこう説明した。
「僕が先シーズン、すごい心が折れてつらかった時期に、滑らせていただいて本当に生きる活力と滑る活力をいただいた清塚(きよづか)さんのピアノにしたらもっと自分も気持ちよく滑れるのではないか、もっと気持ちを込めて滑ることができるのではないかなと思ったので、清塚さんに頼んで編曲してもらって、オリジナルのバージョンを作っていただきました」
清塚信也さんは国内外で数々の賞を受賞し、人気ドラマ「のだめカンタービレ」の千秋先輩の音の吹き替えを担当するなど、メディアでも活躍中のピアニスト。テレビや映画の音楽監督や演奏、音楽番組で有名アーティストと共演するほか、俳優としての顔も持つ。編曲を担当した羽生のパフォーマンスを翌日に控えた12月23日、自身のツイッターで「私にとって、これほど思いつめて作った曲があっただろうか。 明日は特別な日です」と投稿した。
つらいときを一緒に過ごした音だからこそ、より感情を乗せられる。観客は男子シングルのショートプログラムで羽生のすべてを感じ取ることになる。
前人未到の4回転半ジャンプ
一方、12月26日のフリースケーティングでは羽生が求め続けてきた、前人未到の4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)をプログラムに取り入れ、両足着氷で回転不足となり、ダウングレードの判定となったが、それでも羽生が前進していることは間違いない。
クワッドアクセルは4Aとも略され、アクセルジャンプは他のジャンプと異なり半回転多く回らなければならないことから4回転半ジャンプと呼ばれている。世界中が固唾をのんで見守る中、羽生はその大技にチャレンジする。
北京オリンピックでのフィギュアスケート男子ショートは8日9:15、男子フリーは10日9:30に予定されている。