【バトミントン】世界選手権:大会連覇の山口茜をはじめ、日本勢のメダルは3個

バドミントンの世界一決定戦「第27回世界バドミントン選手権大会2022」は8月28日に閉幕。日本勢は女子シングルスで日本人初の連覇を果たした山口茜、2大会連続銀メダルの混合ダブルス「ワタガシ」こと渡辺勇大/東野有紗、2018・19年女王の「ナガマツ」こと、女子ダブルスの永原和可那/松本麻佑が銅メダルを獲得した。

1 執筆者 マンティー・チダ
YAMAGUCHI Akane
(Getty Images)

■山口茜が難敵を下して、日本人初の世界選手権女子シングルス連覇達成

山口茜は今年3月の全英オープンを制していたが、タイオープンから3大会連続で表彰台を逃していた。日本開催の世界選手権で第1シードに入った山口は、マレーシアの2大会で連敗した、グレゴリア・マリスカ・トゥンジュン(インドネシア)との初戦を迎える。

「相手の1球1球に対する準備が足りなかった」とマレーシアの2大会を総括した山口は、序盤から大きなラリーを展開する。ドロップなど緩いボールを効果的に使いながら主導権を握ると、ポイントを重ねて第1ゲームを21-12で奪う。

第2ゲームに入ると、グレゴリア・マリスカ・トゥンジュンに先行を許すが、相手の打球を粘り強く拾って流れをつかみ、逆転に成功。このゲームも21-15で獲得し、ゲームカウント2-0で初戦突破を果たした。

日本人対決となった髙橋沙也加との3回戦をストレートで勝ち上がると、準々決勝ではリオデジャネイロ2016金メダリストのキャロリーナ・マリン(スペイン)、準決勝では世界ランキング4位のアン・セヨン(大韓民国)をともに2-0で下して、山口は2大会連続の決勝進出を果たす。

連覇に向けての決勝戦。相手はTokyo2020金メダルのチェン・ユーフェイ(中華人民共和国)。山口は試合の序盤から巧みにコースを狙ったショットで主導権を握り、チェン・ユーフェイの強打をスーパーレシーブとするなど、守備面も光った。第2ゲームで今大会初めてゲームを落としたが、第3ゲームを21-14で奪い、山口が女子シングルス日本人初の世界選手権連覇を達成した。

Tokyo2020では結果を意識しすぎてベスト8止まりだったが、「重圧や緊張がある中で楽しくプレーできたのは収穫」と精神面の成長を勝因にあげた。世界ランキング1位の山口にとって、大きな山を乗り越えた瞬間でもあった。

■攻めまくる「ワタガシ」ペア、決勝で涙を呑むも2大会連続銀メダル

攻めまくるスタイルで勝ち上がってきた「ワタガシ」こと、渡辺勇大/東野有紗。初戦からヨーロッパ勢に連勝。準々決勝ではゴー・スンファット/ライ・シェヴォン・ジェミー(マレーシア)をストレートで下してメダルを確定させた。決勝進出をかけた準決勝は、第2シードと第6シードに勝利して勢いに乗っているマーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ[旧姓ヘルトリヒ](ドイツ)が相手。

東野が前衛でシャトルを拾い上げて、相手に浮き球を打たせると、後衛から渡辺がサウスポーから繰り出されるジャンピングスマッシュで相手コートに叩きつける。「攻撃の展開を多く作ることができた」と渡辺が振り返る通り、終始ワタガシペアのペースだった。わずか28分の攻防で21-8、21-6と完勝し、これ以上ない試合運びで悲願の金メダルまであと1勝とした。

決勝の相手は、Tokyo2020銀メダルでこれまで2勝10敗と大きく負け越している、ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)。準決勝までは試合の序盤から主導権を握れていたが、決勝ではミスを重ねてしまい、中国ペアのペースにされると防戦一方。中国ペアの攻撃に対して、ワタガシペアは自分たちの形に持ち込むことができなかった。

第2ゲームに入り、一時は先行する時間帯もあったが、結局中国ペアに押し切られてストレートで敗戦。念願の金メダルとはならなかったが、2大会連続の銀メダル、3大会連続のメダル獲得。

混合ダブルス悲願の世界一に向けて、決勝で対戦した中国ペアは超えなければならない相手。「相性もきっとあるが、今はまだ差がある。思いっきりやっていきたい」と渡辺の視線はすでに次の戦いへ移っていた。

■「ナガマツ」ペアが日本勢歴代最多となる4個目のメダル獲得

女子ダブルスは、日本から参戦した全てのペアがシード入りとしており、上位進出へ期待が大きかった。しかし、第2シードの福島由紀/廣田彩花は福島の左足ふくらはぎが回復せず、無念の棄権。第15シードの中西貴映/岩永鈴は3回戦でジョンコルファン・キティタラクル/ラウィンダ・プラジョンジャイ(タイ)に敗戦した。

今季ここまで躍進を続けてきた「シダマツ」こと、第5シードの志田千陽/松山奈未は、準々決勝で今大会銀メダルのキム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)に敗れ、メダル獲得まであと1勝のところでコートを去った。

そんな中、2大会ぶりに女王返り咲きを狙った「ナガマツ」こと、第6シードの永原和可那/松本麻佑は前回大会銀メダルで、今大会第3シードのイ・ソヒ/シン・スンチャン(韓国)を準々決勝で下し、日本勢歴代最多となる4個目のメダルを確定させる。

準決勝の相手は、前回大会女王でTokyo2020銀メダルの世界ランキング1位、チェン・チンチェン/ジャ・イーファン(中国)だった。この中国ペアとは前回大会でも準決勝で顔を合わせていて、その時も敗れている。

ナガマツは長身を生かした攻撃を仕掛けるも、世界女王の堅守を崩すことはできなかった。「本当に穴がなかった」と永原は世界女王の強さに脱帽。「自分たちの攻撃へどのように持っていくのかが永遠の課題」と松本が話す通り、もっと良い色のメダルを目指すためには、苦しい時間帯にどう乗り切っていくのか。今大会でも必死に喰らいついていたが、結果を見る限りまだ足りないということだろう。

■男子ダブルスは「ホキコバ」のベスト8が最高

男子では「ホキコバ」こと、保木卓朗/小林優吾の男子ダブルスベスト8が最高位だった。第2シードで大会連覇を狙ったホキコバではあったが、準々決勝で世界ランキング7位のサトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(インド)に惜敗。

「相手のやり方にはまってしまった。うまく自分たちの展開に持っていけなかった」と保木は長身のインドペアに手を焼いていたことを明かし、小林も「本当に悔しい」と悔やんだ。世界のトップで居続けるためには、より一層の精神面強化が必要のようだ。

男子シングルスでは、第2シードの桃田賢斗が2回戦敗退に終わるなど、全体的に振るわなかった。Tokyo2020金メダルのビクトル・アクセルセン(デンマーク)が、出場した6試合を全てストレート勝ちという圧巻のパフォーマンスで4大会ぶりに制覇した。

今大会の日本勢のメダルは合計3個。前回大会はコロナ禍の影響で中国やインドネシアなどの強豪国が不参加だったとはいえ、全体のメダルも5個から2個減少し、やや厳しい結果となった。

大会公式HPBWF大会公式HP

■日本代表選手

男子(16名)

  • 桃田賢斗(東日本電信電話株式会社社員)
  • 常山幹太(トナミ運輸株式会社社員)
  • 西本拳太(株式会社ジェイテクト社員)
  • 奈良岡功大(IMG)
  • 保木卓朗(トナミ運輸株式会社社員)
  • 小林優吾(トナミ運輸株式会社社員)
  • 古賀輝(東日本電信電話株式会社社員)
  • 齋藤太一(東日本電信電話株式会社社員)
  • 竹内義憲(株式会社日立情報通信エンジニアリング社員)
  • 松居圭一郎(株式会社日立情報通信エンジニアリング社員)
  • 岡村洋輝(BIPROGY株式会社社員)
  • 小野寺雅之(BIPROGY株式会社社員)
  • 渡辺勇大(BIPROGY株式会社所属)
  • 金子祐樹(BIPROGY株式会社社員)
  • 山下恭平(東日本電信電話株式会社社員)
  • 緑川大輝(早稲田大学4年)

女子(16名)

  • 山口茜(株式会社再春館製薬所社員)
  • 奥原希望(太陽ホールディングス株式会社所属)※8月19日付出場辞退
  • 髙橋沙也加(BIPROGY株式会社社員)
  • 大堀彩(トナミ運輸株式会社社員)
  • 福島由紀(株式会社丸杉社員)
  • 廣田彩花(株式会社丸杉社員)
  • 永原和可那(株式会社北都銀行社員)
  • 松本麻佑(株式会社北都銀行社員)
  • 志田千陽(株式会社再春館製薬所社員)
  • 松山奈未(株式会社再春館製薬所社員)
  • 中西貴映(BIPROGY株式会社社員)
  • 岩永鈴(BIPROGY株式会社社員)
  • 東野有紗(BIPROGY株式会社社員)
  • 松友美佐紀(BIPROGY株式会社社員)
  • 篠谷菜留(東日本電信電話株式会社社員)
  • 齋藤夏(認定NPO法人ACT SAIKYO)
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