羽生結弦が今季初めての試合ながら圧巻の演技で全日本選手権2連覇を果たした。また宇野昌磨が2位、鍵山優真が3位で表彰台に上り、北京五輪日本代表の座をつかんだ。
1位 羽生結弦 322.36[SP111.31(1位)/FS211.05(1位)]
羽生はケガのため、ISU(国際スケート連盟)グランプリシリーズのNHK杯とロシア大会を欠場し、その動向が注目されていた。さらに大会直前、4回転アクセルに挑戦することを明言。前人未到の大技成功へ期待がかかった。
ショートプログラム(SP)は新プログラム「序奏とロンド・カプリチオーソ」。羽生が尊敬するエフゲニー・プルシェンコ氏も使用していた曲でもある。主にバイオリンで演奏されるこの曲を、ピアニストの清塚信也氏にピアノ曲にアレンジしてもらった。宇野の次というプレッシャーのかかる順番での演技だったが、冒頭の4回転サルコウはGOE(出来栄え点)4.57点と、驚異的な質の高さを見せ、そのほかの全ての要素も完璧に決めた。そして羽生自身がピアノの旋律を氷上で奏でているかのような表現は高く評価された。演技構成点の音楽解釈ではジャッジ9人中8人が10点満点をつけ、自己ベストに迫る111.31点で首位に立った。
フリースケーティング(FS)の曲は昨季から継続の「天と地と」。宣言通り、予定構成表には「4A」(4回転アクセル)の文字が書かれていた。羽生の挑戦に、観客がかたずをのんで見守る中、結果は両足着氷でダウングレード判定となったが、この大舞台での挑戦は大きな収穫となった。その後は質の良い4回転サルコウを決めるなど、ジャンプを含む全ての要素で崩れることはなかった。1つ1つの所作も美しく観客を魅了。フリーは211.05点、合計322.36点で全日本2連覇。北京では94年ぶりとなる男子シングルのオリンピック3連覇に挑む。
2位 宇野昌磨 295.82[SP101.88(2位)/FS193.94(3位)]
宇野は大会直前の12月18日に右足首を負傷。万全の状態ではない中で大会を迎えた。SPでは、もともと構成に入れていた4回転フリップではなく、足に負担の少ない4回転サルコウに変更する可能性もあった。しかし攻めの姿勢を貫き、4回転フリップを選択。右足首痛がありながらもスピン・ステップもレベル4をそろえ、「オーボエ協奏曲」を見事に滑り切り、ショートは101.88点で2位につけた。
FSは4種類の4回転ジャンプを5本組み込む最高難度のプログラムで挑んだ。4回転フリップは後半に入れる構成だったが、ケガの影響もあり前半に変更した。宇野は集中した表情で自身の演技を迎えた。前半の4回転ループ、サルコウ、フリップ、3回転アクセルをきれいに決めたが、後半1つ目の4回転トーループで転倒し、その次の4回転トーループも単独となり、リピート判定になってしまった。それでも技術点は101.64点と確かな手応えを感じる結果となった。体力が消耗している中、プログラムを締めくくる情熱的なステップでは、会場からも手拍子が起こった。演技が終わり、コーチでもあり「ボレロ」の振付師でもあるステファン・ランビエール氏は、『Good job!』と宇野を称賛。FSは193.94点で3位のスコアだったが、合計295.82点で2位となり、北京五輪日本代表を勝ち取った。
3位 鍵山優真 292.41[SP95.15(3位)/FS197.26(2位)]
GPシリーズ2大会で優勝と、宇野同様GPファイナル進出(※開催中止)を決めた鍵山優真。さらに世界ランキングで1位となり、北京五輪日本代表の有力候補の1人とされていた。SPでは、冒頭の4回転サルコウと3回転トーループのコンビネーションジャンプをきれいに着氷し、GOEでも3.60点と大きく加点。4回転トーループは転倒したが、その後の3回転アクセルはしっかりと決め、スピン・ステップ全てでレベル4を取った。「When You're Smiling」のさわやかな音楽に乗せて、鍵山が持つ美しいスケーティングがぴったりとはまっており、演技構成点のスケート技術はジャッジ9人中8人が9点台をつけた。鍵山は総合力の高さを見せ、95.15点の3位でSPを終えた。
FSの使用曲は、映画「グラディエーター」。SPで転倒した4回転トーループを含む、4回転ジャンプを全て成功させると、鍵山本人も武器と言う、コンビネーションジャンプのセカンドループも見事成功させ、会場を沸かせた。最後の3回転アクセルでやや着氷が乱れたものの、大きなミスもなく力強く滑り切った。演技が終わり、キス&クライでは父親の鍵山正和氏と熱い抱擁を交わし、涙ぐむ場面も見られた。FSの点数は197.26点と、羽生に次ぐ2位だったが、SPとの合計で最終順位は3位。3年連続で表彰台に上り、親子2代でのオリンピック日本代表を決めた。