レスリング・塩谷優、初の世界選手権で得た自信、感じた悔しさ

スポーツイベントが盛りだくさんの週末。多くのアスリートたちがそれぞれの舞台で力を尽くして自分の成長を確かめ、また次の目標に向かっていく。先週末行われた試合で活躍したアスリートたちの中から、レスリングの塩谷優に注目した。

1 執筆者 Chiaki Nishimura|公開日:9月11日
courtesy of UWW_GR 55kg -  Yu SHIOTANI (JPN) df. Max Emiliano NOWRY (USA)06
(United World Wrestling / Kostadin Andonov)

現在、セルビアのベルグラードで開催されている2022年レスリング世界選手権。9月10日に始まったこの大会で、男子グレコローマン55kg級の塩谷優(しおたに・ゆう)が初出場で銅メダルを獲得し、日本勢メダル第1号となった。

端正な顔立ちが印象的な塩谷は、2021年のアジア選手権で日本史上最年少の19歳5ヶ月17日で男子グレコローマン55kg級を制覇。2022年4月の同大会では2連覇を達成し、7月にポーランドで行われた大会でも優勝した。

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レスリング界の期待の星・塩谷優

東京出身の塩谷は2001年生まれの現在20歳。

日本レスリング協会公式サイトによれば、塩谷がレスリングに出会ったのは幼稚園のときで、「何か習い事をしたいと思い、最初は柔道をやろうと思ったんですよ。でも、入ろうとしたところには年齢制限があり入れなかった。それでレスリングを始め、ずっと続いているという感じです」と、同サイトで語っている

「柔道ができなかったから」という受動的な選択によって塩谷のレスリング人生は幕を開けたが、小学生の頃に参加した全国少年少女選手権では5連覇を達成。小学校の頃からすでに頭角を現していた塩谷は、全国高校生グレコローマン選手権を2年連続で制し、高校2年生で出場した2019年の全日本選手権で2位に輝き、一躍注目を集めた。

全身が攻撃対象となるフリースタイルとは異なり、グレコローマンでは上半身のみの攻防となる。塩谷が得意としている技のひとつは、相手の側面から胴を抱えて後方に投げる「俵返し」で、2021年の天皇杯全日本選手権の決勝では、同年の世界選手権55kg級を制したばかりだった松井謙を相手に、俵返しを豪快に決めて圧勝した。

松井との代表争いは今年6月の全日本選抜、その後のプレーオフにまで続き、塩谷は戦いを制して自身初となる世界選手権への切符を掴んだ。

そうして掴んだ代表の座だっただけに、今回の世界選手権で優勝できなかったことは、自身でも悔しさの残るところ。試合後のインタビューでは、「自分の攻撃力が世界で通用する」と手応えを感じたことを語った一方、「銅メダルだったので、最低限だったと思う。自分が目指した色のメダルではなかったので、すごく悔しいけど、一応取れたことはよかった」と冷静に振り返った。

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パリ2024に向けた挑戦

今回、塩谷が3位となった男子グレコローマン55kg級はパリ2024オリンピックでは実施されず、グレコローマンでは60kg級が最軽量階級となる。

塩谷はパリ2024に向けて、階級を上げるつもりであることを公言してきた一方、いつから60kg級で戦うかなどは明らかにしていない。今回の試合後のインタビューでも、「(12月の全日本選手権での階級について)監督と相談して、自分の体のことも考えて決めようかなと思っています」と話すにとどめた。

日本レスリング界では、今年12月の全日本選手権からパリ2024に向けた代表争いが始まる。60kg級は東京2020で文田健一郎が銀メダルを獲得した階級。もしも塩谷が階級を上げて12月の全日本に挑むとするならば、塩谷は60kg級のための体づくりをした上で、文田に立ち向かっていくことになる。

若きレスラー塩谷の挑戦に注目したい。

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レスリング世界選手権、放送予定

セルビアの首都ベオグラードで9月18日まで実施されている2022年レスリング世界選手権の模様は、Olympics.comおよび国際レスリング連盟(UWW)のウェブサイトで配信される。

東京2020銀メダリストの文田、金メダリストの志土地真優は9月12日、13日に登場予定。同じく金メダリストの須﨑優衣は9月13日、14日に試合が予定されている。

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