冬季オリンピック、新たな道を切り拓いたアスリートたち
完璧なスキージャンプから、初のトリプルアクセル成功まで、数々のアスリートが冬季オリンピックにおける「初」を達成してきた。伝説と歴史を築いてきたアスリートたちに迫る。
オリンピックの各大会において、必ずと言っていいほど多くの人の記憶に残る「象徴的な瞬間」がある。**2022年の北京オリンピック**でどのようなアスリートが歴史に名を残すのか世界中の期待が高まる中、冬季オリンピックでの道を切り拓き、壁を突き破った偉大なアスリートたちを振り返ってみよう。
エリック・ハイデン:冬季1大会の個人競技で金5個を獲得
オリンピックに出場することは誰にでもできることではない。ましてや優勝することなど並大抵のことではない。しかし、冬季オリンピック1大会で金メダル5個を獲得した強者がいる。
スピードスケート選手の**エリック・ハイデン(アメリカ)は、オリンピックの個人競技で5個の金メダルを1大会で獲得した最初(そして現在までのところ唯一)の選手だ。ハイデンは1980年のレイクプラシッド冬季オリンピックのスピードスケート**全5種目(500m、1000m、1500m、5000m、10000m)でこの偉業を成し遂げた。これによって、ハイデンはさらに2つの記録を残しており、この記録は現在も破られていない。
- オリンピックのスピードスケート競技の歴史において同一大会で5種目を制覇した唯一の選手であり、すべての種目で金メダルを獲得した唯一の選手
- 冬季オリンピックの歴史において、同一大会に獲得したメダル数が最も多い選手
さらに、ハイデンはレイクプラシッドでオリンピック記録を4つ、世界記録を1つ樹立し、個人で獲得したメダル数は、旧ソ連(10個)、旧東ドイツ(9個)以外のどの国にも勝った。彼の偉業が忘れ去られることは決してないだろう。
デビ・トーマス:黒人初の冬季メダリスト
**デビ・トーマス**がフィギュアスケートを始めたのはわずか5歳のときで、9歳で初めて大会に出場した。トーマスは、1986年と1987年の世界選手権でそれぞれ金メダルと銀メダルを獲得し、1988年にカナダのカルガリーで開催された冬季オリンピックの女子シングルで銅メダルに輝いた(同年末の1988年世界選手権でも銅メダルを獲得)。しかも、トーマスはスタンフォード大学で勉学に励む傍らトレーニングを行い、オリンピックでメダルを獲得したのである。
カルガリー1988で銅メダルを手にしたことで、トーマスは冬季オリンピックでメダルを獲得した最初の黒人選手として、歴史にその名を刻んだ。14年後のソルトレークシティ2002冬季オリンピックでは、ボネッタ・フラワーズ(アメリカ、ボブスレー)と**ジャローム・イギンラ(カナダ、アイスホッケー)が、冬季オリンピックの団体競技で金メダルを獲得した初の黒人選手となった。また、トリノ2006では、スピードスケート選手のシャニー・デービス**(アメリカ)が、冬季オリンピックの個人競技で黒人選手として初めて金メダルを獲得した。
エリック・ラドフォード:同性愛公表選手として初めて冬季で金メダル
平昌2018冬季オリンピックで、カナダのフィギュアスケート選手**エリック・ラドフォードが、パートナーのメーガン・デュアメルとともに、団体種目で金メダルを獲得した。フィギュア団体はソチ2014**でオリンピック種目として採用され、男子、女子、ペア、アイスダンス種目の各国合計得点を競う。金メダル獲得後、ラドフォードはGlobal Newsの取材に応じ、「他のゲイのアスリートに力強いメッセージを伝え、影響を与えることができると信じています」と語った。
伊藤みどり、ブライアン・オーサー:初めてトリプルアクセルを成功
考案者アクセル・パウルゼンの名に由来するアクセルジャンプは、フィギュアスケートのジャンプの中で最も古く、難しい技として知られている。パウルゼンが初めてアクセルジャンプを飛んだのは1882年のことだが、ダブルアクセルの成功までには66年の歳月を要し、アメリカ出身のディック・バトンが1948年の冬季オリンピックでダブルアクセルを飛んだ。この事実だけでもアクセルジャンプの難しさを知ることができる。
ディック・バトンのサンモリッツ1948でのこの成功から36年、カナダ人スケーターの**ブライアン・オーサーがサラエボ1984**でトリプルアクセルに成功し、銀メダルを獲得した。
現在では男子スケーターの間では一般的になったトリプルアクセルだが、女子スケーターではこれまでに3人のみがオリンピクでこのジャンプを成功させている。最初に成功させたのは**伊藤みどり**で、アルベールビル1992でトリプルアクセルを決め、銀メダルを獲得した。伊藤はアルベールビル1992以前の1989年世界選手権でも女性スケーターとして初めてトリプルアクセルを成功させた。
続いて、日本人スケーターの**浅田真央がバンクーバー2010、ソチ2014で、アメリカ代表の長洲未来**が平昌2018でトリプルアクセルに成功した。
エステル・レデツカ:女性初、1大会2競技で金メダル
エステル・レデツカ(チェコ)が平昌2018 において達成した偉業は、異なる2つの競技で金メダルと獲得したことだ。
アルペンスキーでオリンピックデビューを果たしたレデツカは、スーパー大回転(スーパーG)の種目において0.01秒差で優勝してスポーツ界を沸かせたが、さらに注目すべき事実として、彼女はアルペンスキーのワールドカップ総合ランキング68位でオリンピックに出場した選手であるということだ。しかも、これまでにワールドカップと同レベルの国際大会で表彰台入りしたこともなかった。
1週間後、レデツカは再びスキー場に戻ってくると、今度はスノーボードのパラレル・ジャイアントスラロームに出場し、金メダルを獲得!
レデツカが平昌で金メダル2個を獲得するまでは、1大会でスキーとスノーボードの両方に出場したアスリートはおらず、ましてやメダルを手にした選手はいない。歴史的快挙と言っても過言ではない。レデツカは北京2022でも両方の競技に出場することが予想される。
船木和喜:完璧なジャンプに初めて審判全員が満点評価
スキージャンパーの**船木和喜**は、長野1998のラージヒルで完璧なスコアを記録し、オリンピックの栄光を手にした人物だ。
船木はラージヒルの決勝2回目のジャンプで、モントリオール1976の体操競技で**ナディア・コマネチが叩き出した10点満点を彷彿とさせるパフォーマンスを見せ、審判5人全員から満点となる20点の評価を得た。船木は、ジャンプで完璧なスコアを得た最初の冬季オリンピック選手になり、公式大会でこれを成し遂げた2人目のアスリートとなった(最初の選手は、1976年に達成したオーストリア出身のアントン[トニー]・インナウアー**)。