宇野昌磨インタビュー「第2のフィギュアスケート人生」 

「成長」の2文字を掲げて挑み、銅メダルを獲得した北京オリンピック。北京での学びを次の大会へ。フィギュアスケーター宇野昌磨の成長の旅は3月の世界選手権に向かっている。 

文: Olympics.com
写真: 2022 Getty Images

「この4年間で本当にいろんなことがありました」

2018年の平昌オリンピック以降、さまざまなことが少しずつ噛み合わなくなり、引退も考えたというフィギュアスケーターの宇野昌磨。だが、ステファン・ランビエール・コーチとの出会いからスケートの楽しさを取り戻し、再び「成長したい」と思うようになって迎えた今シーズン。北京オリンピックで銅メダルを獲得した。

そんな宇野昌磨が、平昌オリンピック以降の4年間や今後の世界選手権についてOlympics.comのインタビューで赤裸々に語った。

平昌からの4年間

「平昌のときは、自分がシニアに上がって伸び盛りのまま平昌オリンピックがあり、その勢いのままいい演技ができました」

4年前の平昌大会の男子シングルで宇野は銀メダルを獲得。北京までの4年間について尋ねてみると、宇野は自身がたどった気持ちの変化をこう振り返った。

「平昌オリンピックが終わってから、自分の成長や、オリンピック銀メダルをプレッシャーに感じるようになり、フィギュアスケートが『楽しい』ではなく『使命感』になってしまいました」

そんな複雑な気持ちを抱え、さらには長年指導を受けてきた恩師から卒業して迎えた、2019/2020シーズンのグランプリシリーズのフランス大会では8位。ひとりで座った演技後のキスアンドクライでは両手で顔を覆い、肩を震わせた。だが、ステファン・ランビエール・コーチとの出会いが宇野の気持ちを変えていく。

「残りのスケート人生もうそんなに長くない。それなら楽しく過ごしたいなって。ステファン・コーチのもとなら、楽しくスケート人生を終えられるかなって思って移籍しました」

一時は競技人生に幕を引くことも考えたが、ランビエール・コーチのもとで滑る楽しみを見い出し、「引退」の2文字が「成長」へと変わった。

男子ショートプログラムを終えた宇野昌磨(左)とステファン・ランビエール・コーチ=北京2022
写真: 2022 Getty Images

後輩スケーターの存在

「楽しんで(スケート人生を)終えられればいい」、そんな宇野の心に火をつけたのは、ランビエール・コーチだけではない。現在24歳の宇野昌磨を慕う若きスケーターの存在がある。

「後輩スケーターが出てきて、僕より結果を出した後輩スケーターが僕に憧れているという発言を聞いて、何か恥ずかしいなって思ってしまって。すごく嬉しいんですけれども、今の自分で居続けたら、どんどん置いていかれてしまう。先輩として尊敬されている身として恥ずかしいなって思って」

こう語った宇野は、北京大会で銀メダルを獲得した鍵山優真の名前を今シーズン一番影響を受けた人物として挙げ、「『優真くんの憧れの存在で居続けたい』っていうのが、(今シーズン)改めてすべての挑戦しようと思った理由です」と、鍵山が「原動力となった」ことを明かす。こうして宇野は今シーズン、難易度の高いジャンプ構成、プログラムへの気持ちを固めた。

「次に進むために蓄えていたのか、いろいろ考えさせられたのか。いろんなことがあり、長らく止まっていました」。だが、「この数年間があったこそ今がある」と受け止めた上で、「やっと僕の第2のフィギュアスケート人生が(今シーズン)始まったという感覚です」と前を向く。

一方、羽生結弦もスケート人生に影響を与えた存在だ。

「僕には背負えないプレッシャーを背負って走っていく姿をずっとそばで見て、いつか僕もそうならなければいけないのかなっていう思いがあった年もありました。ただ僕には多分それは不可能だなっていう思いも、いろいろ経験して気づいて。だから僕は彼のようにはなれないけれども、僕なりにこのフィギュアスケートのチームジャパンを引っ張っていける存在になれたらなと思っています」

北京2022フィギュアスケート日本チーム、オリンピック団体戦で初となるメダル獲得
写真: 2022 Getty Images

世界選手権に向けて

そんなふたりと共に出場した北京オリンピック。

「もちろんネイサン・チェン選手が飛び抜けて上手いのは事実ですけれども、(北京オリンピックで)2位、3位、4位が日本人ということで、世界でも高いレベルを誇っています。今回出場した3人以外にも、どんどん年下の子たちのレベルは上がってきて、さらに4年後にはまた違う顔ぶれが見られると思います」

こう未来を見据えながら、「日本フィギュアスケート界に身を置く者として、負けていられないなっていう気持ちはあります」 とし、「どこまで自分が通用できるかわからないですけれども、可能な限り、自分の力を発揮していきたいなと思ってます」と、成長への意欲を語った宇野。「今、自分ができていることを自分のものにする。いろんな武器はあるものの、まだどれも中途半端にしか持てていない。少しずつ磨き上げていくことがこれからの過程になっていくと思います」と、オリンピックメダリストは冷静に自分を見つめた。

宇野の次戦は3月21日にフランスのモンペリエで始まる世界選手権。

「今年でこの(フリープログラムの)ボレロは多分最後になってしまうので、ステファン・ランビエール・コーチがせっかく振り付けてくれたものなので、自分の持てるエネルギーをすべて世界選手権のフリーで出し尽くしたいと思います」。

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