「世界水泳に行ったら、自分よりすごい選手はいっぱいいるので、そんなに気負わずに泳げると思います」
21歳で初めて出場した2017年の世界選手権では女子200m個人メドレーで2位、2019年の大会では400mメドレーで3位。遅咲きながらも着実に世界の舞台で強さを示して日本のエースへと成長し、東京2020オリンピックでは2冠を達成した競泳の**大橋悠依**。
大橋にとって自身3度目となる世界選手権が6月18日にブダペストで開幕する。エースとして日本女子競泳を牽引する一方、オリンピック王者となった今も謙虚な姿勢を持ち続ける大橋がどんな相手と対峙するのか。東京大会以降の大橋の足取りと、世界のライバルたちに迫る。
プロ転向と若手の台頭
東京オリンピックでのレース後の満面の笑みは、多くのファンの心に残っていることだろう。
大会からおよそ7ヶ月が過ぎた2022年3月の国際大会日本代表選手選考会で、大橋は200mメドレーで**大本里佳に次いで2位。400メドレーでは18歳の谷川亜華葉や15歳の成田実生**に後塵を拝して3位に留まるなど、若手の台頭を背景に大橋のパフォーマンスはやや精彩を欠いていた。
大会への準備が遅れたことや、東京大会で日本でただひとり金メダルを手にした競泳選手としてのプレシャーなど多くの理由が挙げられるが、それでも大橋が歩みを止めることはない。選考会後には日本人女子競泳選手として初めてプロスイマーに転向し、その思いを大橋は自身のソーシャルメディアでこうつづっている。
「スポーツの価値をもっと高めたい」「次世代を担っていく子どもたちにとっての希望であり憧れとなるロールモデルになり、挑戦するための勇気やきっかけを届けていきたい」
もちろん競技の面でも若手には負けていられない。5月の日本選手権では200m個人メドレー、200m自由形、50mバタフライにエントリーし、200mメドレーでオリンピック女王の意地を見せて優勝。その後も、トレーニングを積んだ大橋は、欧州グランプリと世界選手権に出発する前の5月中旬に行われた記者会見で、「手応えのある泳ぎの感覚を得られるようになった」とした上で、世界選手権に向けて「楽しみな気持ちが大きい」と自信をのぞかせた。
ホッスー、ウォルシュ、マキオン、ライバルそろう女子200m個人メドレー
6月18日〜7月3日の日程で開催される世界水泳選手権で、大橋は日本記録を保持する2種目、女子200m個人メドレー(2分07秒91/2017年世界水泳選手権)および400m個人メドレー(4分30秒82/2018年日本選手権)にエントリーしている。
400mに関してはパリ2024に向けて継続するかどうか、「(世界選手権が)一つの判断基準になる」と話している一方、200mメドレーは興味深い戦いとなるだろう。
大橋のライバルとして、その筆頭に挙げられるのが地元ハンガリーの**カティンカ・ホッスー**だ。現在33歳のホッスーはリオ2016の個人メドレーで2冠を達成し、それぞれで世界記録を保持している(200m - 2分06秒12、400m - 4分26秒36)。東京オリンピックでその力を発揮することなく東京を後にしたが、2019年に行われた前回の世界選手権でも両種目で優勝しており、地元開催となる今大会への思いは人一倍強いだろう。
一方、今年最も勢いがあるのがアメリカ合衆国の**アレックス・ウォルシュ**だ。東京大会の200m個人メドレーで銀メダルとなった20歳のウォルシュは、4月に行われた国内大会の同種目で2分07秒84を記録。大橋が持つ日本記録(2分07秒91)よりわずかに速い記録で、この流れを世界選手権に持ち込むことだろう。
もうひとり注目される選手がオーストラリアのケーリー・マキオン。20歳のマキオンは、東京2020の背泳ぎで2冠を達成。200m個人メドレーには出場しなかったが、2021年6月の国内大会で2分08秒19を記録しており、大橋の東京2020の決勝タイム(2分08秒52)と比べてみても、ライバルとなる存在であることがわかる。
大橋悠依、世界選手権の日程は?
今大会が行われるブダペストは、大橋にとって2017年の世界選手権で日本記録を更新して銀メダルを獲得した場所でもある。
2種目にエントリーする大橋は、以下の日程で登場する。5月の記者会見で「自分の目指していた感覚がある」と自信をのぞかせた大橋の泳ぎに注目したい。
- 6月18日 女子200m個人メドレー予選、準決勝
- 6月19日 女子200m個人メドレー決勝
- 6月25日 女子400m個人メドレー予選、決勝
詳しい日程および結果は大会公式ウェブサイトにて(女子200m個人メドレー、女子400m個人メドレー)。