競泳・花車優、ユースオリンピック金メダリストの挑戦

2018年のブエノスアイレスユースオリンピックで金メダルに輝き、パリ2024を目標に定める花車優が、自身初となる世界水泳選手権へのチケットを掴み、いよいよその舞台に立つ。

1 執筆者 Chiaki Nishimura
HANAGURUMA Yu
(Marcelo Endelli)

アテネ2004オリンピックと北京2008で**北島康介**さんが2大会連続で金メダルを獲得するなど、日本勢が成績を残してきた競泳200m平泳ぎ。

今年の春に行われた国際大会日本代表選手選考会の同種目では、22歳の花車優東京2020出場の**武良竜也や、日本記録保持者(2分6秒40)の佐藤翔馬**を抑えて優勝した。ユースオリンピック2018の金メダリストの花車は、この大会で初めて全年齢の日本代表の座を掴み、まもなくハンガリーのブダペストで開幕する世界選手権に挑む。

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ユースオリンピックからの試練

2000年に香川県坂出市で生まれた花車優は、生後6ヶ月から水に親しむようになった。高校2年のときの高校総体100m平泳ぎで初優勝すると、花車の競泳人生が音を立てて動き始める。

2018年に東洋大学に進学した花車は、初の大舞台となった同年のブエノスアイレス・ユースオリンピックに出場し、競泳男子200m平泳ぎの決勝で2分11秒63で優勝し、金メダルを獲得した。

順風満帆に思えた競泳人生の幕開けだったが、記録を伸ばすことは容易ではなかった。ましてや男子200m平泳ぎでは、元世界記録保持者の**渡辺一平**が活躍する一方、佐藤翔馬や武良竜也らが力をつけるなど、東京2020の代表権獲得に向けて熱い戦いが繰り広げられていた。

花車も東京2020を目指していたが、代表選考会の半年前に腰を負傷。さらには新型コロナウイルス感染拡大の影響で、練習も思い通りにいかない日が続き、2021年4月の日本選手権で、佐藤そして武良が東京オリンピック代表の座を手にした。

だが、こうした日々も無駄ではなかった。

四国新聞社のインタビューで花車は、「泳げない時期に体の使い方や練習方法について深く考えたことで、200メートル平泳ぎのベストはそれまでの2分10秒10から、(2021年4月の日本)選手権で2分9秒85、6月のジャパンオープンで2分8秒95まで伸びた。けがをしないことが一番だが、今回はいい経験になった」と振り返っている。

世界選手権は「自己ベストを更新したい」

花車は東京オリンピック以降、北島康介さんや**萩野公介さんらを指導した平井伯昌**(まさのり)コーチに本格的に指導を仰いでいる。

2022年3月6日行われた国際大会日本代表選手選考会の男子200m平泳ぎ決勝では、東京オリンピック出場の武良や佐藤らとの激戦を制し、武良とともに世界選手権代表の座を掴み取った。続く、5月1 日の日本選手権でも代表の意地を見せて、表彰台の頂点に立った。

男子200m平泳ぎといえば、5月に行われたオーストラリア選手権で、同国の**イザーク・スタブルティクック**が世界新記録を樹立したばかり。東京2020金メダリストで23歳のスタブルティクックはこの大会で、2019年にアントン・チェプコフが記録していた2分6秒12を上回る2分5秒95をマークした。

花車の自己ベストは3月の代表選考会で記録した2分7秒99。

NHKのインタビューでは、「世界の舞台では、もっとパワーのある選手たちが多くいて、もっと置いていかれる展開になることも考えられる」と、世界のレベルを認識した上で、「前半、前に出られても落ち着いて自分の泳ぎをして、後半、自分の持ち味をしっかり発揮できるようにしたい」と語っている。

世界大会では「色んなものを吸収して、これから(パリ2024まで)の2年間につなげられるような大会にしたい」とパリオリンピックを見据え、「決勝に必ず残って、自己ベストを更新したい」と意気込みを語った。

ハンガリー・ブダペストでの世界水泳選手権は6月18日〜7月3日の日程で実施され、日本からは国内での厳しい選考基準や代表争いをくぐり抜けた18選手が出場する。花車がエントリーする男子200m平泳ぎは6月22日に予選と準決勝が行われ、翌23日に決勝が予定されている。

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