すべてを出し切った北京オリンピック後、ノルウェーに移動して世界選手権、さらにはオランダでのワールドカップ最終戦を戦い抜き、**髙木美帆**が2021/2022オリンピックシーズンを終えた。
3月のワールドカップ最終戦の直後には、「休む時間を取りたい」として、来シーズンに関しての明言を控えていた髙木は、4月5日に行われた会見で、「オリンピックが終わってから2大会を戦うには心も体もギリギリの状態で、色んなことを落ち着いて考えたりとか、決められる状態ではないなと思った」と、そのときの思いを説明。
続けて、「そういう(考える)時間を持っていいんだって思えたときに、自分の中の声にしっかりと耳を傾けることができた」と話し、自分の気持ちと向き合う中で、「スケートに対して、前向きに思っている自分がいることに気づき、使命感や責任感ではないところで、スケートを滑りたいと思っている自分がいるんだなっていうのを感じることができました」と、現役を続けたいという思いを明かした。
引退した姉・髙木菜那の存在
髙木といえば、2歳年上の姉・**髙木菜那**とともに切磋琢磨しながら汗を流してきた。北京オリンピックの団体追い抜き(チームパシュート)では共に出場して銀メダル。決勝で転倒して泣き崩れた菜那に寄り添う姿は、北京オリンピックの中でも印象的なシーンとして記憶している人も少なくないだろう。
姉の菜那が今シーズンで引退を決意し、同日引退会見を行ったことに話題が及ぶと、「一緒に旅行や買い物に行くなど、仲がいい」とした上で、「同じ種目を競い合うライバルなので、相談できることとできないことがあったり、弱みを見せるところと見せたくないところがあったりする。ちょっと特殊な関係だったのかなって思います」とコメント。
「悩んでいる時期やもがいている時期に、姉から(抜け出す)きっかけを得たりとか、刺激を受けた」とその存在の大きさを表現し、「目標に向かって、ひたむきに頑張っていることを、幼いころから一番近くで見てきたというのもあると思うんですけど、スケートに対する姿勢からたくさん影響を受けた」とし、普段は「恥ずかしくて」公の場で語ることを控えてきた姉への思いを明かした。
今回の会見の前には、引退した姉・菜那にサプライズプレゼントを渡し、その様子をインスタグラムで紹介した髙木美帆。姉が現役生活を終えることに関して複雑な胸の内をのぞかせる。
「スケートを取り組むにあたって、姉がいないっていう時期は今までなかったので、今後どう感じるかはまだ分からない。それでもライバルという関係はなくなるんだなって感じています。 寂しい気持ちもあるんですけど、もう競わなくていいんだなという気持ちも少しは心の中にあります」
「私がたとえ姉より速く滑る選手だとしても、(菜那が)姉であることにはずっと変わりがなくて、周りからは私の方がしっかりしてると言われることも多いと思うんですけど、私自身が姉を頼りにしているところもたくさんあるのは間違いない」とした上で、「(菜那が)姉でよかったなっていう気持ちはあります」と語った。
髙木美帆にとってオリンピックとは?
会見では、4年後のミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックに関しても質問が及ぶと、「正直よくわからないというのが素直な気持ち」とした上で、オリンピック前のシーズンで膝の故障を経験したことを踏まえ、現在27歳の髙木は、20代前半に比べて「体に関してはカウントダウンのようなものが確実に始まっているのかなと思っているので、自分の気持ちとは裏腹に体の限界がきてしまうかもしれないし、今の段階ではそれがいつきても不思議なことではないというのも同時に感じている」とした。
髙木は15歳で初めてオリンピック(バンクーバー2010)の舞台に立ち、続くソチ2014では代表入りすることはできなかったものの、平昌2018、北京2022と3度のオリンピックを経験してきた。オリンピックへの思いについて聞かれると、「オリンピックは本気になれる場所。周りの人たちも本気で向かって行く場所であって、たくさんの人たちとその気持ちを共有できる場所でもあるなというのは強く感じています」。「だからこそ苦しかったり、プレッシャーだったり、他の大会とは比べものにならないぐらいのものがたくさんある」とし、「そういったところも含めて、全部が本気というか、100パーセントのものを感じられる場所だなってすごく強く感じています」と語った。