ノルディック複合団体「ここからがはじまり」

北京2022ノルディック複合競技の最終種目として行われた団体戦から一夜明け、日本チーム4選手がTEAM JAPANメダリスト記者会見で、今の想いについて語った。

1 執筆者 Risa Bellino
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(1 Getty Images)

オリンピック・ノルディック複合団体(ノルディックコンバインド)日本チームの活躍の歴史は、アルベールビル1992の30年前までさかのぼる。V字ジャンプ導入の変革期に、**荻原健司**を中心にジャンプで「先行逃げ切り」のスタイルを確立した日本は、アルベールビル大会とリレハンメル大会で2連覇を果たした。

その団体戦2個の金メダルと、ノルディック複合日本男子個人初の銀メダルを獲得した**河野孝典**が日本チームヘッドコーチとなり、試行錯誤して何年にもわたり様々な挑戦をしてきたTEAM JAPAN。

北京2022団体戦でようやくその努力が実を結び、日本に28年ぶりのオリンピックメダルをもたらした。

銅メダリストとなった日本チーム(渡部暁斗渡部善斗永井秀昭山本涼太)が、2月18日の記者会見に出席し、これまでの道のりと今後の展望について語った。

「今回のオリンピックはメダルを獲得できたこと以上に、ノルディックコンバインドの面白いレースと言うものを日本の皆さんに見ていただけたんじゃないかなと思える、手ごたえのあるオリンピックだった」

渡部暁斗は、競技の魅力が詰まったレース展開を団体戦でみせられたことに、喜びを表現した。

「メダルを取ることも大事ですけど、良いレースをして、競技としての面白さが伝わるというのも大事な部分だったのかな、と改めて思えた良いオリンピックだったと思います」5大会オリンピック連続出場、3大会連続メダリストの渡部暁斗は、北京大会をそう振り返る。

初出場の山本は、「良いレースができたので、すごく楽しかったという感情の余韻に浸っているところ」だと語った。

「前の3人の先輩が繋いでくださったからこそあのレース展開に持ち込めた。最後ガイガー選手と競ってメダルを獲得する瞬間を体験させていただいた」と、アンカーという大役を務めたレースについて振り返った。

「率直に言うと、まだ自分の思い描いているところにはいないんだろうなっていう感じです」自分の目標とするパフォーマンスに近づくため、さらなる追及をしていく姿勢を見せた。

昨晩は興奮して一睡もできなかったというチーム最年長38歳の永井は、自身がここまで競技を続けてこられた理由について、一言で答えた。

『パッション!』

その "パッション" を感じる言い方に、チームメイトと報道陣からは思わず笑顔がこぼれるも、「ちょっと冗談ぽく言いましたけど、冗談でもなくて(笑)」

「やっぱり熱意がなければここまでできなかったと思います。いろんな人の支えがあって、ここまで一緒に自分の夢を追いかけてくれた人たちがいるからこそ、ここまでやり遂げられたと思います」自身の競技人生の集大成をメダルで飾ることができた想いについて語った。

前半のジャンプ、後半のクロスカントリースキー共に好成績を出し、チームに貢献した渡部善斗は、「個人戦2試合の内容を考えると、やっぱり団体戦はちょっと気合入れて臨まないといけないなと思っていた中で、少し良いのが出せたというのは自分の中でも良かった」と振り返り、「みんな役割をそれぞれが果たして、チームの選手・スタッフ含めて全員でやった結果だと思うので、その一員として関われたということが今すごくうれしい」と感謝の気持ちを言葉にした。

(1 Getty Images)

家族のような存在

渡部兄弟は、今大会までオリンピックを3度一緒に経験してきた。そして、その3大会で兄・暁斗が毎大会メダルを獲得している。

兄であり、チームを牽引するトップアスリートとして活躍してきた暁斗の姿をこれまで一番近くで見てきた弟・善斗は、個人戦で暁斗が銅メダルに輝いたその日、インスタグラムで「僕のお兄ちゃんは、スゴい人です」と綴った。

しかしながら記者会見では、チームと共に兄弟で得た念願のメダルについて、ふたりの特別な思いがあるかという質問に対して、兄・暁斗は「正直何も感じていないです」と答え、弟・善斗は「全く関係ないですね」と答え、会場をどよめかせた。それはなぜか?

他国チームに比べて圧倒的な時間を共に過ごしてきたチームそのものが家族のような存在であり、「善斗だけっていうよりは、みんな選手は兄弟のように感じるし、スタッフも含めて家族みたいな感じ」だからだという。「そのくらい一緒にいるっていうことです、我々は」

苦楽を共にした家族のような感覚で臨んだという団体戦で、みんなで勝ち取ったメダルは、兄弟だけの絆ではなく、第2の家族=チームの絆が生み出したものだということが、言葉から伝わってきた。

今回団体4人のメンバーには選ばれなかったが、若手成長株として注目されている谷地宙(やち そら)は、自身のツイッターで先輩たちのメダル獲得の瞬間について、その喜び、悔しさ、学び、すべてが前へ進む原動力となったことを綴った。

「今日が、4年後への新たなスタートだ。この悔しさを絶対に忘れない。決して諦めない。決して止まらない。夢は叶う。改めて先輩達が教えてくれた。大変な道のりになると思う。だけど、それでも挑戦する。めちゃくちゃ心が燃えている」

同じ岩手の先輩となる永井からは「今回で様々な経験ができたと思うので、どこで役に立つかはわからないですけど、競技人生で必ず彼のためになってくる所が巡ってくると思う。その時にこの経験を少しでも活かして自分の競技の糧にしてもらえればと思います」とエールを送った。

次の冬季オリンピックとなるミラノ・コルティナ2026では、谷地の成長と活躍により、2大会連続の団体戦メダル獲得にも期待できるかもしれない。

メダルを取った "ここからがはじまり" だと語るチームメンバーたち。今後お互いにいろいろな立場でノルディック複合の未来を盛り上げていきたいと前を向く。

次の4年後に向けて、日本チームはさらなる進化を目指す。

北京2022冬季オリンピック、2月17日のノルディック複合グンダーセン方式団体ラージヒル/4x5km結果はこちら

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