技を成功させるという意志の強さのようなものを除いては、大会中のパークに立つその表情から**堀米雄斗**の感情を読み取ることは難しい。集中しているのか疲れているのか、それとも緊張しているのか興奮しているのか。
東京2020オリンピックでスケートボーダーらが日本を、そして世界を沸かせてから1年。男子ストリート金メダリストの堀米雄斗が2022年6月末、Olympics.comのインタビューで東京オリンピックを振り返りつつ、**パリ2024**への想いを語った。
堀米雄斗のスタイル
パークに視線を送るその目は常に真っ直ぐで、それでもどこか飄々としていて独自の世界観を身にまとい、難易度の高い技を決めて観客を沸かせると、表情を緩める。
クールな雰囲気を漂わせる堀米は、自分の滑りをどう分析しているのだろう。
「スケートスタイルは人それぞれいろいろ違うと思うんですけど、自分が周りからよく言われるのは、スケートしてて『簡単に見える』とか、『難しい技でも簡単に滑る』みたいな」
「自分の中でも(それが自分の)スタイルなのかなと思います」
しかし、当然ながら楽に技をこなしているわけではない。
「滑るときは別に意識はしてないんですけど、常に簡単ってわけではない」とした上で、「その裏側に練習があるので」と続ける。
「練習してるときは結構ハードですし、でも大会で滑るときは、自分の得意なトリックとか、ミスらないような技を出していく。それが簡単に見えるっていうのがあるのかもしれないですね」
「ミスらないような技」。この言葉に堀米の安定した強さと、その背景にある血の滲むような努力が見えてくる。
アメリカ合衆国の**ナイジャ・ヒューストンやブラジルのケウビン・ホフラー、フランスのオーレリアン・ジロー、ポルトガルのグスタボ・リベイロ**など、誰が勝ってもおかしくない男子ストリートにおいて、難易度の高い技を引き出しとして持ち、それらを「運良く」ではなく「確実に」決めることが、表彰台に立つ上での鍵となる。
スケーターらはそのために練習を重ね、技の精度や成功率(メイク率)を上げていく。堀米は難易度の高い技を「ミスらなく」なるようになるまで練習し、大会で安定した強さを発揮するのである。
終わるまでは諦めない
「大会はいつも緊張する」
Olympics.comでは、堀米に改めて東京2020オリンピックを振り返ってもらい、当時の想いを語ってもらった。母国開催となった東京大会で、当日はやはり緊張したのかを尋ねると、堀米はこの一言。
それでも、「東京オリンピックに挑戦しているときは、本当にプレッシャーとか期待が結構大きくて、この東京オリンピックで最後にしようって思ったぐらい気持ちとかメンタル的にはすごいきつかった」と1年前に思いを馳せる。
東京大会の決勝では45秒間の2回の「ラン」で得点を伸ばすことができず、続いて行われた5本の「ベストトリック」の最後の3本をしっかり決めて、表彰台の頂点に立った。
「5回ベストトリックがある中で、そこでまだ優勝を諦めてなかった」
「大会が終わるまで諦めないってことが一番重要なのかなとは思います。本当にそういう気持ちだったし、自分は。特に変なことは考え過ぎず、自分のトリックに集中して、まずはひとつひとつのトリックを決めるっていう気持ちでした」
東京大会への挑戦を金メダルという最高の形で締めくくった堀米は、25歳で迎える次のパリ2024オリンピックに向けても気持ちを高めている。
「東京オリンピックが終わってまた新しい挑戦とか目標が見えて、パリでも活躍したいなと思っています。その大会がこれからまた始まるということで、新しい準備も今しているところです」
「東京はやっぱり自分の地元でもあったし、初めての(オリンピックの)経験でもあったので、最初よりはもうちょっと楽な感じで、パリのオリンピックに挑めるのかなと思っています」
東京大会での経験を通じてこれからの自身の目標を掲げるだけでなく、トップアスリートとしての使命のようなものも実感している。
「(東京オリンピック以降)スケートボードの人気だったりとか、価値観とかがいろんな人たちに広まったなってのをすごい感じました。なので、これからもスケートをもっと盛り上げていきたいし、世界のスケートレベルを上げていきたいです」
6月末から7月初旬にかけてローマで行われた大会では8位に沈んだが、自身が「夢の大会」と語ったSLSワールドツアーのジャクソンビル大会(7月16日〜17日)では優勝。7月20日〜24日の日程で米カリフォルニアで行われているXゲームズにも参戦している。Xゲームズの男子ストリートは7月23日に予定されており、前述のヒューストンやホフラーらも出場する。
堀米がスケートボード界をどう盛り上げていくのか、その活躍にこれからも注目したい。